テスト 3
「あれ〜? れーなちゃんだ」
いつもの通りに割引きシールが貼られた惣菜を吟味しているとスマホを見ながら、買い物しているれーなちゃんを発見。
「紫亜ちゃんもお買い物……ですよね」
「そーだね! 今日はおつかい?」
「はい。夜ご飯の天ぷらといつも買ってるめんつゆを買って来て欲しいと言われまして」
「お〜。夜ご飯は天丼か天ぷら盛り合わせ?」
「天ぷらの盛り合わせを買って来て欲しいと言われましたので、盛り合わせですね」
「いいね〜! 私も天ぷら食べたくなったなぁ〜。盛り合わせじゃない方のえび天、これも割引きだからこれ買って天丼にしよ〜。えび天丼〜」
盛り合わせの方は割引きでもちょっと高いから、えび天丼。めんつゆは家にあるから、これと付け合せに野菜サラダ買お〜。
お互い買い物が済み、途中まで一緒に帰る。
「れーなちゃんは優真と勉強してるの?」
「はい。今回のテスト、多分また難しいだろうから、と放課後は一緒に勉強してますね」
「もう〜。それなら、私も一緒に勉強したいんだけど〜」
れーなちゃん、頭良いし、教えて貰えるなら教えて欲しい。いや、きょーかちゃんに不満は無いし、ただ優真と一緒に勉強したいってだけだけど。
「うーん。でも、優真ちゃんは嫌がりそうですね。……あ、私と二人きりが良いとかじゃないと思いますよ」
れーなちゃんは私に手をブンブン振って、誤解だと私に言いたげだった。
「分かってるよ〜。優真、今の多めのお小遣いをキープしたいから、順位をキープを頑張ってるの知ってるし」
私と遊ぶお金が減るのも嫌だからって言ってたなぁ。小遣い稼ぎにお父さんのジムもバイトがてらにたまに手伝ってるらしいし。
「あ、でもでも、エルちゃんが今、忙しくて一緒に勉強出来ないから、きょーかちゃんが私に勉強教えてくれてるんだ〜」
眼鏡クイクイさせて、冷静に私に勉強を教えてくれるきょーかちゃんを真似する。
「あら、京花ちゃんがですか?」
「そ〜なんだよ〜」
れーなちゃんは意外そうな表情をして、黙り込む。
「あれ? どーしたの?」
「……私は京花ちゃんにあんまり良く思われてないですからね。私のお友達の紫亜ちゃんに勉強を教えている事が意外なんですよ」
「むむむ? ……そーかなぁ〜。きょーかちゃん、本当に嫌いだったら、れーなちゃんに出会う度に「次のテストは絶対に私が一位を取るわよ!」って言わないと思うんだよなぁ。今日もれーなちゃんの事は好きそうな反応だったし」
「え、そうなんですか?」
「そーなんだよ。だから、大丈夫だと思うよ」
やはり、きょーかちゃんに敵視されてると思っていたれーなちゃんは安心したのか朗らかな笑顔を浮かべる。
「ふふっ。そうですか。良かったです。……それじゃあ、このまま一位をキープしますね、と私の代わりに京花ちゃんに伝えてください」
「うん。伝えとくよ〜」
本当にそういう真正面から戦おうとする所は戦闘民族の優真と似たもの同士の幼馴染だな、とれーなちゃんに思う。
帰宅して天丼を作って食べてから、色々家事やお風呂をさっさと終わらせて、今日、きょーかちゃんに教えて貰った所を復習する。
それから、寝る前に優真にメッセージを何となく送る。
「私も赤点取らないように勉強頑張るから、優真も頑張ってねっと」
それだけを送ると優真から直ぐに簡素なメッセージが返ってきた。
「紫亜もね……って、ふふっ。優真らしい」
何となく嬉しい気持ちになって、幸せな気持ちでそのまま就寝した。
「南 玲奈からの挑戦状だわ」
また放課後、きょーかちゃんと勉強する事になったので、昨日のれーなちゃんの言葉を伝えたらきょーかちゃんは「受けて立つわよ」と意気込む。
「おぉ〜。頑張ってね、きょーかちゃん」
「他人事の様に言ってないで、あなたも上を目指すのよ。私が教えてるのだから、少しは前の順位より上がらないと許さないわ」
純粋にきょーかちゃんを応援したのに、いきなりハードモードになりました。前回の順位は真ん中よりちょい下。以前の五十位という輝かしい順位から、全然下がってる。
そして、今回のテストは難しいと先生達に散々言われている。やばい。
「うむむ……が、頑張るね」
でも、きょーかちゃんの教え方が私に合うのか、結構苦手な教科の理解度は前よりも上がっている。
エルちゃんの優しい先生の様な教え方も分かりやすかったけど、きょーかちゃんの様な厳しめな先生みたいな教え方も私に合うみたいだなぁ。
二人共、勉強を教えるのが上手だと言うのもあるのだけれど。
