許嫁、現る③
美男子の方は、
訳があって入学して来たという。
三歳も年上の同級生。
それすら謎めいているのに、『久しぶりだな』の言葉がさっきから脳内で迷走中。
あんな美男子、一度でも見たら忘れないのに。
その美男子にくっついている強面の男子は、
彼も訳あってこの春入学したらしい。
『姐さん』??
彼もまた私を前から知っているらしい。
頭が混乱する。
こんなインパクト大なメンズ二人を知ってたら、絶対憶えていそうなのに。
朝の会(SHR)が終わり、体育館へ親友の詠ちゃんと移動する。
今日は一限目に制服検査があるからだ。
「詠ちゃん。私、変なとこ無い?」
「全然大丈夫だよ」
指先でOKサインを出す詠ちゃんに視線を向け、彼女の腕を掴んだ。
「詠ちゃん、なんか私に隠してることあるでしょ」
「え?」
「さっきの人たち、私を知ってるっぽかったし、詠ちゃんも知ってるんでしょ?」
嘘を吐かれることも、はぐらかされることも好きじゃない。
そもそも何かを隠されること自体が嫌いな私は、じーっと詠ちゃんの目を見つめる。
「う゛ぅっっっ……、ごあ゛るぅ~~っ」
人目を憚らず、詠ちゃんが抱きついて来た。
私が白黒はっきりさせたい性格なのを熟知しているし、私のことが大好きだから嫌われたくない彼女は観念したようだ。
「先に言っておくけど、隠したくて隠してたわけじゃないからね?」
「……うん」
ハァ~と大きな溜息を漏らした詠ちゃんは、体育館に入ると列の最後尾に私と並び、前の子に気付かれないように小声で話し始めた。
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