修行の後で...
全然迷
回想
百錬は、布団にくるまり寝息を立てる薫を見て過去を思い浮かべる。
それは自分が修行に明け暮れ、食うに困って傭兵の仕事で飯にありついていた頃の話……。
 ̄ ̄ ̄ ̄
「クソッ、クソッ、クソッ……!」
荒い息を吐きながら、百錬は壁を背にずるずると後退した。
(俺は何故、あのタイミングで、あの技を繰り出した!?)
刀を握る手が震える。
剣圧は完璧だった。間合いも、殺気も、全て狙い通りだったはずだ……。
それなのに。
(たしかに、アレは他流の奴からヒントを得た……が、ここまで魔素を持っていかれるとは……)
胸の奥が焼けるように痛む。
魔素の流れが乱れ、体の動きが鈍る。
(魔素が足りねぇ……俺にはやはり合わねぇか?……この技は初見殺しだ、2度目は通じねぇ……どうすれば……!)
だが、考える暇はない。
遠くから、聞こえる。
仲間の悲鳴。
消えゆく魔素の匂い。
足音が近づいてくる。
(やべェ、もうここは……ズラかるしかねぇ! 俺らは皆殺しだ!)
百錬は歯を食いしばり、最後の力を振り絞って走り出した……。
 ̄ ̄ ̄ ̄
「やっぱぁ、あの時の俺も迷いっぱなしで、目先の事しか考えて無かったぜぇ。」
薫を見やり、
「しかし、薫の魔素量は計り知れねぇな」
百錬はお猪口の酒をグイッとあおる。
「アイツなら、きっとこの技を……」
頭を振りながら、
「いや、アイツは頭も切れやがる」
「天は二物を与えずってゆう言葉があるが……」
酒の肴に、全国的ラーメンチェーン店“天下無双”監修の新発売のおにぎりをかじりつつ、ふっとそのラベルに目を向け。
「天下無双か……」
「過去にそう呼ばれた奴ぁごまんといる、そんなモノにゃあ何の価値もねぇ。まあ、かつての俺ならちぃと望んじゃいたがな。ふっ……」
「俺は……、俺の起こした流派が後世に伝わりゃいい。そうさな天下無双と聞けば百錬流。うん。それなら価値が有る」
「そうだ。ラザフォードの野郎に、俺にもっと時間を寄越せって相ダンスっか」
「イヤ、バネッサ将軍の姉ちゃんが我々の育成方針に口を出さないで下さいと、息巻いて来るのが目に見えるぜ……」
あーだこーだと考えながら、気が付けば百錬も意識が夢に落ち込んだ。
修行の後で... 全然迷 @zen_zenmei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます