第7話 決戦・廃工場一階
咲良たちが住む町は、一丁目から四丁目まである。
四丁目には区境でもある川があって、その河川敷沿いに大学の敷地が広がっている。
大学の敷地は20年ほど前まで、大きな紡績工場が建っていた。その周囲には、繊維織物関連の工場が立ち並んでいたらしい。
紡績工場が撤退すると、そこからの取引が大部分を占めていた他の工場も、次々に廃れて町を去って行った。
それらの敷地をまるごと整備して、大学が誘致されたのだ。
だがそれでも、その再開発から漏れてしまった廃工場が、河川敷に残っていた。
地元の人によると、元は小売販売もする布団製造工場で、昔は盛んだったが、外国産の安価な布団に圧されたのか、次第に勢いを失い、潰れてしまったのだという。
深夜、その廃工場の前に天野家の面々が揃っていた。
工場の周囲にはバリケードが立てられていたが、隙間だらけで、敷地に入るのに苦労は無かった。
工場は三階建てで、敷地面積は銀河ハイツと変わらないぐらいの広さだ。
コンクリートの壁のところどころからは、鉄骨が剥き出しになっていて、窓にはガラスの代わりに板が打ち付けられてある。
一階の入口には、店の名前が書かれていた痕跡があったが、辛うじて「布団」という文字だけが読めるだけだ。
それを見上げて、咲良が口を開いた。
「……最終確認。転送機器は三階中央付近に設置されていると推察される。機器の処理はママとわたしの任務とする。中尉と軍曹はこれを援護。敵戦闘員と遭遇の際は各個にて撃破。集合は三階中央。地球時間午前三時をもって、誰も三階に到達出来なかった場合は、生存者が基地の放棄作業を完了させ、母星からの指示を待つこと。以上だ」
「軍曹、基地の放棄手順は覚えたね?」
パパが大雅を見て言った。
「覚えました。……でも、みんなで銀河ハイツに帰ります。帰ってアニメの最終回観ないと、品川に恨まれます」
と、大雅が答える。
「わたしも軍曹に同意だ。明日はダンスの本番だからな」
咲良もうなずいた。
「じゃ、行こうか」
言って、咲良が工場の中に向かう。
それに、大雅、パパ、ママが続いた。
それを待っていたかのように、「パシュン!」と空気を圧縮したような音が立って、咲良たちに光線弾が放たれた。
即座に咲良たちは三方に散って、身を隠す。
ライフルのような銃型の武器を構えたヤンチャ君の姿があった。
大雅が、咲良とパパに、「上へ行け」と合図を出す。
階段へと走る三人に向けて、ヤンチャ君が銃を撃つ。
大雅が威嚇射撃で援護した。
「天野大雅じゃねーか。あぁ、てめーも今度は飛び道具持ちかよ?」
ヤンチャ君は物陰から出て、大雅を挑発する。
大雅は、咲良たちが階段を上りきったのを見届けてから、ヤンチャ君の前に出た。
大雅が持っているのも、ライフル型の銃だ。
「いいじゃねーの。撃ってみ?」
ヤンチャ君はニヤニヤ笑いながら、両手を大きく広げる。
「どうせ撃たれたって、俺た……」
最後まで言わせず、大雅はヤンチャ君の上半身を撃ち抜いた。
瞬間、ヤンチャ君の姿は消えて無くなる。
「俺達は死にはしない。擬態しているこの身体を放棄するだけで、本体には何の影響も無い」
大雅はヤンチャ君が言おうとしていた言葉を続けた。
「……さて、本体ごと俺の母星に行った気分はどうだい? 軍本部にはすでに連絡してあるから、手厚い歓迎を受けるといいよ」
そして大雅は、校章に声を落とす。
「大雅です。中尉の推察通りでした。奴らの転送装置は、基地に引き戻すだけで、どこへでも転送できるものでは無いようです。一個撃破。すぐに向かいます」
大雅は振り返らずに、階段に向って駆け出した。
続く
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