第2話 たぶん人間じゃない
窓から見える景色がだいぶ鮮やかになってきた。濃い橙にほのかに紫が混じり出す。
俺は冷めたコーヒーを眺めながら状況を整理した。
悪夢に悩まされて、なにかしらの疾患を疑って精神科医に行った。結果、精神科医に売られた。
翌日、言う通りに行けば一時間以上待たされた上、変な女に気に入られた。
唯一の救いは喫茶店の店主の
そんなことを俺に言い放った厄介な女
名前はソラナギ。ナギって呼ぶと喜ぶんだと。
口調と人称が安定しない。話が通じない。胡散臭い。嫌な三拍子が揃った人間の言葉を話す災害。俺はこいつに買われたらしい。未だになにをさせられるかわかんない上に、嫌な予感しかしない。
この女、っていうか人?なんかわからん。
でもコイツは違う。知らない概念に出会ったような変な感じがした。見た目は、銀髪を除けばズボラな女の形をしている。深夜のコンビニで缶ビール買ってそう。
「君、いまだいぶ失礼なこと考えてるよな?あと気づいてるみたいだね〜まだ教えないよ!」
「だからなんでわかるんですか?ってか早く俺に何が起こってる説明してください。その酒も結構かかってるんですから」
「ごめんね
「
「うーん、、」
「察してはおられるかと思いますが、憑かれてますね。それでなんですが、その存在がだいぶタチが悪くて、、、君が生きてるのが奇跡的なんですよね。だからナギにしか解決できないというか。まぁ、僕らのやってる仕事に協力して欲しいんですよね。それでどうにかなるというか」
「そういうことです!アキちゃんさすがっす!さぁ!
とりあえず相当やばいことはわかった。けれどコイツに頼るのはなぁ。あと仕事ってなに?
「
「うるさい!なんでそんなことまで知ってんだよ!?先生にも言ってないぞ。ってかあんたにそんなん言われる義理ねぇよ!自分でもんなことわかってんだよ、、、」
見透かすように表に出したくない過去を暴かれ、思わずタメ口で飛び出た。ってかこいつに気を遣うのは無理だ。限界。
「やることなすこと全部適当なとこで終わってる。でもだからこそ面白い。お前みたい人間そういないヨ。ひとつを極めたやつはすげぇ。けど君みたいにいろんな経験をして、最初はそれなり本気で取り組んでたんだろ?そういうやつは味が複雑で上質なんだよ」
「なんなんだよお前!それにさっきの覚醒とかなんとか、、知らないぞ?」
「まぁ置いておけ。都合がいいんだ。それよりも悪夢のこと教えてちょうだい?アッキー!コーヒーちょうだい!」
心の中に土足で踏み込まれ、訳知り顔で好き勝手に言われていい気がしない。しかも口調が安定しないのが地味に鼻につく。よくわからないことを言うし。確定した。俺はこいつが嫌いだ。人の悩みを肴のように聞こうとすんじゃねぇ。
「悪夢っていうか、夢かもわからないんだ。寝起きによく俺に殺意を持ったなにかに襲われたよ。直前までは金縛りみたいなんだけど、掴まれた瞬間に動けるようになるんだ。条件反射みたいに俺もやり返すんだけど、押し倒したり腕の骨を折ったり首を絞めたり、、それでもあいつ笑顔を向けてきてどうすればいいかもうわかんねぇよ!」
「
「
「そうですね。彼なら特にあまりサポートもいらなそうですし」
「なんの話?」
俺が知らない話を勝手に進めんなよ、、
早く教えて?俺どうなるの?
「君、絵が描けるんでしょ?」
「あ、そうだけど、、」
「まぁそういう仕事」
「はぁ?」
もっと詳しく説明しやがれや。
このぶっ壊れAI女。
最終学歴は幼稚園の中退だろ。
「幼稚園は知ってるぞ?」
「当たり前のように思考の返事すんな」
「
「
「説明が難しいですし、実際に体験した方が早いんですよ。あと
「
「私はここで留守番してますね」
「え?は?」
ナギがカバンを俺に持たせて、手を引っ張り強引に連れ出された。
うん、流されたな。
俺が流されやすい性格だからと言ってここまで流暢に巻き込まれる体験は稀なんじゃない?
感情が置いてけぼり。
唯一の救いの
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