そう言って、また勉強に戻る。
一人でやってると雑念に惑わされて、結局勉強があんまり進まないなんて事もあるので、人とやる方が捗る。
それにきょーかちゃんは勉強教えるの上手だから、勉強してて、分かる所を見つけると、さっき教えて貰った所だとやる気も出る。
「下校の時間ね」
気付いたら、そんな時間になってしまったので、二人共帰宅準備。
そして、今日はきょーかちゃんに置いて行かれない様に着いていく。
「何かしら」
「何って、一緒に帰ろ〜」
「……いいけど」
ふんすっと鼻を鳴らして、ダメ元で言ってみたが、オッケーを貰えて一安心。
「良かった〜」
「……別に面白い話は出来ないわよ」
「え〜。話なんてなんでもいいのに〜」
並んで二人で歩いてるときょーかちゃんが少し立ち止まる。
「ちょっと自販機で飲み物買ってもいいかしら」
「いいよ〜。私も飲む〜」
そう言って、自販機で飲み物を買うきょーかちゃんの後ろで何を飲もうか悩む。
うーん。ココアかミルクティーかそれとも炭酸ジュースか。
むむむ……。悩む。
「あら」
「どーしたの? あ!」
どうやら、自販機は当たりが出たらもう一本くれるやつだったみたいで、きょーかちゃんは当たったみたいだ。
「きょーかちゃん。すご〜い!!」
拍手して喜ぶときょーかちゃんが少し考えた後にココアを押した。そしてそのまま私に手渡される。
「え、くれるの?」
「脳を沢山使ったから、甘い物が欲しいでしょ。私もそうだから、ミルクティー買ったの。……あなたはなんか、ココアが好きそうだからココアね」
「ありがとう〜。丁度、甘い物飲みたかったんだ〜」
ココアも候補に入ってたから純粋に喜ぶ。
それにしても私、そんなココア飲みたそうな顔してたのかな。
「今度、ココアのお礼と勉強教えてくれたお礼するね」
ココアを飲んでホッとする。最近寒い日は本当に寒いから、あったかいココアが凄く美味しく感じる。
「別にそんなの良いわよ。ココアは当たっただけだし、勉強は私の為にもなってるから」
「ええ〜。じゃあ、せめてものお礼に他の人達みたいに私を撫でてみる〜??」
なんてきょーかちゃんはどのお礼もしなくて良いと言うので、軽くそんな冗談を言う。
「……北見さんを撫でる」
「うん。なでなで〜ってやるやつ」
「……いいかもね」
「え、」
「なんで、言ったあなたが驚いてるのよ」
「いや、やるだなんて思わなかったから……」
正直きょーかちゃんはこういう事、バカバカしいと笑い飛ばしそうである。
「やるのよ。だから、触るわよ」
「え、うん。はい。どーぞ」
そう言って撫でられ待ちをするとわしゃわしゃ〜ときょーかちゃんらしからぬ猫とじゃれるような撫で方をされる。
「……ふぅ」
心なしか満足そうなきょーかちゃんに私はなんか本人が満足してるなら、いっかと髪は乱れまくったので、整える。
「ありがとう。北見さん。おばあちゃんの家に居る、クリスティーヌみたいに癒されたわ」
「クリスティーヌ?」
きょーかちゃんのおばあちゃんが飼ってる猫の名前だろうか?
「クリスティーヌよ。おばあちゃんが飼ってるの。二世帯住宅だから、隣に行くだけでクリスティーヌに会えるの。なんか、北見さんってクリスティーヌみたいに白いからつい……」
つい……、という事は猫みたいだと言いたいのか。
まぁ、猫みたいだと言われる事はよくあるので特に悪い気とかもしない。
「へ〜。今度クリスティーヌちゃん、見てみたいなぁ」
「良いわよ。ほら」
そう言って、きょーかちゃんは待ち受けであろう写真をそのまま見せてくれる。
確かに白い毛で目が赤い。何となく、自分が猫だとしたら、こんな感じな気がする。
「アルビノの子で、視力は問題なかったんだけど、太陽の光で日焼けなんかで火傷したりするのよ。だから、外に出さない様に家で飼育してるわ」
アルビノって、視力にも問題出やすいし、日焼けや皮膚の病気もしやすいと聞いた事がある。
「そっか。大変だね。でも、大事な家族だから気を付けないといけないし。でも、」
「……でも?」
「クリスティーヌちゃん、すっごく幸せそうな顔してるね!」
クリスティーヌちゃんの表情が柔らかくて可愛い。これはちゃんと愛されて育っている証拠だ。
「……ふふっ。そう言ってくれてありがとう」
そう言うきょーかちゃんは今までで一番、優しい顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます