【ガンダム考察】GQuuuuuuXが他シリーズと繋がっている可能性について

水涸 木犀

仮説:「GQuuuuuuX世界とGレコ世界は繋がっているのではないか」

※注意※

本エッセイには、ガンダムシリーズ(特に、GQuuuuuuX、Gのレコンギスタ、∀ガンダム)のネタバレを含みます。これらを視聴しておらず、かつこれから視聴するつもりの方は読まないことをお勧めします。


※注意2※

本エッセイにて、特定のガンダム作品を貶める意図は一切ありません。あくまでいちガノタの好奇心の赴くままに考察をしているだけの文章です。コメント欄での、特定のガンダム作品への誹謗中傷はご遠慮ください。



 上記注意事項をご理解いただけた方のみ、続きへお越しください↓







 




 KAC2025は、私(水涸木犀)は連作短編で参加しています。もちろんそちらの方の執筆も進めているのですが、その最中にふと気づいてしまいました。

「今回の三題噺のテーマで、GQuuuuuuXの考察記事が書ける」

 ということを。


 この考察を書くためには、「宇宙世紀」「∀収束説」「Gレコの立ち位置問題」など、割とガノタの間で議論が分かれるトピックを扱わなければならないので、やや気が重い面もあります。しかし思い付いたら書く。それがKACというものです。ゆえにあくまで、あくまでも水涸木犀といういち個人の考えであることをあらかじめご承知おきの上で、この先にお進みください。


・・・


◆GQuuuuuuXの衝撃

 2025年3月18日現在、劇場版で公開されている「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」は、衝撃をもって迎え入れられました。何しろ、オープニングシーンはシリーズ第一作、「機動戦士ガンダム」と全く同じなのですから。

 GQuuuuuuXは「機動戦士ガンダム」の第一話でシャアがガンダムの奪取に成功し、そしてアムロがニュータイプとして覚醒することなく(というか、登場することもなく)ジオン公国が勝利した世界です。この時点で、「機動戦士ガンダム」及びその後に続く各種宇宙世紀のガンダムシリーズとは矛盾が生じています。故に、GQuuuuuuXはパラレル宇宙世紀、として解釈されています。


 ここまでは、GQuuuuuuXだけを見た方でもご理解いただけるかと思います。しかし、GQuuuuuuXがパラレル宇宙世紀だとした場合、ガノタ水涸木犀が気になるのは次の疑問です。


「GQuuuuuuXは、∀ガンダムの黒歴史の中に含まれるのか?」


 というのも、ガンダムシリーズにはとある暗黙の約束事があるのです。それは、「全てのガンダムシリーズは、∀ガンダムに収束する」というもの。∀ガンダムというのは特徴的すぎる見た目から、初見の人にはまずガンダムとは思われないヒゲのMS、およびそれが登場する作品「∀ガンダム」を指します。


◆「∀ガンダム」と黒歴史の概念

 ∀ガンダムには、「黒歴史」という概念が存在します(=一般用語化している「黒歴史」の元ネタです)。これは、ざっくり言うと「∀ガンダム世界より前に引き起こされた、人類の戦争の歴史(負の歴史)」であり、実際にヒロインたちが「黒歴史」を見ているシーンでは、「∀ガンダム」より前に放送されたガンダムシリーズの映像が次々に流れていきます。ここでいうガンダムシリーズとは、宇宙世紀のみならず「アナザー」と通称される「暦に宇宙世紀を使っていない」作品も含まれるのがミソです。

 そもそも、「宇宙世紀」の暦で描かれるガンダムシリーズと、「宇宙世紀以外」の暦で描かれるガンダムシリーズの世界は交わらない。「∀ガンダム」が放送されるまではそれが常識でした。しかし、「∀ガンダム」の黒歴史で両者がまんべんなく扱われたことで、「全てのガンダムシリーズは、∀ガンダムに収束する」という考えが示されたのです。よって、「∀ガンダム」以降に制作されたガンダム作品も、漏れなくこのルールが適用されると考えているガンダムファンが多いです(私もそのうちのひとりです)。


◆「Gのレコンギスタ」の登場による「お約束」の揺らぎ

 しかし、とある作品の登場によりこの前提が揺らぎ始めました。その作品というのが「Gのレコンギスタ(Gレコ)」です。こちら、「機動戦士ガンダム」「∀ガンダム」と同じく富野監督が自ら手掛けた作品であり、れっきとしたガンダムシリーズの一員ですが、いくつかの要素が物議をかもす要因となっています。


