勝負
「テストの点数で遊園地の時のダブルデートの相手を決めましょ」
「ほう……。良いじゃないか。優真」
この一触即発の雰囲気。しかもやってる二人がエルちゃんと優真である。
「え〜。なんで二人共揉めてるの〜??」
結局、あの遊園地の券は夏休みに使う事になった。(皆の都合のいい時が重なる時が夏休みしかなかった)
夏休みに遊園地に皆で遊びに行く前に、夏休み前にある期末テストが憂鬱だねと珍しく四人でお昼してる時に世間話として話し掛けたらこうなった。事の発端としては私の迂闊な言葉が原因だ。
「ふむ。私は紫亜や玲奈は好きだが、優真はどうしても好きになれないみたいだ。相性が悪い、というのだろうね」
あの誰にでも人当たり良く、優しいエルちゃんが爽やかにトゲトゲしい言葉を吐く。天変地異でも起こりそう。
そして、クラスは私達のクラスで食べているので遠巻きで聞いてるクラスメイト達も明らかにザワザワしている。
「私もエルの事は気に入らないわね」
優真はまるでれーなちゃんの家に行った時にちよ丸くんに舌打ちされた時と同じくらい不機嫌だ。
なんでこの二人、並んで見れば長身の美女二人でビジュアルの相性良いのに、性格はこんなに相性悪いんだろ。
後、不機嫌なエルちゃんに何かに目覚めているクラスメイトが複数人居て、なんかヤバい。「東のあんなセリフ初めて聞いたけど良いな……」とか「エル様に罵って欲しい」とか。
クラスメイトが心配になるから、何かに目覚めないで欲しい。
「じゃあ、四人で期末テストの順位で一番良い順位の人が好きな相手とデート出来るってルールね」
「ほう。それで行こうじゃないか」
「私とれーなちゃんの意思は!?」
ツッコミ入れながら、れーなちゃんの方を見るとれーなちゃんは首を静かに振り、言っても無駄と言いだげだ。
「れーなちゃんも諦めた!!」
私一人、頭を抱えてると優真とエルちゃんが私の肩に手を乗せる。
「「紫亜、勝負よ(しよう)」」
「……なんで、二人しかやる気ないし、私の勝ち目もないのにやらなきゃいけないんだぁ〜」
というかれーなちゃん、前回学年一位だし、優真も三位だった。エルちゃんも十位とか言ったから頑張れば優真と良い勝負になりそう。
「確かに紫亜は真ん中くらいって言ってたし、前回のテストで順位も落ちたって嘆いてたし不利ね」
「ふむ。それもそうだね。それに玲奈は前回学年一位だ。玲奈が一人勝ちしても、玲奈は優しいから誰を選ぶにしても困るだろうし、これは私達二人で勝負しようか」
「そうね。……じゃあ、順位が上の方が好きな相手と遊園地デートするで良い?」
「いいよ。やろうじゃないか。優真」
なんてバチバチにやり合ってる二人を見ながら、ハラハラしているクラスメイト達に見守られながら、私とれーなちゃんは肩身狭くお弁当を食べるのであった。
「……相手なんて決まってるじゃん」
夜、一人でテスト勉強をする。
優真はきっとれーなちゃんを選ぶし、エルちゃんは親友って言ってくれてる私を選ぶ筈。
相手は決まってる癖に勝負になったのはエルちゃんと優真がお互いを気に入らないからだろう。
「本当になんであんなにあの二人は相性悪いんだろ」
何にも手が進んでない真っ白なノートを眺めながら、自分が好きな人に選ばれない結果が見えてるのに余計にやる気は出ない。
「こうなったら、エルちゃんに勝ってもらうしか……」
そう思ったら、ついついエルちゃんに「時間が合う時は一緒にテスト勉強をしよう」とメッセージを送っていた。
エルちゃんが勝ってくれて、私を選んでくれれば、優真がれーなちゃんを選ぶ結果が訪れない。
エルちゃんが私を選んだから、優真は余り者同士でれーなちゃんとデートするだけだ。
その結果で私はきっと安心して遊園地に行けるだろう。
そうじゃなければ、私はきっと三番目のお兄ちゃんに遊園地の券を渡してれば良かったと悔いる事になるだろうし。
優真が選んだ相手としてれーなちゃんとのデートを間近で見てしまったら、……きっと、嫉妬してしまうだろうから。行けない。そんな姿を見に、行きたくない。
「あ〜。自分の都合の良い事ばっかり……」
あの時、優真にさっさと振られれば、……恋愛感情とは面倒な感情だ。
