第18話 謝罪 +2



真っ暗闇の中


土下座する俺


それを仁王立ちで見下ろすナギ


状況を整理しようとしたけど無理だな。


マジでなにしてんだろう。


なんかこれ、浮気が発覚したカップルみたい。


すげーいやだ。


あっでもナギならあり得そう。


「ねぇねぇ! チバってさ〜頭踏まれて喜ぶ特殊性癖だったりしないかな? 」


「なわけあるか!! 」


俺は条件反射で立ち上がった。

なんかツッコミが絶妙に上達してる気がする。

地味に嫌だな。


「わっちは楽しいからええけどな〜」


「新しいの出た」


「いいでしょ? ちょっと昔は栃木あたりで使われてたんだよ〜」


「この服かわいいでしょみたいに言われても」


「あっ、ちなみに近くに地獄があるんだけど、ちょっち見に行かんけ? 」


「なにデート感出してんだよ!? 地獄を新しくできたカフェみたいに言われてもどう反応すればいいのかわかんねぇよ! 浮気すんぞコラ! 」


「チバはそんな根性ないと思いますが、そんなこと言う人とはもう付き合いきれません。別れてください! 」


「そもそも付き合ってすらねぇよ! なにやらせてんだよ! この見た目詐欺女! どうせ経験豊富な雰囲気だけだして売れ残るタイプだろ! 」


「よくわからないけど胸が痛む! 」


「わかるか? これを図星って言うんだ」


「いいねぇ〜」


「もうお前と話したくねぇよ、、 」


「ええ〜楽しくない? 」


「楽しくねぇわ!むしろ疲れる。なんで死んでまでお前にツッコミ入れてんの俺」


「死んでねぇぞ?? 」


「は? 」


「でも死後の世界にはいるよ? 」


「はぁ!? 」


「地獄を見せるって言ったじゃーん! 」


「タイミング考えやがれボケ!!! 」


俺の叫びは虚空に轟いた。





ツッコミで疲れて息切れしてる俺は、膝をついてひと休みしていた。


疲れた。まじで。


ってか肉体疲労がある? なんか感覚が戻ってきたような、、、


「だいぶ馴染んできたみたいやね」


「頼むからちゃんと説明してくれない? 」


「しょうがない子だねぇ〜」


「権利はあると思うんだけど」


「確かにね」


「お前には義務があると思ってる」


「アタシィ義務って言葉が嫌いなのぉ」


「気色悪いからやめてくれ」


「にひひ」


俺はウザ絡みするナギを説教しながら、事情を聞き出すことに成功した。


ナギが言うには、気絶した俺をトカの本尊に載せて、俺の意識と魂の一部をここに送ったらしい。


俺の扱いがだいぶ酷い。やっぱ謝罪されるべきなのは、圧倒的に俺の方だよな? しかも悪気なく楽しそうに説明されたんだけど? は?


「やぁ〜ごめんねぇ〜。最初は謝ろうと思ってたんよ〜。でも〜チバも悪いんだよ〜ねぇ。ぼくのことを自首しないやつだとか呪うとか言うからぁ〜ねっ? 」


「煽ってる?」


「あとね! トカにも聞こえてるよっ! あの不遜で陳腐な薄ら寒いダジャレもね! 」


「怒ってる?」


「どうでしょうか?」


「すみません」


俺って確実に被害者だよな?


「いつものことじゃない?」


「お前、、もういい。疲れる。」


「ふふっ! 」


なんか嬉しそうでうざいな。


「ってかさ、まずここがどこか説明しろよ」


「はいなっ! でもさっき言った通りですよ〜。地獄の近く! 」


「ざっくりすぎるわっ! 」


「名前忘れちゃってねぇ〜だってみんなアレとかアッチみたいに言うんだもん! 」


「じゃあここがどういう場所か教えてくれ」


「う〜ん、輪廻転生ってあんじゃん? アレって言い得て妙なんすよ。死んだら魂から記憶とか人格とかを削ぎ落とすのね。流石に全部は無理なんだけどさ〜。もうね、落ちない汚れみたいなもんなのよっ!! それが前世って呼ばれてるやつ。」


「前世を食べカスみたいに言わないでくれる?」


「だってそういうを落とさないと可哀想なことになる子が多いんだもん」


ナギの口調のせいで、重要な話のはずなのに軽く感じる。そんでわかりづらい。わざとか?


