第2話 カラダが軽くなった

宙に浮いたまま、死んでしまった僕の体をしばらくの間眺めていた。

目は閉じたまま、体はみるみる血の気がなくなり、紫のような白いような、不気味な色に変わっていく。まるで正気のない人形のようだ。

まさか、こんなに簡単に人生の終わりが来るとは夢にも思わなかった。


医師が死亡を確認し、処置室から『体』が運び出される様なので、僕も部屋から出ようと宙に浮いたままの幽体を前に傾けた。しかし、うまく進まない。微かな風にもゆらゆらと揺れて、右へ左へと流れてしまう。

どうしたものか……。


壁を蹴っても、平泳ぎやクロールの要領で手足を動かしても、思うように進めない。だんだんと焦りが募った。早く部屋から出ないと!

そう強く思った途端、幽体からだがふわふわとドアの方へ吸い寄せられ、気づけば部屋の外に出ていた。


――なるほど。

どうやらこの幽体からだでは、物理的に手足を動かして移動するのではなく、行きたい場所を強く念じることで移動できるらしい。

仕組みがわかると、妙にすっきりした気分になった。


おかげでが軽くなった。

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