【~2022/8月】今宵は瞳をとじて&愛していると囁いて【過去の番外編や感謝企画、裏話まとめ☆】※読み合い対象外💘
フルーツロールx
【ブログで感謝企画・まとめ☆】
【ブログで感謝企画】春のスペシャル版🌸(2022/4/5~4/9・公開分)
ブログで感謝企画🌸春のスペシャル版➀🌸
【⭐️はじめに・ブログで感謝企画とは?⭐️】
◇主に2021/2月~2022/8月までの間に、魔法のiらんどのブログに、本編とは別に掲載していたストーリーです。
ブログの感謝企画の中では、本編ではあり得ないようなキャラの絡みが誕生したり、本編では起こり得ないビックリ展開が起こったり、時には、ブログで感謝企画に登場させるキャラを、作者が本当にくじ引きで決めたりと、基本的にはコメディテイストな、本編よりも自由な番外編のような物語です。
下記より、過去に掲載していた【第十三回ブログで感謝企画】を載せます。 ※ここでの掲載順は、作者の気分で決めております。 十三回よりも以前の物語も順々に載せていきます。
*―――*―――*―――*―――*―――*
皆様いつも、本当にありがとうございます!第十三回ブログで感謝企画🌸🌠始まります!
――――*
これはある春の夜に彼らがやらかした、奇跡の話である。(※細かい時系列は気にせずに楽しんでね☺️)
――流れ星が消える前に、三回願い事を言うと、願いが叶うって言うだろう?
いやいや迷信だろうって? そもそも、流れ星が消える前に三回願い事を言う時間なんて、ないだろうが……――って、思っているだろう? それが、無理でもなかった訳だ――……
――ある春の夜の事、雪哉、聖、陽介、純の四人は一緒に街を歩いていた。 すると何気なく夜空を見た瞬間に、流れ星が流れる――
聖「あ、流れ星……」
聖が思わずそう呟くと、他の三人も夜空へと視線を移した。 だがそこにはもう、流れ星はない。
陽「え~! 聖クン良いなぁ~! オレも見たかったぁ~」
だがすると今度は雪哉が『お、また流れた!』と。
陽介は『ウソッ?!』とすぐにまた夜空を見上げた。
するとスマートフォンを眺めながら、純が言う。 『流星群だとよ。 スマホのニュースに書いてあった』と。
陽「ならまたすぐに流れるじゃん! ラッキー~!! なぁにお願いしようかなぁ~!!」
雪「三回なんて唱えられなくねぇか?」
陽「ユッキー!! 夢の無いことを言うな!! 三回唱えられないだと? なら一回は?……」
雪「あ? けど流れ星には三回……」
――だがすると、陽介は言った。
陽「ボクたちは〝四人もいる〞じゃないかー!!」
雪聖「「ッ?! つまり?!」」
純「あ? いやよく分からねぇけど……三人でやってろ」
すると陽介はいつも通り『純さま冷たーい!!』と。 ――だがさておき、彼は〝三人いればどうにかなると踏んだ〞らしいのだ。
聖「あっ三人で同じ願いを!」
雪「それでも願いを言い切る前に、流れ星は消えるんじゃねーか?」
陽「唱えなきゃいい! 〝ォラッ!!〞の一声に全てを乗せるんだ!! ラリアットかますような勢いで!!」
雪「なっなるほど?!」
聖「天才?!」
――そして三人は、呆れた様子で腕組をしている純をよそに、『じゃあ次流れたら実行しようぜ?!』と。
――すると、流れた――……
陽雪聖「「「ォラッ!!」」」
『よし! 願いが叶う筈!』『あ? そういや、何願った?』『世界平和!』『将来安泰!』『一攫千金!』――『ダメじゃねぇーかよ?! バラバラで!?』
