第16話 口は神災の元
「あ! あとナギが名前で呼ぶのが珍しいっていうのは? あと早すぎるって?」
結局そこについては話されていない。
「貴方もわかってるようだけど、ナギって人間大好きなのよねぇ。私もそうよぉ? でも私と違ってあまり深入りしすぎないのよねぇ。 それこそ百年に一人くらいかしら?
確かに、、、
人称も口調も安定しないくせに、そこは変わらないのか〜って思ってたんだけど。ナギなりの距離感があるんだろう。
ただ、急にだよな、、
「
「え!? マジすか?」
「私が貴方に素敵な提案をしてたらねぇ大きな声で『
心当たりがあるようなないような、、
あの時は私物扱いされてるって思ってたな。
「だいぶ貴方も大事にされてるわよぉ」
「それは、、まぁ、、、」
一応、少し、わかってきた。
「見てたでしょぉ? 貴方のことになるとナギはだいぶ怒るのよねぇ。そういう時に『
「うっ」
少し恥ずかしい。
でもそっか、そう考えたら名前で呼んでくれ出したのって俺を守ってくれた時だったよな?
気になったからナギの方を見る。
未だにしゃがみ込んで俯いたままだ。
まだ整理がついていないのか?
「必死でついつい出ちゃったのかしら? ねぇ?」
トカは嘲るような声で楽しそうに言う。これは俺に、というよりナギに言ってる気がする。
ナギはなにも喋らない。
よく見ると顔がまだ赤いな。
「面白いでしょぉ?」
「えっとー、、」
俺に同意を求めないでほしい。あとが怖い。
「ふふ、それにしてもナギも変わったわねぇ」
「え?」
「さっき言ったでしょう? 深入りしすぎないって。昔のナギはねぇ、人間全体を等しく愛していたのよぉ。でも今はねぇ、ふふ、まるで人間みたい」
なんのことを言ってるんだろうか?
わかりそうだが、わからないままにしておいた方がいい気もする。なんて考えてたらおかまいなしに話は続けられた。
ちょっと、トカさん?
「今ナギはねぇ、貴方や
また大笑いしてる。
ほんとさっきまでの邪気はなんだったんだってくらいに愉快に笑ってる。
この一連の出来事に悪気は一切ないな。
トカさん、、俺も被害者なんだが。
でもあのナギがこんな反応するとはな。
俺のことを散々な扱いしてた癖に、、、
ただ俺のためを思っていろいろ動いてくれたんだよなぁ。今回の報酬も俺に出してくれてたしってことは、金がない俺のためにわざわざ引き受けたとか? 今までの照れ隠しとか?
いや待て。
この話を続けていいのか?
気づいた時には遅かった。
背筋が凍りつく。嫌な予感がする。
恐る恐るナギを見た。
目が合った。
けれど睨まれた。真っ赤な顔で。
見なかったことにしよう。
◆
「
何事もなかったかのようにナギは言う。
満面の笑顔にものすごい圧をのせて。
誰もこれ以上はなにも言わない。
調子に乗ってナギを揶揄い倒していたトカも、壁にふたつ目の穴が開いてさすがに観念した。
俺の直感もこれ以上考えるなって言ってる。
切り替えよう。
「そもそも地獄ってどういう場所なんだ?」
「なんつーか、ゴミ箱みたいなもん!」
「はぁ!?」
「トカ!あんた地獄出身だからわかるでしょ?」
「嫌なこと思い出させないでちょうだぁい?」
また少しピリついた威圧感が流れる。
マジでトカって何者!?
あっでも地獄を体験させられたり、悪戯って言って死にかけるようなことさせる悪辣さはそう言われば納得できるような、、
「なんか失礼なこと考えてないかしらぁ?」
「いいえなんでも、、」
思考筒抜けで会話に入るの嫌だもう!
普通の人と話してたのが懐かしいぐらいだ。
「チバァ〜トカはな、地獄でいう下働きだったんよ!まさに今のお前のようやね」
またナギの口調が乱れだしたし!
やっぱこれってわざとだよな?
喧嘩してた時は余裕なくて素が出たとか、、
まぁ、大きく乱れてなかっただけで多少不安定だったのは変わりないが。
今度は空気が冷たい、、ナギの威圧感か?
「チバっっくん? 今ね〜我直々に説明を賜ってあげているに、聞いてるのかなぁ〜?」
またあの目を置いてけぼりにした笑顔を向けられた。これ説明を聞いてないことに怒ってるんじゃないだろ、、
「あらぁ〜ナギちゃんもう
「あ“ぁ? もっかい下積みからやり直させてやってもいいんだぞ??」
「そう言って今まで何度も見逃してくれたのは誰だったかしらねぇ?」
「お前のクソ信者が泣いて縋ってこなけりゃぁあんたくらい一瞬で神位を剥奪できんだからな?」
「あらぁ〜せっかく人間になろうとしてるのにいいのかしらぁ?」
「今すぐお前の神髄をブチ割るくらいならできるよ〜?」
トカが意趣返しをするようにナギを煽ったせいでまた喧嘩が始まった。
もうやだ帰りたい、、、
お互い負けず嫌いなとこあるよなぁ。
それのせいでこっちは散々だし。
仲直りでもして早く話を進めてくれ。
いや、喧嘩するほど仲がいいって言うしな。
案外この二人って相性いいのか?
「黙れ!!!」「黙りなさい!!」
トカとナギに同時に怒鳴られた。
しかも威圧感込みで。
俺は漫画みたいに吹っ飛ばされた。勢いそのまま壁に打ち付けられて、ついに気を失った
◆
「やりすぎたな、、」
「そうねぇ、、死んでないかしら?」
「死んでねぇよ!! 見たけど気絶してるだけだ。たぶん疲れてたんだと思うぞ」
「あなたって昔から人の扱いも神の扱いも酷いわよねぇ?」
「うるさい!! あふたーけあはちゃんとしてるんだからね! チバもアタシの力で治してあげてたし、絵を描けるように疲労まで取ったぞ!」
「もうなにも言わなぁい。でもどうしましょう?
起きるまで待つのは嫌よぉ?」
「コレ、ちょうど良くないか?」
「あら? このまま見せるってこと?」
「このまま眼鏡を外して、アンタの神髄にもたれかけさせればいいだけだし」
「ちゃんと説明しないでいいのかしらぁ?」
「地獄を覗かせるのはお前に任せるよ。あんま得意な方じゃないし。アタシはそこに介入するよ。そうすればアンタも余計なことできねぇだろ?」
「面倒押し付けないで欲しいわねぇ」
「ほら、やるぞ」
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