第14代帝王 メルクリウス3世
人名 = メルクリウス3世
異名 = 使役帝
各国語表記 = Mercurius III
代数 = 第14代
在位 = 3382年12月21日 - 3395年4月10日
メルクリウス3世(ノ:Mercurius III,)は、世界秩序ノヴァの14代ノヴァ帝王(在位:3382年12月21日 - 3395年4月10日)。出生名はシュライン・ケープホース。
== 生涯 ==
=== 即位まで ===
22歳のときにイリプ商会に入社した。実務能力は多分にあったものの、怠惰な性格によって仕事をさぼりがちであり、ろくに業績をあげなかったため、長く冷や飯を食い続けた。42歳の時に、バイモス商会との共同事業を行った際に、同商会のベツァジャイル・クズバンドと出会う。人を扱う能力に長けたクズバンドは、あの手この手でケープホースを働かせ、もともと能力はあったケープホースは、次々に大きな業績を上げた。これにより二人は意気投合し、共同でヒィンド社を設立し、多くの事業を担った。ケープホースは生来の卓越した手腕で事業をこなし、彼の怠惰な性格が仕事をなまけようとすると、すかさずクズバンドがアメとムチで彼を働かせた。この頃のケープホースの発言として「私はクズバンドの奴隷でございますよ」というものが記録されているが、これは当時の彼のおかれた環境を上手く表している。これによりはじめは小規模な事業を展開していたヒィンド社は、時と共に勢力を拡大し、ノヴァ政府からの受注も受け付けるようになった。このような流れの中でケープホースは時の世界帝王ホノリウス3世と知己を得、これが彼の世界帝王即位に繋がったとされる。
=== 在位 ===
==== クズバンドによる使役 ====
3382年12月にメルクリウス3世として即位した。帝王に即位しメルクリウス3世となった後も、彼はクズバンドをそばに起き続けた。相手が世界最高の権力者となってもなお、クズバンドは従来通りあの手この手で帝王を働かせ、メルクリウス3世もうわべでは悲鳴をあげながらもそれを容認した。これをよく思わなかったのが貴族や官僚たちである。本来世界最大の権力者であるはずの世界帝王が、どこの馬の骨とも知れぬ輩に隷属することは、彼らには我慢ならないことだった。ノヴァの権力構造において、貴族や高位の官僚より上に位置する者は世界帝王のみであるべきであり、帝王がそれ以外の者に隷属することは、その人物もまた貴族や官僚よりも大きな権力を持つことを意味するからである。帝王科挙を経ていない人物を頭上に戴くことを良しとするほど、彼らは寛容ではなかった。
==== クズバンドの死と職務放棄 ====
3388年7月、貴族や官僚らは謀ってクズバンドを暗殺した。彼がメルクリウス3世の旧友であることは広く知られていたため、彼が動揺するのを防ぐために、事故死であると伝えられた。これにより、貴族や官僚らは権力機構上の"目の上のこぶ"を排除することに成功し歓喜したが、すぐに新たな問題に直面することとなった。クズバンドに使役されなくなったメルクリウス3世は、抑圧された怠惰性を爆発させ、少しも仕事をしなくなってしまったのである。
職務放棄して以降、メルクリウス3世が仕事をさぼる言い訳として多用したのが、「今は政務を行うのに完璧なコンディションではない」というものだった。心身の状態が完ぺきとは言い難いため、優れた政治政策を実行することが困難であると主張したのである。この思考法は生酢塗塗(なまずぬるぬる)による清浄な精神とも通ずるものがあるが、この論考が数多くの批判を集めたように、メルクリウス3世の主張もまた正当とは言い難い。南北冷戦時代の歴史思想家のミッチイ・ミ・ミッチイは「クズバンドが生きていれば、こうしたメルクリウス3世の主張は、まったく意味をなさなかっただろう」と指摘している。当時のメルクリウス3世の政務を阻む最大の障壁は、あれこれ理由を付けて職務放棄するという態度そのものであり、一度職務に取り組んでさえしまえば、多かれ少なかれ業績を上げたと考えられている。ミッチイは、新佛太太消による「とにかく創れ。0より-1の方がはるかに良いのだから。」との発言を引用し、この点も指摘している。
3388年暮れから始まるメルクリウス3世の職務放棄は、歴史上初めて、世界帝王が世界の統治を放棄した瞬間でもあった。はじめはあの手この手で帝王を働かせようとした貴族や官僚も、3389年にはそれが不可能であることを悟り、帝王の指示を仰がずに主体的に動くようになった。完全に職務を放棄したメルクリウス3世は、日々娯楽に明け暮れ、貴族や官僚の専横を止めなかったため、この傾向は年と共にますます強まった。ここに、3400年代から始まる世界帝王を傀儡とした貴族や官僚による専制政治の萌芽が見られる。
==== メイナルドによる弾劾 ====
3395年、帝王による支配という伝統的な統治体制の崩壊を憂慮した世界首都裁判所第七裁判官のメイナルドがメルクリウス3世のもとを訪れ、帝位にあるにもかかわらず職務を放棄したメルクリウス3世を激しく弾劾した。かつて、公の場で世界帝王をこれほど激しく非難した人間はいなかったため、誰もがメイナルドが帝王の逆鱗に触れ、処刑されるのではないかと危惧したが、大方の予想を裏切り、帝王は自主退位を認めるとともに、メイナルドを次期帝王に推したのである。これによりその年の4月にメルクリウス3世は退位、6月にメイナルドがレガリス2世として即位した。
