宇宙とロボ


目の前の青色の箱型ロボットは四角い画面に喜怒哀楽の顔をチカチカさせている。


ここは宇宙船か?


ウイーンガチャガチャピーヒョロロと音を立てて、昔のブラウン管テレビを雪だるまのように二つ重ねてるロボが計算完了! と画面上で告げた。


とほぼ同時に自分の腕時計が震えて『NO!』の文字が出る。


どうやらロボの計算へのNGらしい。


何故だ、可愛いロボが頑張って計算してくれたようなのに、ろくに検査も見もしないで。


ロボはくるくるキューと目をうずまき状にしたが『再び計算しなおします』と言い、四角い面に顔を出して、またコアラのマーチのような百面相を披露してくれる。


四角いロボが可愛くて飽きないのだが、どうやら自分の仕事を探してくれているらしい。


腕時計は自分の意識が宿っているのだろうか。


間違いなく働きたくないのだ、ロボの提案を全て『NO!』で破棄している。


そのうち、ロボからビーガガゴという音と煙が出てきた。


高負荷をかけすぎだ! このままでは壊れる!!


もうなんでもいいからロボのいう通りにしようと思ったのだが、ロボは高速で情報を吐き出しては『NO!』が出ればすぐやり直すので、すぐ動かなければだ。


とりあえず、どんどん計算が速くなるロボのよこっちょのスイッチを押した。


きっと非常停止ボタンだ。


が、『NO!』が出る方が早い。


もう腹が立って、スマートウォッチみたいな腕時計を千切る勢いで取り外した。


暑いから、腕時計のバックルは汗まみれだ。


それよりロボだ!


スイッチを再び押すと、プシューと気の抜けた音を出して止まってくれた。


『153個の、作業を検索しました。全てをクリアしてください』

「え?」


ロボは画面に点が光るマップを表示していて、さらには0/153と右上に表示されている。


(やりたくねぇ~)


「今日は仕事を探すのに1ターン使ったから、また明日やるよ。うん、ロボ君また明日」


『居住区域には、作業をオワラセナイト帰れません』


怒った顔を見せている。


このロボ君も可哀そうに、自分のようなのの担当になってしまって。


「ご飯は?」


『残りレーションは一つです』


「ちょうだい」


『びーびー。計画性、皆無』


画面には般若の顔がリアルに浮き上がっていて、怒っているのがわかったが、お腹がすいているのだから仕方ないだろ。


「ロボ君は何か食べないの?」


『アナタノ作業が終わったら充電ステーションに向かいます』


そうかあ。だからロボ君も怒ってるのか。お腹すくとイライラするのはロボも人間も同じらしい。


「よし、じゃあ」


『一番近い作業は船外のアンテナ修理ですが……「ロボ君のごはんを盗りに行こう」


『びびー! ソレは犯罪です! マジメニ作業を終わらしてください!』


夢特有の現象で、この後のことがわかる。


船が爆発して、ロボ君とは離れ離れになるんだよなあ。


だから、夢が覚めないうちにロボ君となるべく長く一緒にいるか。


そう思って座った。


起きるまでの続きはよく覚えていない。


目を覚ました後、思ったのが「レーションを食べておけばよかったなぁ」

だったのは、自分でも薄情だと思う。


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