第3話 合同バレーの体育①
昼食後は運動部お待ちかねの体育の授業である。そして入学して間もない零士達の学校の伝統というべきか、4月に男子女子合同のバレーの授業を実施されている。そして男子たちが同級生の女子たちにアピールするチャンスが生まれるというのだから、やる気を出さないわけがない。
「というか俺らのクラスって女子の顔面偏差値かなり高いよな?」
「あぁ確かに高いな……その中でも小鳥遊は頭一つ抜けているな」
「そういえば、茉奈のことだけど、今日もバスケ部の先輩からの告白を断ったって話だぞ」
「昨日に続き今日も告白されているのかよ……」
(なるほどな……さっき外に小鳥遊さんがいたのは告白されていたからだったのか)
零士は一人部屋の隅の方であまり肌を見せないように隠れながら着替えていた。別に話を盗み聞きする気があるわけではないのだが、大きな声で話されては嫌でも耳に入る。
「俺……茉奈に告白しようかな」
「マジか!?やめとけって!もう何人も玉砕しているって噂だぞ!」
「……だよな――!」
「そうだそうだ!今は外から眺めているだけにしておけって!それだけでも十分眼福だろ?」
「あぁ……俺授業中ずっと見てるし」
「うわ、キモッ!まぁ俺もだけど」
茉奈へ遊びの誘いを積極的にしている中西が告白をしようと冗談交じりに話していた。やはり高校入学して人気沸騰中の女子の筆頭である茉奈の話題ばかりになる。それもそうだろう、あれだけ男子と会話しているのだから彼女が話題の中心になるのは必然だろう。
(体育の授業は色々と騒がしくなりそうだな)
ただでさえ盛り上がりそうな合同バレーの授業が、茉奈の影響により更に熱くなりそうだと想像しながら零士は更衣室から出た。
****
「よ~し、集まったな!新入生の交流のために今月は男女合同バレーをするぞ!男子の連中は、女子には手加減するように!それとチームは公正を期すために“くじ引き”で行うからな。じゃあ、この箱からくじを引いて同じ番号同士集まって、時間も無い事だし直ぐにでも試合行うぞ――!」
体育教師ということで熱血漢あふれる男であった。大きな声で指示を出して簡潔に内容を説明してくれた。そして教師の指示通りに男子用と女子用のくじ引きの箱に出席番号順に列になって引き始める。
(俺の番か……えっと6番)
特別思い入れがあるわけでもないので手を入れた瞬間近くにあった、くじを引いて番号を確認した。
「6番の人こっちに来て――」
甘ったるくきゃぴきゃぴとしたあざとい声が体育館内に響いた。それは、ここ一週間で聞き慣れた茉奈の声であり、騒がしい体育館内でもハッキリと聞こえるほど透き通っていた。一瞬静まり返ってしまうほどに、多くの生徒の意識が彼女の方へと寄せられる。
春先にも関わらず半袖の体操着によって二の腕が惜しみなく晒され、中学卒業したばかりにも関わらず大きな双丘が窮屈そうに体操服を圧迫しており、短パンから伸びスラッと健康的で蠱惑的な素脚は大変魅力的だった。そして普段は髪を結ばない茉奈がおさげのように結んでおり普段と印象の変化からか男子どころか女子からの視線を集めていた。
(俺って運悪いのかな……)
「おっ、おおぉぉx!俺も6番だッ!やったぜ―――!」
「マジかよ、うらやま!でも良かったな」
更衣室で騒いでいた二人組であり零士と同じ番号なのは、中西であり嬉しさを隠し切れないのかピョンピョンとジャンプしながら大きな声で笑っていた。
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