第2話
ところで……。どの扉を開けたら正解なんだ?この部屋のドアは3つもあり、見た目ではどれが廊下へ続く扉なのかまるで分からない。どの扉も白地にドレッサーと揃いの草花の彫刻で飾られていて、磨き上げられた白銅色のドアノブにはまたまたルビーのような宝石が散りばめられていた。三つの中から正解を探すなんて脱出ゲームみたいだなと思いつつ、ドレッサーのすぐ横にあった扉を開けてみる。するとそこには、何層にも重なるフリルが丁寧に縫われている洋服や、少しつけ過ぎではないかと思うほど沢山のリボンをあしらったブラウスなどがずらりと両端に無駄がないように整頓されていた。ウォークインクローゼットと言うべきだろうか。以前からロリータ服を嗜んでいた私にとって楽園に他ならない場所だった。それらに魅せられてついつい夢中になり、本題を忘れてしまうところだった。さあ、次の扉だ。あれ、さっきより重たい気がする。扉に背中を押し付け、全身の力を入れて押すと美少女の部屋の大理石風の床とは違い、臙脂色の床が見えた。今度はぐぐぐと掌に力を込めて押してみると一本道の廊下が見えた。普通は三つの扉全部開けてから正解にたどり着くものじゃないのかと少しがっかりしたが、今最優先にすべきなのは情報を得ることだと自分を鼓舞し残り一つの扉は後回しにすることにした。
廊下を見つけてからどれぐらい時間が経っただろうか……。やっと見つけた書庫はどこにあったと思う?なんと後回しにした最後の扉を開けると螺旋状の階段になっていてその下に私の知る図書館1個分以上の書庫が広がっていたのだ。何故見つけられたのかというと、思っていたよりもこの美少女の身体はか弱く、言ってしまえば軟弱だったため一旦諦めて部屋に戻った為だ。何て事だ。こんなの普通の転生漫画だったら即カットだろう…。まあ、気を取り直して頑張るとするか……。
螺旋階段を降りていくと、美少女の部屋が大分高い位置にあった事が分かった。だいたい三階ぐらいだろうか。本屋に入ったときのような匂いが鼻に纏わりついた。書庫にはジャンルごとに分けられた本棚が並んでいて、まるで本物の図書館みたいだった。天窓から陽の光がそそがれて暖かい雰囲気を作り出している。私はしばらく探検した後、ようやく家系記録や家系図等の家族関係の本が置かれた棚を見つけた。
書庫の勉強机に向かい、家系図の本を開いてみると一人々の名前と肖像画が図鑑のようになって載っていた。もちろん美少女もだ。名前はルノン・ムート。可愛らしい名前だったが、うーん、まだピンとこない。ルノンは五人姉兄妹の末っ子らしい。夫婦仲は良さそう。父親の名前はエルデ・ムート公爵。公爵?!やった。念願が叶った!!相当な金持ちだと思っていたけどまさか公爵家だとは…。公爵という高い地位にありながら、エルデ公爵は優しそうだった。でも、ものすごく気になるのが、本来母親の肖像画がある所が黒く塗りつぶされていた事である。これは…訳ありなのかな、。そして、一番上はお姉様でノルエ姉様。赤髪のボブヘアで凛々しい顔立ちの美人だった。2番目と3番目のお兄様は双子。出た、双子!でもあんまり似てないかも。ルーン兄様とルーエ兄様。二人とも肩までの若干長髪でルーン様は赤髪に黒のメッシュ、ルーエ様は黒髪のウルフカットだ。この頭にするする入ってくる感覚、なんだか懐かしく感じる。それで最後にもう一人のお兄様、ノエム兄様。このお兄様、なんと言えない美少年だった。黒髪のウルフカットはルーエ様と同じだったけれど後れ毛は赤髪。ここでさらに萌え要素、オッドアイだ。他の姉兄は私と同じ赤色の瞳なのに対して、ノエム兄様だけは右眼は私達と同じ赤色だけど、左目は少し濃い赤色だった。なんか、漫画のキャラみたい、いや、漫画なのか?でもとにかくこれは生で見てみたい!!あー、ついつい日元が緩んでしまう。
「ふ、ルノンがそこまで家系図に興味があるなんて知らなかったよ。」
「へ?!」
いつの間にか隣には女性のような容姿とは裏腹に低音ボイスな男性が座っていた。いけない、いきなり現れたもんだからまた咄嗟につい変な声が出てしまった。えー、この綺麗な方は…
「ルーンお兄様?!」
あれ、違ったのかな…?あからさまに驚いた表情をしたこの人は肩までの長髪、赤色の髪の毛に黒髪のメッシュでルーンお兄様でしかないのだけれど…。
「どうか…されましたか?」
緊張して少し、声がふるえてしまった。
「いや、何でもないよ。いつから僕のことをお兄様と呼んでくれるようになったのかと感動してしまってね。普段はほら、ノエムにしかお兄ちゃんと呼ばないから。」
そう言って笑う姿は何というか、THE・少女漫画みたいだなと思ってしまった。なんだ、呼び方を間違えたのか、、。
「そ、そうですか?寝ぼけてしまって…。ごめんなさい、ルーン様。」
すると貴人はがっかりした様子で、
「今日のルノンは意地悪だな。」
と仰られた…。漫画で見るときっと格好いいんだろうけど、やばい、只のシスコンに見えてきた。いや、格好いいけども!!
「そんなことないですよ。あ、ルーン様は何かお探しですか?」
「うん、そろそろ昼時だからね。一緒に食べる人を探してたんだよ。」
あーーー、なるほど。まあ、お腹も空いてるしついて行こうかな。
「私もちょうどお腹が空いていたんです。ぜひ一緒に。」
「そうかい、じゃあ行こうか。」
そう言ってルーンは私の手を引いて歩き出す。兄妹ってこういうもんなのかな、距離が近いような気もする。というか、ものすごく背が高い、百八十cmはありそうだ。それに、この人の眼って絵で見たときと少し色が違うような…。てっきり私と同じ色だっと思っていたけど、どちらかというとノエムお兄様の濃い赤に近い気がする。何か意味があるのだろうか。じっくりと観察しているとそれに気づいたのかルーンがこちらを見て少し微笑んだ。
「どうしたんだい?僕の顔、何か変?」
「い、いえ、瞳が綺麗だと思って…。」
「そう?なんだか、今日は素直だね。」
「え、そう思いますか…?」
いつもはもっと素直じゃないのだろうか…?ルーンを見つめてみても相変わらず笑うばかりだった。
書庫の出口を出て、廊下をしばらく進み、階段を恐らく一階分上がってしばらく行くとようやく食堂に着いた。本当にこの屋敷は広い。
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