=== 退位後 ===
退位後、メルクリウス3世は退位した帝王に認められる莫大な年金を用いて気楽な引退生活を謳歌し、92歳で世を去った。
== 評価 ==
=== ホノリウス12世による評価 ===
ノヴァ帝王の研究で知られ、自身も68代帝王だったホノリウス12世は、自著『帝王列伝』で以下のように評した。
「歴史を鑑みるに、ケープホースは帝王になるべきではなかった。クズバンドこそが帝王になるべきだったのだ。彼が帝王として君臨し、ケープホースを下僕として使役していれば、世界は超長期にわたってケープホースの能力の恩恵にあやかれたことだろう。しかし、他人を使役する能力ではなく、実務能力を問う傾向が強かった当時の帝王科挙が、それを阻んだのだ。世界は、才能の多様なるを知るべきである。」
ーホノリウス12世、『帝王列伝』
== 逸話 ==
・メルクリウス3世がクズバンドに使役されながら帝位にあった当時、クズバンドのふるう鞭にヒーヒー言いながら職務を行っていたため、「ヒーヒー虫帝王」と称された。
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
==関連項目==
ホノリウス3世 ← 3382 - 3395 → レガリス2世
代数 人名 即位年 退位年 在位年間
1 ノヴァ大帝 3203 3225 22
2 シトリウス1世 3225 3239 14
3 メルクリウス1世 3239 3243 4
4 シトリウス2世 3243 3256 13
5 シトリウス3世 3256 3270 14
6 ホノリウス1世 3270 3281 11
7 レガリス1世 3281 3283 2
8 シトリウス4世 3283 3298 15
9 メルクリウス2世 3298 3300 2
10 シトリウス5世 3300 3319 19
11 ホノリウス2世 3319 3340 21
12 シトリウス6世 3340 3363 23
13 ホノリウス3世 3363 3382 19
14 メルクリウス3世 3382 3395 13
15 レガリス2世 3395 3413 18
16 シトリウス7世 3413 3419 6
17 シトリウス8世 3419 3424 5
18 シトリウス9世 3424 3437 13
19 シトリウス10世 3437 3440 3
20 マルス1世 3440 3446 6
21 ホノリウス4世 3446 3453 7
22 シトリウス11世 3453 3462 9
23 メルクリウス4世 3462 3470 8
24 メロス 3470 3477 7
25 アポロ1世 3477 3478 1
26 メディクス 3478 3484 6
27 シトリウス12世 3484 3484 0
28 ホノリウス5世 3484 3486 2
29 シトリウス13世 3486 3507 21
30 メルクリウス5世 3507 3508 1
31 シリウス 3508 3513 5
32 エデュカトル 3513 3514 1
33 バルカン1世 3514 3539 25
34 シトリウス14世 3539 3542 3
35 ホノリウス6世 3542 3563 21
36 シトリウス15世 3563 3565 2
37 バッカス 3565 3565 0
38 オリンピア 3565 3577 12
39 バルカン2世 3577 3580 3
40 シトリウス16世 3580 3585 5
41 マルス2世 3585 3594 9
42 ホノリウス7世 3594 3627 33
43 アグリカ1世 3627 3657 30
44 アグリカ2世 3657 3669 12
45 シトリウス17世 3669 3674 5
46 ホノリウス8世 3674 3688 14
47 ハルバ1世 3688 3700 12
48 レガリス3世 3700 3720 20
49 メルクリウス6世 3720 3731 11
50 メルクリウス7世 3731 3736 5
51 レガリス4世 3736 3750 14
52 マルクス 3750 3763 13
53 マルス3世 3763 3781 18
54 ホノリウス9世 3781 3784 3
55 ペルセウス 3784 3804 20
56 バルカン3世 3804 3812 8
57 ヘラクレス 3812 3843 31
58 オリハルコン 3843 3870 27
59 シトリウス18世 3870 3887 17
60 ホノリウス10世 3887 3919 32
61 ハルバ2世 3919 3926 7
62 クロノス 3926 3947 21
63 シトリウス19世 3947 3977 30
64 ヘルメス 3977 4004 27
65 ホノリウス11世 4004 4015 11
66 アポロ2世 4015 4046 31
67 シトリウス20世 4046 4069 23
68 ホノリウス12世 4069 4105 36
69 メルクリウス8世 4105 4113 8
70 ハルバ3世 4113 4134 21
71 ハルバ4世 4134 4170 36
72 ホノリウス13世 4170 4202 32
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