天下無双でダンスする少女は布団のなか
一陽吉
異世界で踊るよ!
「戦いに行ってきま~す。おやすみなさ~い」
そう言って布団をかぶり、静かに目を閉じる私。
そのまま意識は夢のなかへ、ではなく異世界へと移っていく。
そこはゲームやアニメではおなじみの剣と魔法の世界であり、かつてのヨーロッパのような文化をもっているため、その建物や人々の服装も、当時を思わせるものになってる。
現代の日本で暮らす、日本人の父とドイツ人の母の間に生まれた私にとっては訪れるたびに新鮮さと懐かしさを感じちゃうのよね。
「さあ、目を開けて、起き上がりま~す」
そう言いながら私はゆっくりと身体を起こし立ち上がる。
それと一緒に、同じく神殿内にある石造りの聖壇に横たわっていた他の私も、ゆっくりと身体を起こし立ち上がった。
白い肌に金髪、緑の瞳をして、一見するとふつうの人間なんだけど、私のものも含め、それら全て魔導工学によって作られた義体。
そこに意識と魔力がなければ稼動しない。
いまは私の意識とそれに付随した魔力を得て、本体とも私の義体を基軸に二十九体の義体は一斉に稼動するんだよね~。
体型は私のもので、服装は黒を基調とした肩章もある軍服ではあるけど、私の意見が取り入れられたデザインが反映されて、現代風なのがいい感じ。
それが二十九体あるだから、私のクローンが三十人いるような状態になっている。
まあ、気にしないけどね。
「さあ、はじめるよ~」
私の声に反応し、二十九体の義体がそれぞれ配置につくと、私は右手でぱちんと指を鳴らした。
同時に、この世界では有り得ないダンスミュージックが神殿内に流れ、それに合わせて、私たち三十体は踊り出した。
いわゆるチームダンスであり、全員、同じ踊りをしている。
お父さんが動画で見せてくれたジャネットジャクソンのリズムネイションをお手本にしたもので、ストリートダンス風のテイストながら繊細さと力強さがあると自負してるよ。
そんなかんじで踊っていくと、神殿内に光が満ちていき、床に魔法陣が展開していった。
それはやがて一定の規模にまで高まると、力の塊となって勢いよく神殿から放たれていく。
放たれた力の塊は夜空を飛び、郊外にある草原へと落下する。
落下したその先には魔族の軍勢、だいたい千人くらい。
武器をもって、防具に着た兵隊さんのほか、魔馬に乗る上級魔族たちもいて、上空からの脅威に対し、すぐさま防護結界を張ったみたい。
だけど、物理も魔法も受け止める結界は機能せず直撃。
魔族の軍勢を飲み込んじゃった。
それによって、次々と倒れていく魔族たち。
戦意を失って、力が抜けちゃったんだよね。
この世界、人間が住む街を魔族が襲撃することは珍しくなく、武力や魔法で抵抗していたけど、そのどちらも魔族の方が上回っているから、人間が劣勢になってたみたい。
そこへ現れたのが異世界転移者である私、十五歳の美少女ネヨルであり、物理でも魔法でもない、音楽とダンスのエネルギーで魔族の軍勢を無力化しちゃうのよね。
第三の力的な私の明るく楽しいダンスエネルギーは魔族にとっても未知であり、対抗する
何より、気持ちよく踊って、人を守れるなんて、最高よね!
この国の王様さん。
また魔族が攻めてくるようだったら私を呼んでね。
天下無双でダンスする少女は布団のなか 一陽吉 @ninomae_youkich
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