 まず一つ目に、Gレコ世界の暦は「リギルド・センチュリー」。つまり宇宙世紀ではない=アナザー作品に位置づけられるのですが、「リギルド・センチュリー」は「宇宙世紀の後の時代」であると作中で示唆されています。実際に、石化したザクⅡが出てくるなどします。故に、暦だけ見るとアナザーだが、世界観は宇宙世紀と若干繋がっているという、微妙な立ち位置の作品なのです。


 二つ目に、ガンダム世界最凶かつ禁忌の兵器、月光蝶が登場します。これは、前述したヒゲのMS、∀ガンダムが持っていた「世界を終わらせる力を持つ」力です。ものすごくざっくり言うと、世界のあらゆる物質を灰にすることができます。こんなMSがいたら、天下無双必至です。というかそのせいで地球の文明が一度滅びているので無双しすぎです。

 月光蝶という強すぎる力をもつがゆえに、∀ガンダムはガンダムシリーズの中でも最強のガンダムであるという認識を広く持たれており、「全てのガンダムシリーズは、∀ガンダムに収束する」という言説をより強固なものにしています。

 ところが、この月光蝶を使うMSがGレコに出てきてしまったのです。それも主人公機ではなく、サブヒロイン機として。しかも、そこまでとんでも兵器という風ではなく、ただその特殊な光をチラ見せするだけという「ちょい出し」の登場でした。当然ながらガノタ界隈は大いにざわつきました。

 月光蝶は∀ガンダムの専売特許だったはず(※正確にはターンXも使えますが)。サブキャラがしれっと使っていい代物ではないというのは、「∀ガンダム」で散々語られている。では、Gレコで出てきた月光蝶は何なのか。


 この二つで界隈をざわつかせた末に生まれた三つ目の要素、それは富野監督本人がとあるインタビューで、「この世界の時系列でいうと、「Gレコ」は「∀ガンダム」の後に来る作品だ」と述べたことです。無論、「∀ガンダム」を作ったのも、「Gレコ」を作ったのも富野監督なので、監督が後から設定を変えるのは自由です。しかし、全てのガンダムシリーズが∀ガンダムに収束するという前提でガンダム作品を見ていたガノタ(私)は大いに困惑しました。なにしろ、「∀ガンダム」という作品とMSは、全てのガンダムの先にあるという強い説得力を持っていましたから。


 こういった三つの要素が合わさって、Gレコのガンダム世界における立ち位置は非常に微妙なものとなっています。グッズ展開が他のシリーズに比べて明らかに少ないのも、「宇宙世紀で売り出すべきか、アナザーで売り出すべきか」がどっちつかずであることが一因なのではないかと個人的には考えています。私自身はGレコの物語とキャラクターたちがとても好きなので、釈然としない部分――「∀ガンダム」との繋がり――をすっきりさせて、もっと腹落ちした上で楽しむことができたらもっといいのになと常々考えていました。


◆提唱:「GQuuuuuuX世界とGレコ世界は繋がっているのではないか」説

 そんな中登場したのが、GQuuuuuuXです。前述した通り、「∀ガンダム」に出てくる「黒歴史」は「∀ガンダム」より前に放送されたガンダムシリーズの戦いの歴史が映し出されるので、最初に登場するのはアムロとシャアの戦いの記録(=「機動戦士ガンダム」)です。GQuuuuuuXでアムロとシャアは(今のところ)戦っていないので、ここにGQuuuuuuXの話を混ぜると黒歴史の中で矛盾が生じる。よって、現時点では「∀ガンダム」の世界とGQuuuuuuXの世界は繋がっていない、と考えるのが自然です。


 しかし、Gレコのほうはどうでしょうか。Gレコは「宇宙世紀とつながっており」「月光蝶が登場し」「∀ガンダムの後の時代である」作品です。実は、この三要素だけでは、Gレコと∀ガンダムの世界が繋がっていない可能性も考えられるのです。

 GQuuuuuuXが登場するまでは、「そんなバカな」と笑い飛ばされる話だったでしょう。「宇宙世紀は、アムロとシャアの邂逅にはじまる物語」という一本線があった中で、パラレル宇宙世紀という考えはそもそも生まれませんでしたから(※「機動戦士ガンダム」と一部内容が矛盾するガンダムシリーズもありますが、それでもアムロが存在しない、ということはありませんでした)。しかし、GQuuuuuuXの存在によりパラレル宇宙世紀という可能性が生じたことで、私の中でひとつの説が生まれました。


