第4話「エルフとしての新たな日々」

エルフの森は、美しかった。


柔らかい陽光が降り注ぎ、木々の間を抜ける風が心地よい。

川のせせらぎや鳥のさえずりが響く静かな世界。

ここは、私が生まれた エルフの里 だった。


生まれてからの記憶は驚くほど鮮明で、気づけばエルフとしての生活にすんなりと馴染んでいた。

前世であった日本のことは時々思い出すけれど、それが気になるほどではない。


「エリーナ、今日も元気ねぇ」


ふと、誰かに呼ばれる。

振り返ると、私を育ててくれた“リュシア”が微笑んでいた。

彼女は私の母……ではなく、エルフは里全体で子供を育てるため、私の育ての親のような存在だ。


「うん! 今日は川で遊んでくるね!」

「川に入るなら気をつけなさいよ」


私は元気よく手を振って、里の外れにある川へ向かった。



この世界では、エルフは基本的に長寿であり、成長もゆっくりらしい。

私は生まれてすぐに話すことができたし、すぐに歩くこともできた。

それでも、まだ子供扱いされるのは仕方がないことらしい。


「……でもまぁ、のんびりしてていいよねぇ」


水面に足をつけながら、私はふっとため息をついた。


前世では、学校の勉強や人間関係に追われる日々だった。

今は、何も焦ることなく、ただ平穏に過ごせる。

木の実を取って食べたり、川で魚を獲ったり、森を駆け回ったり。


── もしかして、これって最高のスローライフ?


私は、この生活をすっかり気に入っていた。



エルフの里の生活は、シンプルだが穏やかだった。


食事は森で採れた果実や木の実、時々獲れる川魚。

水は森の泉から引かれ、魔法で浄化されている。

戦いとは無縁の、平和な暮らし。


もちろん、魔物が出ることもあるけれど、エルフの長老や戦士たちがしっかりと守ってくれている。

それに、エルフの魔法は強力らしく、里全体を守る結界も張られている。


つまり、私にとっては 全く危険のない、のびのびした生活 だった。


「……ああ、でもちょっと退屈かも.....?」


私は空を見上げて、のんびりと寝転がる。

青く澄んだ空に、白い雲が流れていく。


── でも快適だし……まぁ、平和が一番だよね〜


そんなことを思いながら、私は微睡んだ。



『第4話 完』

次回、第5話『魔法と森の暮らし』へ続く!

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