見事な短編中華時代小説!

 KAC2025の第4のお題、「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」という書き出しを指定されての本作。
 中国戦国時代の戦国四君に数えられる、「孟嘗君(もうしょうくん)」という人物にスポットを当てております。

 時代小説は、ただの伝記とは違い、エンタメ要素を加えるために脚色されるのが常であり、そこが大きな魅力となっているジャンルだと思います。
 本作もその例に漏れず、渋い文体と史実をもとにしつつも、指定されたお題に合わせた要素が加えられております。
 それが「孟嘗君」こと「田文」が見た9回の夢です。

 本当にこういう逸話もあったのかと思えてしまうほどに、見事にお題を昇華されている力作です。まさにエンタメ時代小説として整えられた逸品です。
 それゆえ、中国史に詳しくない私のような者でも面白く読めましたし、また「孟嘗君」という人物や、彼の逸話から生まれた故事成語に興味を持ち、実際に調べてみたりするほどです。

 中国史への深い愛と、それを確かに表現できる高い実力が窺える本作。
 ぜひとも一読くださいませ!

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