①「機動戦士ガンダム」……種々のアナザーガンダム&宇宙世紀シリーズ……「∀ガンダム」 の系譜と

②「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」……「Gのレコンギスタ」 の系譜


という二系統が存在するのではないか、と。


◆検証:「GQuuuuuuX世界とGレコ世界は繋がっているのではないか」説

 私がこう考えるに至ったのは、GQuuuuuuXの主人公機の呼び名に強い引っかかりを覚えたためです。皆様、エグザベ少尉とマチュが乗っている機体、何と呼んでいますか? 作中でも、ゲームでも、ガンプラ紹介のCMでも、何なら公式HPでも、あの機体の名前は「ジークアクス」と書かれています。私もそう思っていました。


 しかし、劇場でbeginningを視聴した際、緑のおじさんが一度だけ、あの機体を「ガンダムクアックス」と呼んでいた記憶があるのです。私は劇場版を一回しか見ていないのであまり自信はなかったのですが、Xで検索したところ私以外にもあの機体を「ガンダムクアックス」という名称で認識している方がいたので、聞き間違いではなかったようです。


 「ガンダムクアックス」が正式名称だとするならば、あの機体に印字されている「GQuuuuuuX」という機体名は「G(ガンダム)」+「QuuuuuuX(クアックス)」という構造になっているわけです。私がガンダムシリーズを見てきた中で、ガンダムの名前を「G」+「○○」という形で表す作品はひとつしか知りません。そう、Gのレコンギスタ(Gレコ)です。


 Gレコには、「ガンダム」と名のつく機体は登場しません。代わりに、「ヘルメスの薔薇の設計図」という機密文書に記載されている設計図をもとに作られたMSが「G系統」と呼ばれ、G-○○という名称で記述されるのです(G-セルフ、G-アルケイン、G-ルシファーなど)。G系統の機体は「とりわけ性能の高い機体系統群である」とされていますが、それがガンダムであるとは明言されていません。実際に、あまりガンダムっぽくない見た目の機体もG-系統として扱われています。


 というわけで、G系統というのは「過去のガンダムシリーズで主力を張った機体(ガンダムに限らず)の設計図」なのではないか、と私は推測しているのですが、そもそも過去のガンダムシリーズの登場MSで、G-○○という記述方式で書かれた機体は記憶にありませんし、Gレコ世界のG系統の機体は、あまり宇宙世紀時代のMSに似ていません。Gレコ世界は宇宙世紀の後の時代、と明言されているにもかかわらず、です(しいて言うならG-ルシファーにキュベレイの面影を感じるくらいでしょうか)。

 ここでGQuuuuuuXの登場です。機体名がG-QuuuuuuX(G-クアックス)なのであれば、G系統のMSと命名規則が同じです。そして、GQuuuuuuX世界のMSはまだほんの少ししか出てきていないので、今後Gレコ世界のMSに似た機体が出てくる可能性を秘めています。そして何より、GQuuuuuuXはパラレルとはいえれっきとした「宇宙世紀」の作品です。


 そうです。GQuuuuuuXがG-クアックスである可能性がある、と気づいた時、Gレコ世界の過去にあたる宇宙世紀は、「機動戦士ガンダム」ではなく「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」なのではないか、という説に行き当たったのです。この説が脳内に浮上した瞬間、Gレコと「∀ガンダム」のつながりにまつわる様々な違和感も霧散していきました。


◆「∀ガンダム」→「Gのレコンギスタ」だった場合に感じる違和感

 ――前述の説が有効だった場合、これらの違和感は払しょくされうる

 Gレコ世界が「∀ガンダム」の後の世界だと仮定した場合、引っかかる点がいくつかあります。まず何より、月光蝶の扱いがラフなこと。Gレコで月光蝶を行使するG-ルシファーのパイロット、ラライヤとノレドは慎重な性格です。その場のノリと思いつきで危険な兵器を使うキャラではありません。ゆえに、「∀ガンダム」であれだけ危険性を強調されていた超兵器をあんなに簡単に使うとは到底思えません。

 このモヤモヤは、「そもそもGレコに出てくる月光蝶と、「∀ガンダム」に出てくる月光蝶が似て非なるもの」であるとするならば解消されます。Gレコ世界でも「∀ガンダム」の世界でも、宇宙世紀との間に歴史的断絶――地球文明の消滅――があるのは明らかです。二つの世界がパラレルならば、Gレコ世界と「∀ガンダム」の世界で、地球が滅んだ理由が違う可能性もあるのです。

