25日、夕方 可愛い座敷わらしちゃん


夏の暑い中、外から帰ると子供のお化けがいた。


思わず、ずざっ! と引いてしまう。


怖い、こんなにはっきり見えているのに何を怖がる必要があるのかと思うだろうが、日本人形なんかを他所のお宅で見た時にでも、ちょっと怖いな、と思うのだ。


それが、急に自宅にいたら、そりゃ怖い。


いとこと叔父叔母夫婦がが来てるらしい。


そいつらが連れてきたな?


しかも、美少女ゲームに似せた、ホラーゲームなんてのを、うちの居間のゲーム機でやっている。


怖い展開がゲームの中で続いていて、電源を消したくなる。


「おー! おかえりー!」


いとこが声をかけてきた。


そんなのより、そのゲームを止めてくれ、と言いたかったが、何故かコントローラーから手を離した後も自動で続いてる。


やっぱり呪われてるよ! そのゲーム!


日本人形みたいな綺麗なおべべ着たおかっぱお化けは、トコトコついてくるし。


「ほら、これ。ドラゴンボールのTシャツ! でけーから着れねぇけど、鑑賞用にはいいぜ?」


マジか! 超レアじゃん!!


見ると、赤っぽい綿の生地に、色々なキャラクターと悟空がプリントアウト(あの、Tシャツ特有のツヤツヤしたのが)されてた。


なんだかまるで知らないキャラもいる。


こいつはアニメオリジナルキャラ! とか言ってる。

そっかー、自分はアニメは見ないもんなぁ。


へー、と思って譲り受けて見てると、真ん中に、シミが付いている。


「おい、これ。血じゃねぇの?」


思わずついて出た言葉だが、いとこは無視する。


聞こえてないのか、認識出来ないのか?


すると、下からはっきり声が聞こえた。


「それ、おっとうのなの」


「あ、そうなんだ……」


やばい……お化けと話してしまった。


おかっぱちゃんは、その後も「お腹がすいたよう」と言ってくる。


もういいよ! 仕方ねぇ! 可愛いからもう怖くないよ!


普通に喋るし、これは座敷わらしだと思うことにした。


そして、冷蔵庫を開けて「何が食べたいかな

〜」なんて独り言に聞こえないように座敷ちゃんに喋りかける。


「お、お芋。揚げた芋がいい!」


「ん? ポテチか?」


「うん! それ! それ!」


何故か冷蔵庫の皿の中に入っていたポテチを取り出し、「洋風のものが食べたかったんだ〜」と言うちょっと可哀想な座敷ちゃんに、サンドイッチでも作ってやるかとパンとゆで卵とマヨネーズとを取り出す。


サンドイッチの耳を切り……いや、それは確か最後だったか?

まずは卵の潰したのを作らなきゃか。


スマホが無い時代だから、ちょっとものを作るのも一苦労だ。


モタモタしてると、母とおばさんと祖母(もう亡くなってる)の会話が耳に入ってくる。


「へー! あそこの大きいお宅、火事で全焼だべか?」

「可哀想よねぇ、でも、その後バザーというか、投げ売りがあって。安く物を買えたのよ」

「ちょっとそれ、火事場泥棒のじゃないの!?」


昭和くさい話をしている。


成る程、この座敷ちゃんはその家の子で、投げ売りを買ったから、着いてきたのか。


相変わらずはっきり見えるからお化けなのか疑問になるが、自分以外の誰も相手にしないから、やはり幽霊なのだろう。


可哀想すぎるなぁ。


食べ終わったら、その焼けた家とやらに行ってみてあげるか。


卵を潰してマヨネーズを和えて、その間にパンにバターを塗って軽く焼いて。


レタスと卵フィリングを挟めばーー


いや、だからパンの耳を落とさなきゃ。


最後のこれが大変なんだよなぁ、崩れるし。


ラップぐらいあるかな? と思って探そうとすると、座敷ちゃんと目が合った。


悲しそうな顔をしてる。


(どうしたんだろう?)


テーブルの上に下駄ごと登って、ポテチの前で体育座りしている。


目立つ紅いお着物が、母が会話しているお菓子の中にべったりついてしまっている。


あーあー。


なんだろ?


「あっ! そっかぁ!」


「何よ、あんた。うるさいからあっちいってなさい」

「がはは」


つい声を上げてしまい、母から叱られ祖母から笑われる。


叔母はいなくて良かった。


そんなことより、座敷ちゃんは『触れない』んだ! だから、ポテチを食べれなくて悲しんでるんだ!


こっちに来てきて、と手を引くと、自分は触れるみたいだ。


そして、ポテチを一枚手に取り、口元に持っていってあげた。


はもっ! と勢いよく口に入れた。


(どうだ!? 食べれたか?)


「んー! ん! 美味しい!」


喜んでもらえて何よりだ。


このままポテチも食べ続け、更に卵サンドも全部食べた。


良かったね。


「おっとう、会いたい……」


落ち着いた所で、ぽつりと言葉を漏らした。


よしよし、頭を撫でてやると、ニコッと笑った。


可愛い、妹が出来たようだ。


いとこのゲームは怖いシーンのオンパレードだけど、この子を見てると落ち着く。


この家にいるより、この子のお父さんを探そうと外に出た。


もたろん、座敷ちゃんとは手を繋いでだ。


迷子は怖いからね。


適当にバスに乗って、まずは大きい市に行こうとしたら……


「おっとう! おっとうがいる!! あそこに!」


「えぇっ!?」


自分も目を凝らすが、小さなアパートの群れと、その奥に何か大きなタワーマンションが見えるだけだ。


正直、何処にいるかはわからない。


「すいませーん。降りまーす」


「そんなの、無理に決まってるだろ! 次まで座って待てェ」


運転手さんには怒られた。


まぁ、きっと障害者の妄言と捉えられただろう。


座敷ちゃんは、えっ!?

いない!?


どうしたんだよ!! 何所行ったんだよ!


慌てて目を瞑ると、何故か座敷ちゃんの視界とリンクできた。


サイレンかな?


まぁ、いいや。


どうも、男の人がタワーマンションの一室で、絵を描いているらしい。

これがお父さんかな?


悪そうな奴らが、座敷ちゃんのお父さんに何やらささやいてる。


そうか、画家のお父さんなんだね。


そう思ってたら、バスが止まった。


慌てて、下ろしてください! 「トイレ漏れそうなんです!」と恥を凌いで告げる。


運転手は、大慌てで下ろしてくれた。


これも、昭和だからか?


くそっ!


あのマンションに行っても、無力な自分にはなんの策もないけど、行くっきゃねぇよ!


と、ここで目が覚めた。


続きがきになる。


夢の続きを見たいよ。


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