三人で〝ォラッ!!〞に乗せる願いは同じでないと、三回唱えたことにならない筈だと、三人は何を願うかを話し合い始めた。 だが――『あ! 流れ星!』すると反射で三人は願わぬまま『『『ォラッ!!』』』と――。 ――そしてその頃純は、星には願っていないが、何気なく思っていた。 〝奴らの情報を探る手段があったらなぁ~〟と。 そう、一連の事件の裏で糸を引いていた黒幕組織であった、中国に拠点を持つ裏組織、
――そして彼らはその時、気が付いていなかった。 陽介と雪哉と聖の『『『ォラッ!!』』』に、純のその願いが乗ったことに――……
――そしてその頃時を同じくして、違う街の夜空の下にもある四人組がいた。
雨神日本支部の幹部である四人組、鉱石の和名をコードネームと定めた〝
そして彼らも――
瑪「分かった! 三人一緒に乗せれば良い! 〝ォラッ!!〟ってエルボーかますような勢いで!!」
灰「っ……気が付かなかった。 その手があったか!」
黒「メェくん、天才なの?」
そして『ではまず、“ォラッ!!”の練習を~』と、言うことで……――流れ星が流れた瞬間三人で『『『ォラッ!!』』』と――……
――そしてその頃、黄玉は三人の茶番には付き合わずに、ただ一人で思い耽っていたのだった。 〝エンジェルの残党の協力者の中に、どこの組織にも属していない謎の四人組がいたな。 奴らは一体何者だ? 奴らの情報を得られたなら……〟と――。
――*そう、彼らそれぞれ四人組は、同じ夜に互いに“敵側の情報を得られたなら”と、そう流れ星に願った訳である――……
――さぁ、あの流れ星は一体、彼らの願いをどのようにして叶えただろうか?――
――
――――*
……――確か昨日の流星群の夜、あの後四人で雪哉のアパートへと行った筈である。
そこで皆で飲んで食べて……――そしてそのうちに、寝てしまったのだろう。
――目が覚めた時、まだ空は暗かった。 夜中にふと、目が覚めたのだろう。
――だがそうして夜中にふと目を覚ました陽介と聖は、ポカンとしたまま言葉を失っていた。
寝ていて夜中にふと目が覚めた筈なのに、なぜか自分は突っ立っていて……〝いやいや、オレどれだけ器用なんだよ?〟って、一瞬そう思ったのだが……―――辺りを見渡せば、そこには白塗りの知らない通路が広がっていた。
――そして隣に、知らない男がいる。 歳は自分たちよりも、いくらか年上だろうか? おそらく二十代後半くらいだろう。
聖の隣には、黒髪に赤いメッシュを入れた男が立っている。
そして陽介の隣には、黒髪に黒いハットを被り、ゴシックメイクを施した、やたらと個性の強い人が立っている。
聖陽「「だっ誰??……」」
二人は互いを見ながら誰? と――……。 そして気まずく思い、思わず視線を反らしてしまう。 すると、窓ガラスに自分たちが映った。
『へ?!』と、二人はまた目を丸くした。
なぜかガラスに映った自分まで、知らない人である。
陽「え?! 何何何?! このガラス、誰を映してるんだ?! 何でオレ、赤髪メッシュの知らない人になってんだ?!」
聖「個性強ぇ人いると思ったら、これ、ガラスに映ったオレじゃね?! どゆこと?! ……ねっ寝ている間に、こんなにハイクオリティなゴシックメイクをオレにしたのは誰だ!? いたずらレベルじゃねーぞ! てかっ……髪まで黒髪にされてるし! ……」
――だがその後に聖は『……いや……あれ? ……でもこれ、本当にオレか……? メイクするとオレ、こういう顔になるの? 何だか、違う気がする……』と、そう言って首を傾げている……
(〝そもそも、アイツらはどこに行った!!〞)
陽「てか、純様にユッキー、“聖”はどこにいるんだよ……」
聖「あ? はい。 “聖で~す”!」
陽「え?! 聖だったの?! ぜんっぜん分からなかった! 誰がそんなハイクオリティなゴシックメイクをしてくれたんだ?!」
