銀河騎士隆盛期 零 宙の章 一方通行
銀河騎士隆盛期 零 宙の章 5~6
5
カンデンとキンタはまず水晶の結晶を再度、励起状態に出来るかを試みて、不可能なことを確認してから、亜光速で推進するブルーノーズ号に重力制動をかけた、これに電気タンクの電子容量の80パーセントあまりが失われた。
二人は船を完全には停止させなかった。赤外線照射量を計測して、一番近くのヒノ恒星系という、観測して名前だけ付いている、銀河連邦では未踏の恒星系の第三惑星に大量の水と、十分な酸素があり、寒暖差が人類の生存に可能であることを確認して、船の航路を修正して、その星に向かうことにした。
その惑星に、何度かの軌道修正をして、たどり着いて、重力圏内に入り、大気があると仮定して、その地表になんとか軟着陸する為のエネルギーの総量を計算して、のこりの電子容量で足りるかどうかを確認すると、ぎりぎりだった。もちろんこの計算を主にこなしたのはYWC2だったが。
二人はこの航行の予定期間、約80時間をPE57Qにも加わってもらって、各4時間づつ、3交代で操縦席に座り、航路の監視をすることにした。
この船のキャプテンはカンデンである。カンデンはこの方針を決定した訳だが、それは暗澹とした想いをカンデンに抱かせた。それは往路の希望のない一方通行の絶望的な旅だった。
6
PE57Qにコクピットを任せたカンデンは、食堂の丸椅子の上で放心しているキンタに「とにかく何か食べよう。こういう時には、それが一番だ。」と言い、食糧庫からコーンスープの缶詰と、チョコレートバーと、ビスケットブロックと、レトルトパックのベーコンステーキと、ジャガイモのパテを用意してきて、作り付けのキッチンにむかって、片手鍋にペットボトルの蒸留水を入れて、ヒーターの電源を入れて、湯を沸かし始めた。
十五分ほどして、片手鍋の湯がわいてから、缶詰のスープを入れた湯煎で温め始め、コーンスープが十分、温まった頃合いに、レトルトのベーコンステーキをいれ、ジャガイモのパテのパックも一緒に温めた。
キンタが用意したスープ皿と平皿に、料理を盛り付けて、二人が並んで食べ始めたのが、カンデンが何か食べようと言ってから30分ほど経ってからのことだった。
二人はナイフとフォークを手にして無言で食事をした。それはまるで何かの儀式のようだった。
食事を終えてからキンタが初めて口を開いた。「先生、大丈夫ですよね?」カンデンが「キャプテンの俺がこんなことを言うと怒られそうだが、何とかなるさ。根拠のない気休めだけどな。」と言うと、キンタは笑いながら「先生はまったくあてにならないんだから。つきあうこっちの身になってくださいよ。」と愚痴を言った。カンデンはそれに対して「怒られついでに言うけど、一服しても構わないか?」そう言うとキンタは「食事の片づけがおわってからなら良いですよ。」と答えて、二人はとにかくテーブルの上のゴミと空の缶詰や皿を片づけることにした。
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