第8話 決戦・廃工場二階

 大雅の報告を聞いたパパと咲良は、顔を見合わせて、うなずき合う。


「では、もう逃げられずに済むんですね」

 パパはニコッと笑ってから、

「大佐とママは三階へ。ここは私が引受けましょう」

 手にしたショットガン型の武器を構える。

「二人居るぞ、中尉」

 咲良が言った。

「パパに任せて行きなさい。ママを頼んだよ」

 パパは咲良の頭をよしよしと撫でる。

 そして、三階へ駆け上がる咲良とママを庇うように、立った。


「もー、天野さんってばかっこいー」

「おっさん、俺達二人を相手にするってか?」

 女子社員と布団屋が並び立っている。

 二人とも、銃を持っていた。


「妻と娘の目の前で、無惨なことをしたくないんですよ。私は普通のパパであるよう努めていますから……ね」

 言い終わるか終わらないかのうちに、パパは銃を撃つ。


 弾丸が二人を左右に分ける。

 右と左から同時に銃撃が来る。

 パパが床に転がって、それをよけた。


「おっさん、機械屋だろ?」

 布団屋が物陰から声をかける。

 パパが銃口を向けた。

「あの人形作ったのも、おっさんかだろ? 投降しろよ、俺の星でもっといい仕事させてやるよ」

 パパは銃口を下ろさない。

 布団屋は続けた。


「こんな辺境の惑星で諜報活動なんかしなくてもいいんだぜ。せっかく良い腕持ってんのに惜しいだろ、中尉。俺の星なら佐官に昇進できるぞ?」

 パパは黙ったまま、布団屋の方を見つめる。

 指が引き金から外れた。


「ずっと母星に居て、ずっと機械メカ作ってられるんだ。いい話だろ、投降しろよ、な。俺はおっさんの技術に惚れてんだよ」

 パパの銃口が下がる。

 物陰から、布団屋が出て来た。布団屋も銃を下ろしている。


「さ、戦闘なんてあんたの仕事じゃ無い。あんたは銀河一の技術を持ってるんだ」

 にこやかに笑いながら、布団屋がパパに手を差し出した。


「これは、困りましたね……」

 パパが銃を持っていない方の手を、首の後ろにあてがう。


 その時、

「パシュン!」

 と、光線弾の音が響く。


「あ……」


 パパの背後で、女子社員が消えた。


 首から下ろしたパパの手には、手のひらに収まるほどの小さな銃が握られていて、後ろ腰に構えていた。


「おま……!」

 布団屋が銃を構え直す間を与えず、手の中の銃の向きをクルリと変えて、布団屋へ発射する。

 布団屋の姿が消えた。


「ほんと、困りますよねぇ。そんな口八丁で私を籠絡できると思っているんですからね。……子供たちに聞こえない所で、ちょっと言わせてもらっていいですか?」


 すうーっと大きく息を吸ったパパは、悪口雑言罵詈雑言を、布団屋が消えた場所に向かって、まくし立てた。


「……あぁ、少しはスッキリしました。さあ、咲良とママの所へ行かなければ」

 パパは階段に向かって走り出す。


 でも、パパは知らない。

 一階から上がってくる階段の途中で、大雅が聞いていたことを。


「…………怖っ、パパ怖っ……」

 大雅は真っ青になって震えていた。

 


続く

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