聖「あ、ごめんなさい……キミ、誰だっけ??」
陽「聖くん……オレだよオレ。 “陽介”!!」
聖「へ??」
「「……――」」
――自分たちの身に何が起こったのか、その事情に勘づき始めた二人は、みるみるうちに顔を青くした。 正直、聖の顔色はメイクのせいで分からないのだが……――。そうこれは……――
陽聖「「だっ誰かと入れ替わった~~!!」」
〝入れ替わり〞である。
陽介と聖は焦った。 〝この体はどこの誰だ?!〞と、取り敢えず身分証などを持っていないかと、自分に対してボディチェックでもしているかのように、体を両手で叩いて探った。 すると――
陽「ぅわっ?! 何でコイツ銃持ってんだ~?!」
聖「オレも持ってる~?! ついでにオレたち、剣も持ってる~!! ……」
そもそもこの体の持ち主たちは、同じような格好をしていた。 これは私服ではなくて、何かの集団の制服のようなものだろう。
二人はバッと、羽織を開いた。 すると羽織の内側に、筆記体の刺繍が入っている……――
陽「〝
聖「オレの方、〝
アゲートの和名は〝瑪瑙〟。 オブシディアンの和名は〝黒曜〟。
――こうして、全てを察した陽介と聖であった。
そうこれは〝陽介IN瑪瑙〟と〝聖IN黒曜〟である。
二人は絶望した。 そして陽介は聖を指差しながら『ということは、メイク落としても聖ではないんだな……』と。
聖はハッとした。 ――そう、最初は誰かの高度なイタズラかと思っていたが、この体が黒曜だというのなら、メイクを落としたところで、鏡に映るのは自分ではなく黒曜でしかないだろう。
……すると聖は『そんなっ……たっ確かめる!』と。 そして陽介も『まっまだ希望はある……! 確かめよう!』と。
――こうして二人は、黒曜をスッピンにしようと、水道を探して雨神日本支部の内部を駆け回るのだった。
陽「水っ道どこだぁぁ~~!!」
聖「誰かクレンジングオイルをくれぇ~!!」
叫びながら通路を疾走する二人のことを〝瑪瑙さんと黒曜さんが、発狂している?!〟と、目を丸くしながら部下たちが眺めているのだった。
……すると目の前から、見知らぬ女がやって来て『瑪瑙さん、黒曜さん、どうしたんですか?』と。
陽介と聖からしたら“見知らぬ女”であった。 だが彼女は
陽「おっお姉さん! ちょうどいい所に! あの、水道の場所を教えて下さい! あ、案内してくれませんか?!」
桃「瑪瑙さん、どうされたんですか? 水道の場所に案内を? 場所なんて、分かっているくせに……――もしや瑪瑙さん、この桃簾と一緒に並んで歩きたいが為に、そんなことを? そういうことなら、遠回りしましょうか?」
陽「いや、すぐに行きたいんで! 遠回りせずにお願いしますっ!!」
桃「シャイなのですね♡ 瑪瑙さんがそう仰るなら、仕方がありません。 遠回りは止めましょう♪」
聖「あの……クレンジングオイル……お借り、出来ないでしょうか……?? ……」
桃「黒曜さんまで私を口説くのですね♪ ――神様、罪な桃簾を、お許し下さい♪♡」
――こうして二人は桃簾の案内で一番近くの水道へ。
桃「二人の恋のキッカケを生む、約束のクレンジングオイルです♡」
聖「ありがとうございます。 じゃあ手に何プッシュか……」
桃「いいえ。 ボトルごと、お貸ししますわ」
聖「え? いや……」
桃「返しに来て下さいませ。 また会えますわ!」
そして桃簾は、クレンジングオイルをボトルごと貸して、走り去って行ったのだった。
二人は目をパチパチとさせた後に互いを指差した。 そして『あの女の人、黒曜のこと好きなのか?』『あ、いや、瑪瑙のことを好きなんだろう?』と。 謎は深まるばかりである。 彼女は瑪瑙にも黒曜にも灰簾にも黄玉にも、一律あのような態度であることだろう。
