許嫁、現る③

 美男子の方は、桐生きりゅうじん(十八歳)。

 訳があって入学して来たという。

 三歳も年上の同級生。

 それすら謎めいているのに、『久しぶりだな』の言葉がさっきから脳内で迷走中。


 あんな美男子、一度でも見たら忘れないのに。

 その美男子にくっついている強面の男子は、手嶋てしま 鉄二てつじ(通称:鉄、十七歳)。

 彼も訳あってこの春入学したらしい。

『姐さん』??

 彼もまた私を前から知っているらしい。

 頭が混乱する。

 こんなインパクト大なメンズ二人を知ってたら、絶対憶えていそうなのに。



 朝の会(SHR)が終わり、体育館へ親友の詠ちゃんと移動する。

 今日は一限目に制服検査があるからだ。


「詠ちゃん。私、変なとこ無い?」

「全然大丈夫だよ」


 指先でOKサインを出す詠ちゃんに視線を向け、彼女の腕を掴んだ。


「詠ちゃん、なんか私に隠してることあるでしょ」

「え?」

「さっきの人たち、私を知ってるっぽかったし、詠ちゃんも知ってるんでしょ?」


 嘘を吐かれることも、はぐらかされることも好きじゃない。

 そもそも何かを隠されること自体が嫌いな私は、じーっと詠ちゃんの目を見つめる。


「う゛ぅっっっ……、ごあ゛るぅ~~っ」


 人目を憚らず、詠ちゃんが抱きついて来た。

 私が白黒はっきりさせたい性格なのを熟知しているし、私のことが大好きだから嫌われたくない彼女は観念したようだ。


「先に言っておくけど、隠したくて隠してたわけじゃないからね?」

「……うん」


 ハァ~と大きな溜息を漏らした詠ちゃんは、体育館に入ると列の最後尾に私と並び、前の子に気付かれないように小声で話し始めた。

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