タンゴの魔力布団

京極道真  

第1話 魔法の布団で爆眠回復

とある小さな村。

目の前には穏やかなキラキラ海。

温暖気候で魚はよく捕れる。

まわりは緑の山々で囲まれてオレンジの

いい香りがする。

「ドスン。おぎゃあ。」と私、タンゴはこの村に召喚され早8年。

働き者の果樹園の両親の元、

8才の可愛い女の子に成長していた。

前世2025年の世界ではダンス教室のインストラクターをしていたタンゴ28才。

「おーい、タンゴー!」父さんが呼ぶ。

「このオレンジを頼む。」

「はーい。」8才にして私はオレンジの選別は大人以上だ。

猫のウドが「タンゴ。またお前の出番だぞ。」

飼い猫のウドだ。なぜか私とだけ話すことができる。

少し生意気なとこともあるけど良き先輩的な猫だ。

ウドに聞いたことはないけど、たぶんウドも私と同じ転生者っぽいが。

今はこのままでいいっか。

前の世界で私はオレンジが大・大・大好きだった。ゆえにオレンジのおいしさの見分けは得意だ。選別職人レベルだ。

この世界に存在するものは、

ほぼほぼ前の世界と近い。

しいていうなら魚だけが深海魚しか取れない。味はいいが見た目にはなかなか慣れない。

「タンゴ。今日は少し多いが選別を頼む。

来週のオレンジ祭りにだすオレンジだ。

村のみんなも楽しみにしているぞ。」

「わかったわ。お父さん。」

「タンゴ、母さんと頼む。

父さんは港の村長酒場のジルの店で祭りの寄り合いがある。」

「わかったわ。」

母さんが「飲み過ぎないで下さいよ。」

父さんは少し早口で「わかってるよ。」と片手をあげて果樹園を下りて行った。

時間が過ぎた。

2つの太陽がキラキラ海の地平線。

「見て。母さん。海がオレンジよ。」

母さんは「そうね。きれいね。

でもこんな時間。タンゴそろそろ帰るわよ。」

「はーい。」

家は酒場の3つとなりだ。

そのころ、酒場ではオレンジ祭りの話し合いで盛り上がっていた。

このお祭りはオレンジが主役だ。オレンジづくめの一日だ。

そして毎年ダンスコンテストが行われている。

1位になったダンサーには王都のダンス学院への入学が許可される。

ルルドは入学を熱望している。

酒場の息子ルルドは幼なじみだ。

「わー。いいぞ。」

「ルルド、ダンスを頼む。」ギターの伴奏がはじまる。

「ツッタター。ツッタター。」リズムを刻む。

8才にして天才的なダンサーのルルド。

私は前世で踊り過ぎたせいかこの世界ではダンスよりオレンジに興味がいく

母さんが時計を見て「タンゴ。すまないけど父さんを呼んできてくれる。」

「はーい。」猫のウドもついてくる。

酒場のドアを開ける陽気な歌声が飛び交う。

ルルドが「タンゴ!」私に駆け寄る。

「今、踊ってたところさ。」

「そう。良かったわ。見てたわよ。

今年は1位、絶対がんばってね。」

「あー、もちろんさ。入学がかかってる。」

「そうね。」

「でも、踊り過ぎて体がガタガタ。

疲れとれない。見てくれ、この足。」

「ひどいわね。」私は前世の自分の怪我を思い出した。

「それになぜか寝れないんだ。目が覚めて体がいたい。」

「ルルド。それは可哀そう。」

「タンゴ、でも大丈夫さ。今年は絶対1位をとるからね。」

「頑張ってね。じゃあ、おやすみルルド。」

私はお父さんとウドと家に戻る。

ベットの中でルルドの足を思い出す。

私は無理をしすぎてダンサーをあきらめインストラクターに。

ルルドもこのまま無理すると壊れてしまう。

応援はしたいんだけど。

ベットの端にウドがピョンと飛びなる。

「タンゴ、オレンジの葉っぱをえさにしてる虫。蚕を知ってるだろう。」

「オレンジ蚕?」

「あの蚕の糸で編んだ布団は治癒魔法が施される。ただしその糸は、満月に蚕がつくる糸だけだ。ちょうど明日が満月だ。」

この世界では月も2つある。

「何それ。魔法の布団?」

「ただし夜通し糸を紡いで編むんだ。

夜通しな。

さて寝坊助のタンゴにできるかな?」

「できる。いいえ、絶対やるわ。」

前世のダンスインストラクターの血が騒ぐ。

才能のある子どもの夢は叶えてあげたい。

次の日、夜通しオレンジ蚕の糸をつむぐ。

2つの月が青く光る。

月明りが私の影を8才から28才の大人に戻す。

私は夜通し作業。手を止めない。

横でウドがあくびをしながらじっと見てる。

朝日が昇る。「できた。」

ウドが「間に合ったな。」

私は急いで魔法の真っ白い布団をルルドに届けた。

「ルルド、この布団を今日から使って。

この布団はルルドを守ってくれるから。」

ルルドは「布団?わかったタンゴ。

ありがとう。」

その夜からルルドは魔法の爆眠回復布団で寝た。

翌朝、痛め続けた足の張れが引く。

タンゴの作った魔法の布団はルルドの痛みを回復させてくれた。

オレンジ祭り当日。

ダンスコンテスト。ルルドは見事に1位。

ルルドが壇上からタンゴに抱き着く。「ありがとう。タンゴ。」

2人の頭の上を猫のウドがジャンプする。

頭上の太陽が1つに「えっ?」

「桜井翔子さん。課題曲タンゴ。」

気づくと私はダンス会場にいた。スポットライトが私にあたる。

熱い。心地いい熱気だ。

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