第2話 初めての出会い

第2話:初めての興奮


俺の親は会社を経営していて、そこそこ裕福だった。

普通の家庭よりも大事に育てられたし、勉強もかなりさせられた。


けど、俺はそんな環境に息苦しさを感じていた。


俺の周りには、「自由」 に生きてるやつが多かった。

タバコを吸ってるやつ、バイクを乗り回してるやつ、学校をサボって遊んでるやつ——

俺はそんな**「やんちゃな奴ら」** を羨ましく思っていた。


親の敷いたレールの上を歩くのが当たり前の人生。

でも、どこかで「もっと自由に生きたい」って思ってたのかもしれない。


だから、あの日——


「おい、ケンジ。暇ならパチンコ行こうぜ」


友達に誘われた時、俺は何の迷いもなく「行く」と答えた。


店に入ると、眩しいネオンとジャラジャラ響く音。

タバコの煙が充満する空間に、一瞬で飲み込まれた。


「すげぇ……」


俺は完全に場違いだった。

でも、すぐに友達が打ち方を教えてくれた。


「とりあえず、これに1000円入れろ」


言われるがままに、パチンコ台に1000円を投入する。


玉が流れ出し、液晶が動く。

何が起こってるのかもわからないまま、打ち続けた。


……すると、数回転目で突然、台が騒ぎ始めた。


「激アツ!!」


「お? なんかすごそうだぞ!」


友達が興奮気味に言う。

画面には炎のエフェクトが走り、キャラクターが激しく動く。


「これ、当たるかもな」


「マジで?」


その瞬間——


「ピュイーーーン!!」


「777」


「おおおおおお!!!」


俺は何が起こったのかもわからなかった。

でも、周りの客がチラッとこちらを見た。

友達はニヤニヤしながら肩を叩いた。


「お前、初打ちで当てるとかすげぇな!」


「え、やばい? これやばい?」


「めっちゃやばい」


ハンドルを握る手が汗ばんでいく。

玉がどんどん出てくる。

座ったまま、ただボタンを押しているだけで、増えていく「玉」という現実。


「おい、もう4000円で8万超えてるぞ」


「マジで!?」


8万6000円。

高校を卒業したばかりの俺にとって、それはとんでもない大金だった。


「やべぇ、パチンコやばい……!」


この時の興奮。

この時の快感。


それが、今でも忘れられない。




あの日の興奮が忘れられなかった。

だから、俺は翌日、一人でまたパチンコ屋に向かった。


「昨日はたまたま運が良かっただけ」


そんなことはわかってる。

でも、俺の脳はすでに「勝つことができる」と錯覚していた。


再び座る。

昨日と同じ台に。


最初の1万円、消える。


「あれ?」


次の1万円、消える。


「……まぁ、昨日8万勝ったしな」


俺は、昨日勝った分だけなら使っても問題ないと思っていた。


けど……


気づけば、財布の中身は空っぽになっていた。


「10万……全部なくなった……?」


頭が真っ白になった。

昨日の勝ちが、何もなかったかのように消えていた。


俺は店を出て、しばらく呆然とした。

たった1日で、昨日の8万6000円どころか、追加の金まで消えた。


「……なんで……?」


けど、この時、俺は「ギャンブルをやめよう」とは思わなかった。


むしろ、こう思った。


「次は勝てるはずだ」



俺の性格


俺は依存しやすい性格 だ。

何かにハマると、そればかりやってしまう。


子供の頃からそうだった。

ゲーム、漫画、スポーツ……一度のめり込むと、周りが見えなくなる。


そして、それはパチンコでも同じだった。


あの日の「4000円が8万6000円に変わった快感」は、今でも脳裏に焼き付いている。


結局、翌週も俺はパチンコ屋に足を運んだ。


……気づいた時には、もうギャンブルの虜だったのかもしれない。

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