――そして運命の瞬間がきた。 〝この体は本当に、オレではなくて黒曜なのか?〟と。
陽介もハラハラとしている。
カラコンを外し、聖は目を背けた。 〝瞳の色が、オレと違う気がする……いや、きっと気のせいだ……〟と。
そしてついに、ゴシックメイクをオフした。
鏡に映った自分を見て、聖は『あぁ~?!』と。
聖「黒曜っお前……! ……スッピン童顔だなぁ~……!!」
陽「聖くん、そこ?! ……いや、確かにそうだけど……」
やはりメイクを落としてもそれは、雨神日本支部の幹部、オブシディアン黒曜の〝スッピン〞でしかない。
『ぅっ……手を見た時点で、本当は気が付いてたんだ! オレの手じゃないって……』と、涙ぐみながら両手で顔を覆う聖であった。
陽「ひっ聖くん! 泣かないで!! 瑪瑙の胸に飛び込んでおいで!!」
聖「陽介ぇ~~!!」
こうしてバッと、友情のハグを交わす二人であった。
――そしてそんな二人を眺めつつ、部下たちは首を傾げて通り過ぎて行く。 〝いや、確かに幼馴染みで、仲が良いのは知っているんですけどね……〟と、“今日の瑪瑙さんと黒曜さんはどうしたものか”と思いながら。
依然二人は通路でハグを交わしている。 ――するとその時『何してんだ? そこのアホ二人』と、どこか冷たい声が二人に問い掛けた。
『へ??』と言って振り返る陽介と聖。
――するとそこには、冷ややかな眼差しでこちらを眺める、銀色の髪をした男が立っていた。
(誰この人? いきなり酷くね? オレらを眺める目が冷たいし……けど何かこの冷ややかさ、誰かに似てねぇか?)
――すると、銀色の髪の男が言う。
「お前ら……――陽介と聖だろう?」
聖「わ! すげぇ。 良く分かったな」
陽「まさかっ?! 純サマですかぁぁ~?!」
すると『そうだ』と言って男が頷いた。
聖「純! 会えて良かった~。 てか、やっぱり純もか……――で? その体、誰のだ?」
純は陽介と聖がやっていたように、バッと羽織を開いて内側を見せた。 するとそこには〝
純「〝黄玉〟」
陽介と聖はそれぞれ純に『オレ瑪瑙』『オレは黒曜』と。
――黄玉、瑪瑙、黒曜、全員雨神日本支部の幹部である。 そして彼らには、思うことがあった。 〝この流れ、絶対ぇ雪哉もどこかにいるよな〟と。 そして更に〝なら雪哉も、幹部の男になってんじゃねぇのか?〟と――
聖「確か瑠璃が言っていたよな。 日本支部の幹部の奴らの名前。 瑪瑙と黒曜と黄玉と……――確かあと……」
純「翠玉と灰簾だ。 ちなみに翠玉とは会った。 翠玉は明らかに雪哉じゃねぇ。 本人だ。 そもそも女だったしな」
陽「ならユッキー、かなりの確率でIN灰簾してんじゃねーの!?」
〝妥当な推測!〟と、三人は頷き合う。 そして『よし! ユキを探す為に灰簾を探すぞ!』と。
当ては灰簾として、灰簾を探し始めるのだった――
――そしてその頃、雪哉はと言うと……――
「テメッ……?! バカふざけんな! 誰だ! どうせ陽介か聖だろう?!」
――そう、寝ていた筈だったのに、いきなり何かをブッかけられて、目が覚めた。
〝どうせ陽介か聖のイタズラだろう!〟と、そう反射的に思い口に出して言いながら、現在バッと目を開いたところである。 だがいざ、目を開いてみると……――
「あ? ……」
なぜかシャワーを浴びている。 〝どうせ陽介か聖のイタズラだろう!〟と、そう思っていたのに、どうやらイタズラでも何でもなく、自分はシャワーを浴びていたらしいのだ。
(はっ?! オレってまさか夢遊病?! 怖っ?!)
“まさか”と、雪哉は顔色を悪くした。 “こんなのは初めてだ……自分が怖ぇ……オレ、夜な夜な動き回ってんのかな?”と。
だが、ため息混じりに顔を上げると、鏡に映った自分が、随分とイメチェンしている。
(あれ? 光も絶賛なオレの赤茶髪が、グレー髪に青のバングカラーに変わっているのは、何故?? ……いや、待てって……そもそも……)
「この人オレじゃねーよ?! 何だこれ?! まさか、鏡に仕掛けが?! ドッキリな鏡?!」
〝鏡に仕掛けが? 早く確かめよう……〟と、誰かの家のバスルームから出ると、脱衣場で違う鏡を見る。 ――だがやはり鏡への映り方は変わっていない。
〝自分の目しか信じられねぇ〟と、前髪や横髪を掴んで自分の目で確かめる。 やはり、グレー髪に青のバングカラーである。 手だって自分の手と形が違う。
「うわ~……何だコレ……夢だと言ってくれ~……」
手早く体と髪を拭くと、取り敢えず腰にタオルだけを巻いて、脱衣場から出た。 そして家の中を見渡しながら、目についた扉を開く。
――するとそこに、知らない女の人がいる。 雪哉からしたら知らない女の人である。 だが彼女はサリナであった。
(うわ~……誰かの体で家の中裸で歩いてたら、女がいた~……なんだこれぇ……どうしよ……この男女は一体、どんな関係なんだ~?!)
「
サリナは顔を赤くして、思わず視線を反らしている。
(うわ~……何でそんなに恥ずかしそうな顔をするんだ~……まさかコイツら、ただの知り合い?! ヤバッ……裸で出てきちまった……! ただの知り合いだったとしたら、すげぇ攻めてくる奴みたいになってんじゃん!!)
“やってしまったぁ~”と、雪哉は内心焦っている。 〝唯吹の人間関係ごじらせる訳にはいかね~し……オレ責任重大かよ……〟と。
「あ、なんか悪い。 無神経だった。 暑くてつい……服着てくるから……」
〝服、脱衣場に置いてあったのか? 置いてある筈だよな〟と、脱衣場へと戻る為に雪哉は翻した。 ――だがその時、前方にある扉が開いた。
「っ?!」
すると開いた扉から、また別の女が入ってきた。 雪哉からしたら、当然知らない女である。 だが彼女は、やむを得ない事情を得て呼び出され、数年ぶりに日本支部へと帰ってきていた
顔を上げた柘榴はいくらか目を丸くした。 だが、落ち着いた様子で『あ、灰簾、勝手に入ってごめん』と。
そして雪哉は〝唯吹だか灰簾だか知らないが、こっちが裸でも、この人は全然動揺しねぇじゃん! これ、こっちの人が彼女じゃねぇか? ……だとしたら、向こうの人はやっぱし……あ? これ、大丈夫か? 修羅場になったり、しないよな?〟と、かなりヒヤヒヤとしているのだった。
そして柘榴は『そうそう帰って来れないから、皆に会っておきたくて』と、そう淡々と話しながら、まるで自分の部屋へと入るような軽快さで、部屋へと足を踏み入れてくる。 そしてサリナがいる部屋の方へ――
「そっちはダメだ!」
「え? 何で?」
――ガチャ
〝何で?〟と問いながら、こちらが答える前に柘榴が扉を開いた。 柘榴とサリナが対面する。
サリナと柘榴は、互いを見たまま一瞬固まった。 パチパチと瞬きをする……
だが次第に、サリナの表情が悲しそうに曇り始めた。
雪哉もハラハラとしている。
だが柘榴はケロッとしながら『あ、もしかして彼女? いろいろタイミング悪かったね。 ホントごめん』と。
