名探偵失格
錦木
名探偵失格 scene1
目が覚めると布団の中だった。
昨日しこたま酒を飲んだのだろう。
布団に入った記憶がない。
寝返りをうとうとして、というか何か狭いなと思った。
顔を傾けると右に女の子、左に女の子。
目を擦る。消えない。夢ではないようだ。
何だこの朝チュン風景。
知らない高校生くらいの女の子とベッドインならぬ布団イン。
ええ?これどゆこと?
ていうかどういう状況?
「おおい、朝ですよ……」
一応触れないように布団をバサバサして起こしてみる。
セクハラとか言われたら困るからな。
女の子は二人ともフリフリの衣装を着ていた。
長いまつ毛で縁取られた目を瞬いて二人の女の子は起きた。
「おはよ、キリタニさん」
「おはようです、カイリ」
女の子たちは鏡で写したようにそっくりだった。
長い髪に星のようにきらめく目、寝起きなのにさくらんぼのように赤い頬と唇。
宣言しよう。ものすごい美少女だ。
他に並び立つものがないほどの天下無双の景観。
ダメだ。混乱してきた。
「きみたち誰?」
そう言うと一人は快活な、一人はほんわかした笑みを浮かべた。
「アマちゃんだよ」
「ルナ……です」
どうやらピンク基調の服を着ているほうがアマちゃん、ブルー基調の服を着ているほうがルナというらしい。
アマちゃんとやらにどこか見覚えがあった。
「もしかして配信アイドルの……」
「はい、いつもニコニコキラキラアマちゃんですッ!」
自分で言って顔の横で両手のピースサインをする。お決まりのポーズだ。
自分も寝る前によく聞かせてもらっている。
最近人気急上昇中の配信系アイドルである。
何でも芸名の由来はトップを目指すということで太陽神、
なんとも畏れ多い名前だ。
そんな彼女がなぜここに?と思う。
「えっと、不法侵入……。じゃなくて何でここにいるの?」
「えっとぉ」
アマはゴソゴソと携帯電話を取り出すと抽選アプリを見せる。
ジャン、と口で言ってアプリを見せた。
「カイリさんはアマの一日恋人権に当選しました。だから私たちと今日一日デートして過ごしましょう!」
イエーイ!とテンション高く拳を突き上げる。
自分はあたりをキョロキョロと見渡した。
「え、何コレドッキリ?」
ルナが冷静に言った。
「カメラは設置されていないです」
「そー完全オフの設定なんだから」
左右からまったく同じ声でつぶやく二人。
どういうことだ。
突然の展開に自分は首を振る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます