第2話 え、あ‥‥どちら様で?
ことの始まりは、3ヶ月ほどの前のファミリーレストランだった。
共働きの両親の帰りが遅くなるということで、カズトは一人ファミレスで夕食をとっていると、向こうの席でナオミが失恋している現場を目撃してしまった。
元彼(?)が去っていくと、彼女は涙をこらえながらも、怒りと悲しみの入り混じった表情で店のタブレット端末を握りしめ、
「チーズインハンバーグセット、それから、特盛りパスタ、ドリアも唐揚げもポテトも追加だ! 期間限定デザートも全種類いっちゃうよおおおおおおおおおお!!!!」
と、声を荒げて料理を大量に注文した。
テーブルは注文した料理で敷き詰められて、まるでパーティー会場のようだった。
カズトはそれを遠巻きに見ながらも、触らぬ神に祟りなし、として関わらないようにしてできる限り存在を消したのであった。
ナオミは凄まじい勢いと速さで注文したメニューを全て平らげると、幾分か気持ちが晴れたのだろう。涙も止まり、さあ会計へ。
すると、
「えっ……足りない……?」
情けなく悲哀がこもった声が聞こえてきた。
ナオミは財布を覗き込んで凍りついた。計算ミスなのか、そもそも計算していなかったのか、支払い金額は手持ちでは到底支払えない金額になっていたのだ。
「えっ、あっ‥‥ど、どうしよう。親に来てもらって‥‥でも、この時間、まだ親は仕事だし、こんな金額も使ったと知ったら、怒られちゃう‥‥」
激しく動揺し、また泣きそうになるナオミに店員は、どう声をかけるべきか戸惑っていた。
先ほど失恋をして大ダメージを受けては、このままでは警察むの御用になるかもしれない痛々しいナオミを見かねて、カズトはため息をつきながらレジに向かった。
「すみません。その会計、自分が立て替えます」
と救いの手を差し伸べてしまった。
「え、あ‥‥どちら様で?」
クラスメートなのに顔や名前を覚えて貰っていない人を助けてしまったのかと思いつつも、改めて自己紹介をしたのであった。
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