第五話 迫りくる足音
そういえば俺のばあちゃんがよく言っていた。
「高橋の人間には秘密がある」と。
あの呑気な友人から「秘密」という言葉は遠いように感じたが、歴史的に意味のあるポジションにいたことも確かだ。
「あいつだけ他のゾンビと違ったのも、何か理由があるのか?」
高橋からもらった翻訳機は、いつゾンビ語が必要になってもいいよう、首から下げた。
衛星電話はショルダーバッグに入れる。モバイルバッテリーはというと、抜け目のないことにソーラー式だったので、ショルダーバッグのメッシュ部分に突っ込んでおいた。
しかしおかしい。
あの時の翻訳が正しいとするならば、俺は世界から逃げる必要がある。
世界から逃げるとはいったいどういう事だろうか。
隠者よろしく、世俗から離れ、誰からも見つからないようにする——?
おかしいのだ。
もしも長期間の逃亡が必要だとして、どうしても違和感のぬぐえないものがある。
翻訳機と衛星電話だ。
つまり、誰かと話をする必要がある。高橋はそれを見越して託したのではないだろうか。
その時、俺の背中で衛星電話が鳴りだした。
「……あー、もしもし? 酒井さんですか?」
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