最終話 天野さんちは天下無双

 咲良たちが、銀河ハイツ102号室の天野家に帰りついたのは、明け方近くになってからだった。


 翌日も平日で、咲良と大雅は学校へ行った。

 ママの具合が悪いから、という理由で、会社を休んだパパを、子供たちが恨めしく思っていたのを、パパは知らない。


 会社を休んだパパも、昨日のことを、隣の大塚さんや田端さんちへ説明と謝罪に行ったり、ママを修理したり、押入れのチャンネルを直したりと、結構な大忙しだったのを、子どもたちは知らない。


 小学校で、結菜ちゃんは咲良の無事を喜んでまた泣いて、それを慰めるのが大変だったのと。

 涼君が咲良にこっそりと、

「俺は大人になったら、咲良の兄ちゃんと同じ地球防衛軍に入るんだ」

などと言って、咲良がおおいに困惑したのと。

 全然練習できなかったダンスは、それはそれは散々で、

「咲良ちゃん、明日までにちゃんと覚えられるのぉ〜?」

と。みおちゃんに嫌味を言われまくってげんなりしたのを、大雅兄ちゃんは知らない。


 大雅は中学校で、昨日カバンを置いて帰ってしまったことを、先生に叱られたのと。

 早くアニメの最終回を観ろ、と品川にせっつかれて、パパが各所に出向いている隙を狙って、ママに録画しておいたアニメをこっそり観ようとして、これまたパパがこっそり録画していた、「ピタゴラ装置特集」の存在を知って動転してしまい、うっかり咲良のダンスの振り付けデータを消してしまったことを、咲良は知らない。


 そしてそして、昨夜もしかしたら、地球が侵略されたり消滅したりするかもしれなかったかもしれなかったのを、天野さんちが全力で守ってくれていたことを、地球人は誰も知らない。


 でも、それで良いのだと天野さんちは思っている。

 天野さんちは「完璧な普通を目指す普通の家族」なのだから。


 だから、今日も天野さんちは……


「た、大佐! 聞いて下さい。今日、品川に会ったんですが、あいつ『自分は宇宙人だ』って言ったんです!」

「何だって! 品川は軍曹の同級生だったな。……どこの星系の者だろうか? もしやこの前のように、また地球を狙う輩か?」

「わ、分かりません。とにかく中尉の帰宅を待って、作戦会議を開きましょう」

「ママ、中尉に連絡を」

「天野の妻です。ママ了解」

「自分はご飯を炊きます。……しかし、品川が宇宙人だったとは……」

「うん、友好的な星の者だといいな。……あ、軍曹、ツナマヨを忘れないでくれ、それと明太子と……」


 この日が「エイプリルフール」だったということを、天野さんちは知らない。



おしまい。


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天野さんちは天下無双! 矢芝フルカ @furuka

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