 Gレコにおいて、月光蝶がその本来の能力(=物質を灰にする)を発揮するシーンが描かれていないことも、この説を支持してくれます。「∀ガンダム」の世界のあとにGレコ世界が来るならば、「ラライヤとノレドは相手を威嚇するためだけに、危険な兵器をチラ見せした」と説明するしかなくなるのですが、前述のとおりこの二人がそんな目的で月光蝶を使うとは思えません。しかし、G-ルシファーの月光蝶の能力が、そもそも∀ガンダムの月光蝶とは別物(=文明を消滅させるほど危険な兵器ではない)なのだとしたら、あそこで彼女らが使ったのも頷けます。

 間違いなく言えるのは、Gレコに登場する月光蝶らしきものが、周囲の物質を灰に変える描写は無かったということ。となると、やはりふたつの月光蝶は別物である可能性が浮上します。


 そして、「∀ガンダム」とGレコでは、世界観に大きな乖離があること。もし、「∀ガンダム」の後の時代にGレコの時代が来るのであれば、人類の文明は少なくとも二回滅びかけています。一回目が∀ガンダムの前、二回目がGレコの前です。ここで気になるのがGレコ頻出用語「クンタラ」の存在です。「クンタラ」とは、人類が極貧の時代に、食用人種として扱われていた差別階級の人々を指します。Gレコの時代にはもう「人が人を食べる」という残忍な所業は行われていないのですが、その言葉と差別意識は残っています。メインキャラの何人かにもクンタラ出身者がおり、それが戦いの一因にもなっているため物語において無視できない要素です。


 しかし、「∀ガンダム」の世界ではこうした被差別階級の地球人、という概念は存在しません。一度地球の文明は滅んでいるので、Gレコ世界と同じく「クンタラ」に類する人類がいてもおかしくないのですが、そういった描写はないのです。主人公ロランの周りの人々が皆上流階級だから、平民階級以下の一般人が描かれていないだけ、と言ってしまえばそれまでなのですが、∀ガンダムは日常描写に力を入れている印象が強い作品です。それなのに出てこないということは、やはり「クンタラ」は存在しないと考えるのが自然でしょう。


 また、年頃の少女たちの描写もこの二つの作品はずいぶん異なります。∀ガンダムは封建社会っぽいというか、ティーンエイジャーの少女たちは家庭で家族を支えたり、フィアンセがいたり、身寄りがなければ仕事をして生計を立てたり、と言った形で描かれています。ヒロインのひとりであるソシエは活発な性格で、MSにも乗りますが彼女はこの時代では例外的なおてんばという扱いを受けています。

 対して、Gレコのティーンエイジャーの多くは、学生として登場します。Gレコは女性陣のダンスシーンがやたらと多い作品なのですが(アイキャッチでもメインキャラが踊ります)、ヒロインのノレドはセントフラワー学園のチアリーディング部に所属しており、序盤から主人公ベルリを応援する目的でダンスを披露しています。

 「∀ガンダム」ではソシエくらいしかいなかった、活動的で行動力ありまくりの女性キャラが、Gレコはたくさんいるのです(私がGレコが好きな理由のひとつでもあります)。二度文明が滅んだとはいえ、∀ガンダムの後の世界に生きる女性が、こうも変わるものでしょうか。


 また、宇宙での生活感の描写も、「∀ガンダム」とGレコではだいぶ異なります。「∀ガンダム」の世界では、宇宙に出たことのなかった地球人の殆どは宇宙の特殊な環境に混乱し、暴動を起こします。しかしGレコ世界ではみんなすんなりと受け入れて、ものすごく人間味のある生活を送っています(日本人的な布団で雑魚寝のシーンもあります)。


 むろん、それぞれの作品が発表された年の時代背景も反映しているとは思います。「∀ガンダム」の時代に比べて女性の社会進出は進んでいますし、宇宙が遠い存在ではなくなってきています。それでも、この二つの作品には、「続き物」として捉えるには越えがたい隔たりがあるように感じるのです。


 こうした「腑に落ちなさ」を、「「∀ガンダム」世界とGレコ世界はパラレルafter宇宙世紀説」を使うと私は納得することができるのです。GQuuuuuuXの登場が、その可能性に気づかせてくれました。


◆最後に

 長くなってしまいましたが、ともかくガンダムシリーズにおけるGレコの立ち位置が見直されて、純粋に作品内容を楽しむファンが増えたら嬉しいなと考えております。Gレコの再評価と、GQuuuuuuXのヒットを祈念して、このエッセイを閉じたいと思います。


 ガンダムシリーズに栄光あれ!

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