雪哉とサリナは『え?』と言いながら柘榴を見る。
サリナは安心したようだった。
そして雪哉は柘榴を見ながら思った。 〝分かった! この人、姉ちゃんじゃねーか?! 姉ちゃんだから裸見ても無反応だったし、当たり前みたいに部屋に入って来たんだ! 間違いねぇ!!〟と。
雪「姉ちゃん?!」
柘「……。 へ??」
雪「へ?? ……」
柘「え??」
柘榴はポカンとしながら雪哉を……――と言うよりは灰簾を眺めている。 だが次第に、柘榴は可笑しそうに笑い始めた。
柘「なに灰簾? 可っ笑しい!! “姉ちゃん”って……――フフ……灰簾がそんな事を言ってくるとは思わなかったわ! まぁ確かに私たち、兄弟みたいなものだけど」
相当可笑しかったのか、柘榴は灰簾を指差しながら、片手でお腹を抱えて笑っているのだった。
――するとその時、また扉がバンと開いた。 〝今度は誰だ?〟と雪哉はうんざりとしながら振り返る。
するとそこには、赤メッシュと銀髪と黒ハット、三人の男が立っていた。 それぞれ入れ替わっている陽介と純と聖である。
陽「そこのお兄さん! キミの誕生日は12月17日じゃないのか!!」
雪「何でそれを?! 確かにオレの誕生日は……――」
柘「はい? 何言ってるの? 灰簾は12月8日だよ!」
陽雪純聖「「「「……」」」」
(〝そこのお姉さん、これには深い訳が……! ちょっと静かに見守っていてくれ!!〟)
陽「ちなみにオレの誕生日は7月10日だ!!」
雪「まさか陽s……――」
柘「瑪瑙は1月4日でしょ!」
(〝ちょっ……お姉さん、本当にゴメンッ!!〟)
そしてその後も『オレは11月13!』と聖。 『黒曜は11月7日でしょ!』と柘榴。『 8月8日!』と純。 『黄玉、4月1日でしょ!』と。
雪哉は確信した。 〝コイツらは陽介と聖と純だ!〟と。 そして三人も確信した〝やっぱり雪哉だ!〟と。
……だが、四人にピンチが訪れる……――
柘「ねぇ、可笑しくない? 大丈夫? 私の誕生日、覚えてる?!」
四人「っ?!」
だが次の瞬間雪哉が『0111!!』と。
(〝テキトーなこと言うなって、ユキ!?〟)
柘「……なんだ、覚えてるじゃん」
四人「っ?!」
〝え?! すごくね?! ユキ、当てずっぽう?!〟と陽介が雪哉に耳打ちする。 雪哉は〝いや――〟と。
――すると続いて柘榴が『琥珀の誕生日は? 言える?!』と。
陽「はい!! 〝74〞!! の数字が痛いくらいにボクの頭に浮かびます!! 7と4が瑪瑙の胸に突き刺さっていますっ!!」
柘「っ?! ……あ、安心した。 ――けどなんだか、瑪瑙のテンションが可笑しい……“瑪瑙の胸に”とか、じ、自分で言うんだね……」
〝あ、そういう事か。 体がアイツらのものだから頭に浮かんだんだ〟と、それを察した四人であった。
――さておきこうして一先ず、四人は入れ替わりの状態のままではあるが、再会を果たしたのだった。
――遊びに来ていたサリナを送ってから、四人は再び灰簾の部屋へと集まった。
〝どうすれば自分の体に戻れるのか〟、それを考え話し合う為にだ。
四人は真剣な面持ちで頷き合う。〝さぁ、話を……――〟と、思ったのだが……
雪「何かねぇかなぁ……」
何を探しているのか、雪哉が灰簾の部屋を見て回っている。
純「雪哉、お前なにしてんだ?」
すると灰簾の体で振り返った雪哉が、真剣な面持ちで言う。
