スナック場末
菜の花のおしたし
第1話 ママ
下町の商店街は今やシャッター街になってしまった。
いや、そこでも店をやり続ける根性のあるスナックがあった。
「スナック場末」
さびれた商店街にはぴったりなネーミングだ。
お店のママさんは還暦過ぎのバブリーなおばちゃんだった。
「あー?誰が還暦過ぎだって!あたしゃ18歳から歳は取らないんだよ。
妖精なんだからね。ふざけんじゃないよぉ!」
あ、すっすいません。
この頭にカーラーを巻いて、ムームーみたいなワンピースに咥えタバコの眉毛無しのおばさんがママである。妖精じゃなくて妖怪である。
「さてと、仕入れに行ってくるか。カーディガンくらいは羽織らないとね。
痴漢に襲われるといけないからねぇ。ああ、罪な女だよ、あたし。」
ママはひとりで毒を吐きながら昭和の買い物かごをぶら下げてつっかけで出掛けた。
「ママ、仕入れかー?」潰れかけてる電気屋の奥さんのトチコが声をかけて来た。
「そだよ、あんたんちの電球頭は今日も元気かい?」
「あー、死にゃしないわよ。朝から食う食う。やんなるわよ。保険金だけが生き甲斐なのにさ。」
「ハゲは長生きすんだよ。なんせ精力があるんだからさ。今夜、うちの店によこしな。悪い酒飲ませるからさ。」
「そーう、じゃあ行かせるわ。頼むわよ、ママ。」
「任せろっての。あたしの作った酒飲んで何人あの世に逝ったやら。」
「あら、やだー!あーほほほほほ。」
ママは馴染みの八百屋と肉屋へ顔を出す。
「ねぇ、いつものないー?」
「何だよー、ママか。今年は野菜は高えんだよ。痛みが多少あってもよ安く何ないよ。」
「痛みじゃ無くていいよ。捨てるもんでさ。あ、ほら、このキャベツの葉棄てんだろ。もらいーー!トマトなんて、潰れてるよ、ここ。ほ、ら。」
ママはトマトに指を突っ込んで見せる。
「げーっ!わざとだろ、絶対にわざとだろ?」
「違うってば。てっちゃんったら、誠実さだけがあたしの取り柄だよう。」
「ママのきったねぇやり方には勝てねえなぁ。持ってけー!泥棒ー!」
「はい、はい。あれだよ、SMなんとかだよー。」
ママさん、それ違いますから、SDGSですよ。
「とんちゃーん!半腐りのもんないーー??」
「おいおい、やめてくれよぅ。うちの店の評判が落ちるだろうよう。」
「落ちるもなにも、客なんていやしねーし。ほれ、出せ!!」
「困ったなぁ。これ、牛すじとホルモンだよ。うちはな、近所の食べ物屋さんに肉を届けてるんだよ。」
「なんだよ!うちの店もお得意様だろがぁーーっ。」
「はいはい、お得意様なら和牛のコレとか買って下さいよ。」
「何言ってんだ。そんなもん客に出したら下痢するわ。はい、150円でいいな。」
「150円、、、。いっそくれてやりたい!!おらよ、毎度ありー。二度と来るなよ。」
こうしてママは商店街でも細々とやってる店を回り、値切りながら買い出しを済ませるのが決まりだった。
商店街の皆んなは迷惑千万だと思っていた。
「やれやれ、まっーたく世知辛い世の中になったもんだよ。おまけってもんさえないんだかんねぇ。」
ぶりぶりしながら、鍵もかけないスナックへ帰るとそこには人相の悪い男が
ソファで寝込んでた。
「ちっ、ロクちゃんかい?」
その人相の悪い男はグースカピーに寝ていたので返事もしなかった。
ママは自分のお尻に手を当ててスカシッペをしてそれを握る。
人相の悪い男の鼻の前でパー。
「うげぇーーおえーーーっ!!ガバケバ。毒ガスうううう。」
「んな訳ないだろ、薔薇の香りのはずだ!妖精はおぷーは。」
ふたりは久しぶりに顔を合わせたのが嬉しくてゲラゲラ笑った。
つづくかなぁ。たぶんつづくよ。
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