第3話 予知夢

***


 私は見覚えのない階段の踊り場にいた。タブレットを片手に、誰かを待っている。


 タブレットに開かれている画面は、メールの受信ボックスだ。メールの中身までは鮮明に覚えていない。しかし、私は何かのメールを見て、この場所に来たことは確かだった。


 しばらくして、新たにメールが届いた。この内容は覚えていないが、私は階段を降りようと階段に向かう。そしてその直後――。


 恥ずかしいことに、私は何かに足を滑らせた。尻もちをつく――と思った矢先、誰かの腕に抱え込まれる。誰かのおかげでお尻を打たずに済んだ。お礼を伝えようと振り返ると、信じられないことに、その誰かはそのまま私を突き落としたのだ。


 私は落ちる直前、咄嗟にその誰かの顔を見た。どうせなら犯人の顔を拝んでやろうと思ったのだ。


 しかし、その誰かは帽子を深く被っており、なおかつマスクをしていたため、はっきりと顔を認識することはできない。分かったのは体格からいって男性だということのみ。


 私は犯人の正体を知ることなく、助けを求めるべく手を伸ばしたまま、下段へと吸い込まれていったのだった。


***

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