第十一篇 青春時代スイミング

泳ぎ切れるだろうか


いや泳ぎ切るのだ、この青春時代を


僕は置いてかれたのかも知れない、あの時代に……それとも何かを置いていったのかも知れない、あの時代に


光が差し込む放課後の廊下から


巨大な巨大な水溜りで泳ぐ人々を見下ろしてみると、なんだか綺麗なリフレクション


あの爽やかな風はビンであろうと真空パックであろうと、とっておけないことを


分かっていながら今日も教室の隅の世界で頬杖をついて白い雲、青い空を見ている


その雲の流れ着いた先に誰かいますか


僕のハート泥棒の彼女の影を感じながらあえて見ないふりした黄昏の頃


懐かしくて笑った瞬間だけは明確に写真じゃなくても覚えてるみたいだ


机に彫った優しい雨傘は季節を飛び越えて


記憶を飛び越えて僕を呼び出す


だから再び思い出したやうに泳ぎ出す


泳ぎ出す


25mよりも遥か遠くて愛おしい半直線に


泳ぎ切れるだろうか


いや泳ぎ切るのだ、この青春時代で

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