「勘のいいガキは嫌いだよっ! 」


「言ってみたかっただけとか言うなよ? 」


「実際に深く知らない方が君のためだよ」


「わかったよ」


詩生うたきのそういうとこ好きだよ」


ナギは独り言のように囁いた。


さっきまでチバ呼びだったのに、、、


不意を突かれて照れてしまった俺を見て、ナギも自分の発言に気づいたらしい。顔を背けられた。また無意識か、初心うぶかよこいつ。


俺はさっきの馬鹿な漫才とトカに露呈した勘違いのせいで変に意識してしまっていた。


きっと俺のこれも勘違いだ。うん。

ドMでもあるまいし、こんな散々な扱いしてくる傲慢で性悪な頭のおかしい女に好意なんて持てるはずがない!


見た目だけはいいにしても、、あれ?


「お前、着替えた?」


「あっ! ちょまっ! 見るなぁ!! 」


ナギはしゃがみ込んで顔を両膝にうずめ、押し黙ってしまった。本日二度目のショート。


俺は呆気に取られながらも、しっかりナギを凝視した。してしまった。


見るなと言われると見てしまうというか、、

そもそもなんで今まで気づかなかったんだってくらいに魅せられる。何故か目を惹かれる。

さっきまで普通に話していたんだから、認識できていたはずだ。でもどんな格好をしてたか思い出そうとしても記憶にない。馴染むって言ってたのと関係があるのか?


ってかそれよりもナギの見た目だよな。


普段はガサツなギャルみたいなくせに、、


なんか神社の偉い人みたいな格好って言えばいいんかな? それか舞をする時の巫女服を派手にならないように華美にした和装? 説明するのが難しいな。でも、、凄く綺麗だ。


雰囲気まで違う気がする、、というかナギに感じる違和感が増したような、、、


あっ、、やめだ! やめ!

これ以上考え出すと確信してしまう。


説明が難しい理由がわかった。

無意識でを避けてたからだわ。


思考を切り替えよう。これは俺が勝手にやってる義理でしかないけど、ナギにとっては大事な気がする。


あれだ!馬子にも衣装ってやつだ!


俺は大きく頷いて、ここで自己完結させた。

そのおかげか余裕ができ、視線をナギの服から顔の方に目を移した。すると銀髪からチラ見えする耳が赤い。まだ照れてるな。


こうして見れば、やっぱナギってかわ、、、


これもなし!!!


チョロすぎだろ俺!


こいつから受けた屈辱の数々を思い出せ!


うん!


俺もだいぶ動揺してるな。思考が右往左往し過ぎている気がする。


ってかさ、今日一日でナギがキャラブレ起こしすぎじゃね?


存在自体がラノベのキャラみたいな癖に要素盛りすぎだろ、、


人のことマジで言えねぇよな。そもそも口調が安定してない時点でキャラブレどころじゃなかったわ。もし俺がコイツがキャラのラノベの作者だったら絶対書くの苦労する。わかる。


「ぅぐぁっっ!!」


突如、臀部でんぶに強烈な痛みが走った。そのせいで俺は素っ頓狂な叫び声をあげながら横に吹っ飛ばされてしまった。例えるなら意識の外からドロップキックを喰らったみたいな感じ。いや、実際に喰らってたわ。倒れる寸前、ナギが空中から着地するのが見えた。


ナギはまた、仁王立ちをして冷たい声で俺に聞いた。


「ねぇ、私に言うことない? 」


「大変申し訳ございませんでした」


本日、三度目の謝罪。

今度は自分から土下座をした。

これは二回で済んでよかったな、、

でも俺が受けた被害を天秤に載せたら絶対にナギの方が比重が高い気がするんだけどな。


三割くらい反省してたら、ナギがなんか呟いてたけど、今度は聞こえなかった。



「ありがと、、、」

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