第3話大粒の雨が降っていた。。
体を追いかけて部屋の外に出ると、病院から連絡を受けて駆けつけた僕の両親と、歳の離れた妹がいた。
医師が静かに告げる。
「残念ですが、息子さんの命を助けることができませんでした。申し訳ございません。」
母は崩れ落ち、嗚咽を漏らす。
「嘘…信じられない…」
父は唇を噛みしめ、何も言わずにただ拳を握りしめた。
妹は泣きながら僕の名を呼ぶ。
「まだまだ人生これからだっていうのに…」
悲しみの声が白い病室に響き渡る。
僕はその光景をただ見つめることしかできなかった。
それから先は、本当にあっという間だった。
通夜と葬式は家族葬で厳かに行われ、親族が静かに手を合わせる。
「どうしてこんなに早く…」
「もっと話したかったのに…」
遺影には、まだ二十歳になったばかりの、希望と若さに溢れた僕が笑っていた。
でも、もうこの笑顔の僕はどこにもいない。
やがて、僕の体は高温の炎に包まれた。
ゴウッ…
骨が砕ける音が微かに響く。
焼かれる痛みはないはずなのに、どこか遠くでそれを感じている気がした。
扉の向こうでは、母のすすり泣く声が聞こえる。
「ごめんね…守ってあげられなくて…」
妹は「お兄ちゃん…」と、小さな声で何度も呟いていた。
父は言葉を失い、ただ拳を握りしめていた。
骨になった僕を、家族は震える手で拾い上げる。
僕のすべてが、小さな骨壺の中に収まっていった。
家と職場を往復するだけの人生。
帰宅すれば倒れ込むように寝て、起きては簡単な晩飯を食べ、また寝る。
土日も平日の疲れを癒すために眠るだけ。
そんな日々を繰り返し、ついに僕は永遠の眠りについたのだろう。
もう、苦しまなくて済む。
家族を悲しませてしまったのは心苦しいけれど、少しの安堵感も抱いていた。
僕の体はとうとう灰になり、すべてが終わった。
窓の外を見ると、大粒の雨が降っていた。
まるで家族の悲しみを映し出すかのように。
だけど、なぜだろう。この雨の音が、心地よくてたまらなかった。
幽霊になった僕が、あの世に行く前にこの世で楽しむ49日間 @mashiro316
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