雪「なぁ、灰簾何派だと思う? やっぱ映像かな? それとも紙媒体?」
純聖陽「「「……」」」
雪「取り敢えず、パソコン開いてみるか……」
純聖陽「「「……」」」
雪「ああ、けどなぁ……他人の体で他人のパソコンで検索するの、少し罪悪感あるよな……うわ~……どうしよ……」
純聖陽「「「……」」」
聖「検……策履歴から入ると……半減するんじゃね?? 罪悪感」
陽「うわ、聖ナイス!」
純「雪哉、聞いてたか? だとよ」
〝よし、実行!!〟と、雪哉は検索履歴を見始める。 そして『はいはいはい。 どれどれ?? ……――』と、他の三人も一緒になってパソコンを覗き込み始めた。
――だが検索履歴を遡りながら、四人は〝なんだと?!〟と、顔色を悪くした……
ダン! と雪哉がテーブルを叩く……――
雪「なぜだ! なぜエ◯動画の検索履歴がないんだ! 灰簾の奴っ! 今この体はオレが預かっているんだぞ! 履歴がなくて残念がるのはお前の体だからな! 不親切な奴め! いや、これは自虐行為同然だ!
履歴を消した前提の話である。
陽「ユキ! 何だよ〝後悔しろ〟って! つまりその体にお預けさせんのかよ?! 今精神はオレらなのに?! ◯ロ動画見んの諦めんのかよ!」
雪「そんなっ……――そんなつもりで言った訳ではっ……! オレが悪かった!」
聖「はぁ~……ドイツのパソコンを開けば履歴がそのまま残っている……黒曜か瑪瑙か黄玉か……」
純「お前ら女々しいぞ。 アホじゃねぇのか? ダンダンダンターン! って、さっさとキー打って検索すりゃ良いだろう? 見てぇなら」
『じゃあ純打って』と聖。 『世話が焼けるぜ』と純がキーボードの上に手をかざし構える……――
すると、陽介と雪哉と聖はハッとした。
陽「っ?! 何だ何だ?! すげぇ……これからエ◯動画検索する筈なのに……?!」
聖「黄玉の体で指構えると、これからピアノを弾くかのような気品が漂うぞ……」
雪「すげぇな……?! これ、何ていう現象だ!?」
純は『黄玉に聞け』と言いながら〝ダンダンダンターン!〞と、華麗にキーを打ち検索をかけたのだった。
(〝オレたちも体の持ち主たちも男!! 精神と体に不一致などない!! 最早8人グルだぜ!! さぁいざ!!〟)
……――だがその時、またもやノックも無しに『灰簾~?』と呼びながら、柘榴が入ってくるのだった。
〝ぅわ?! 姉ちゃん?! タイミング悪っ……――!!〟と、未だに柘榴を灰簾の姉だと思っている雪哉だった。
――そして柘榴が四人の元へとやって来た時、もうそこにはパソコンは無く、『……煩悩と戦うことにしました……』と言いながら、四人は切なそうな顔をしていたという。
〝は?〟と、柘榴は首を傾げて目を疑っている。 そして彼女は〝久しぶりに会った幼馴染みたちに……“脳みそが退化したんじゃないか?”って……そんな印象を受けるのは……どうしてだろう……〟と、頭を悩ませていたのだった。
――そしてこの夜四人は“話し合った”。 〝他人の体なんだから、ある程度節度を持った行動を心がけようぜ~?〟と。 果たしていつまで持つか、今のところは一応、煩悩と戦う方針である。
こうして、本来集まった理由については話し合わぬまま、夜は明けていったのだった。
――さぁ、一体どうなる? ②に続く!
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