水嶋穂太郎は読書初心者! ~わたしは小説を読むのが嫌いだった~

水嶋 穂太郎

第1話 わたしは小説を読むのが嫌いだった。

 わたしは小説を読むのが嫌いだった。

 とりあえずは過去形である。

 いまは嫌いというほどではない。でも苦手ではある。


 原因は過去にある。



 幼少期。はじめて読まされた(強要)作品が「シートン動物記」だった。

 これがとにかく合わなかった。


 まず文字が多い。

 わたしは、漫画やアニメを見て娯楽というものを知ってきた。

 そのせいか、「冒頭でどんな話か簡単に想像がつく」「想像どおりの話にどんな見せ方をしてくれるのか期待する」といった癖がついていた。

 特に、「絵で話を想像させる」ことに慣れきってしまったため、文字で話を想像させるということには不慣れ。いや不慣れどころではない、未知だった。


 話を戻し、「シートン動物記」である。

 冒頭で投げた。

 でもせっかく買ったのにもったいないから、と無理やりに両親からつづきを読ませられた。強要された。


 二度と読むか。

 こうなるのは必然だったのかもしれない。



 小学校3年生の時、自分で扉を開くまでは、そのままだった。

 とある文庫本との出会いがあった。

 教室の本棚に置かれていて、自由に読むことができて。表紙の絵がとても魅力的だったような記憶がある。

 思わず手に取って開いた。

 最初は「うぇっ」と拒否反応を起こした。

 でも読めた。

 なぜ読めたのかはわからない。

 それに面白いと思えた。

 不思議なものが、不思議なキャラクターたちによって、不思議に活用される様子が、面白かった。

 残念ながらタイトルは忘れてしまったし、文庫も持っていない(正確には処分にだしちゃった)ので、教えることはできない。わたしも、二度と読める機会はないだろう。


 面白さの見せ方としては、「ハリー・ポッター」シリーズに通じていると思う。

 あれも不思議なものが、不思議なキャラクターたちによって、不思議に活用されるのを楽しむものだと思っているから。「え、なんだそれ?」と思わせておいて「西洋風の魔法使いという、わたしは知らないキャラクターたちによって」、「不思議に活用される」の連続。

 お話は「闇の帝王とやらを主人公のハリーが倒して平和を勝ち取るんだろうなあ」と冒頭いっぱつでわかるので、入り込みやすい。厳密には、孤独の身だった主人公のハリーが、伴侶や仲間を得てしあわせになる話、かもしれないが割愛。


 話が逸れてしまったが、「ハリー・ポッター」を100点の面白さなお話だったとすると。

 思い出のなかにしかない作品は、500万点の面白さだった。

 なので、そうした出会いがあり、若干ではあるがわたしの文字への拒否反応は改善された。



 月日は流れ。

 書くようになってから、「こりゃ読まんと絶対に無理だ。書き方がわからんもん」となり、ライトノベルを手に取った。

 が、それでもだいぶ……いやとてもきつかった。

 作品の第一巻を読み終えるのに、3ヶ月かかった。

 なに読んだんだよ……と思われるかたのためにお話しすると、「ソードアート・オンライン」です。

 読書ガチ初心者で、割とトラウマ級の活字嫌いを抱えていると、かかります。最初の1日は1行でギブアップしたのは、記憶してあります。


 でも創作はもともと別の分野で楽しんだ経験もあったので、書くために考えたり実際に書いてみるのは楽しめました。


 読む:苦手7/楽しい3 (合わせて10)

 書く:苦手2/楽しい8 (合わせて10)


 くらいな感じです。


 読書は嫌いではなくなりました。でも苦手です。

 執筆は嫌いではありませんが、うまく書けない(実力不足)という意味で苦手です。



 現在。

 創作は最高の娯楽だという認識です。

 その創作に、小説を選びました。


 かれこれ10年になりますけど、いいですね。

 ここに宝が埋まっているから掘ってごらんと天の声を聞き、信じて掘り続けているようなものです。最初は宝どこだ宝どこだ、と掘って。まったくでてこないことに苛立ったりもしましたが、いまは掘ること自体が楽しくなっちゃっています。どう掘れば早く掘れるかとか、どう掘れば綺麗に掘れるかとか。ふと掘った穴の中から上を見上げたときに気づく空の美しさとか。

 楽しいです。

 天の声は言うでしょう――その楽しさが宝なのだよ、と。

 だましたなああああああ!!!

 とも叫びたくなりますけど。

 ま、そう言われりゃそうだわな、と納得できてしまうわたしなのです。



 さて、長々とお付き合いいただきましたが、今回はこれで。

 小説を読むのが嫌いだったやつが、苦手にまで持ち直すお話を主軸にお話いたしました。



 余談:

 わたしに、「作品読みました、ガチですっごく面白かったです!」と言われたかたで。

 他の読者の方々からは反応がいまいちだったら。

『すさまじく読書初心者向けに書かれた良作になっている』と一考ください。

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