自分がどんどん嫌な女になっていくのがよく分かる。
だいたいあの日の変に優しい優真とデートした時からだ。
私の事が知りたいとか言ってきたり、恋人同士みたいにご飯を食べさせてくれたり、……本当にちゃんとしたデートだった。
私を抱いた時も珍しく優しかった。いつもは明るくて嫌だった、電気も消してくれた。
優真が恋人にどんなデートをしてくれて、柔らかな声で名前を呼んでくれて、どんな一日を送れるか知ってしまったからだ。
「全部、……優真が悪い」
知らなければきっと、いや、振られてれば、こんな事を思う日は来なかったのに。
そんな事を考えていればスマホが震え、エルちゃんから返信が来ていた。
「いいよ。やろう」と、快諾だった。
「今日はエルちゃんの家でお勉強会だね!」
教室でニコニコしながら、そう言うとエルちゃんは微笑ましそうに私の頭を撫でてくれる。
「見て! エル様の頭ナデナデよ!!」
「私もされたいわぁ〜!!」
「眼福ね……」
エルちゃんの行動に一々、大興奮するクラスメイト達……もとい、エルちゃんのファンクラブ部の人達。いつも通りの風景だ。
「そうだ。紫亜、私と優真、どちらを応援するんだい?」
「勝負の事?」
「ああ。そうだ」
「そりゃあ、エルちゃんだよ」
穏やかな笑みを浮かべているが、エルちゃんは私の即答に何処かホッとした様に一息をついている。
……ごめんね。エルちゃん。エルちゃんが勝ってくれないと私は多分その日、遊園地に行かない。行けない。
だから、エルちゃんを応援してる。
「ふふっ。そうか、嬉しいな」
そんな自分の事しか考えていない私は素直に喜んでくれるエルちゃんに罪悪感を覚えてしまう。
エルちゃんの爽やかな微笑みにノックダウンされていくクラスメイト達の黄色い悲鳴とは正反対に私は出来るだけいつもの北見紫亜の笑顔を浮かべていた。
「え、メッセージ。……お兄ちゃんからだ……え!? 入院!?」
放課後、エルちゃんの家にお邪魔する予定だったが、急遽自宅に帰ることになった。
「エルちゃん、ごめんねぇ……でも、ウチでも勉強は出来るから……マックスのお散歩とか行かなきゃいけないんだけど」
「いや、いいさ。紫亜の実家には行った事がなかったからね。噂のマックスくんも見てみたかったし」
「まさか、夫婦水入らずで旅行行ってる時に
一番目のお兄ちゃんの
「良兄の退院よりも両親が帰って来る方が早そうだから、それまで私が実家に帰ってマックスの面倒見るから、エルちゃんも一緒に勉強する時はウチになるかも〜」
実家から学校だと地味に通学時間が一時間掛かるし、朝のマックスのお散歩も含めると、もっと早起きして早く行かなきゃならない。
一人暮らしの所は学校まで十分の所だったからなぁ。近さが恋しい……。
「ふむ。両親が帰ってくる日はいつなんだい?」
「確か三泊四日って行ってたから、後、三日後に帰って来るよ。昨日行ったばっかりだし」
四日目は早く帰ると言ってたから、最終日は朝、お散歩とかのお世話して、お昼ご飯をセットしておけば大丈夫だろう。
「ふむ……。ねぇ、紫亜」
「なに〜?」
「提案なんだが、私も一緒に泊まってマックスくんの世話をしながら、そこでテスト勉強をしていいか? もちろん。紫亜が良ければ……だけれど」
そういえば、エルちゃんはアメリカの実家ではドーベルマンを飼っていると言っていたし、犬の世話には慣れてそうだし、それに私ではマックスのお散歩は引きずられる事が多くて苦労するが、その点、身長も三番目のお兄ちゃんの良兄くらいあるエルちゃんはそんな事なさそう。
「え! いいの!? ありがとう!! エルちゃん!!」
数秒考えた末にエルちゃんの好意に甘える事にした。
帰り道、とりあえず私の家に寄って、腐りそうな食材とか教科書は全部実家に持っていき、エルちゃんもそれを手伝ってくれた。その後にエルちゃんも自分の家に寄って、おばあちゃん達に事情を説明した後に着替え等を持って来た。
そこそこ歩くな……久しぶりの実家への道。これが一時間の道か……。
徒歩辛い。でも私の家からは近すぎてチャリ通を許して貰えないので仕方ない。
そう心の中でボヤいてると実家に着く。
「紫亜……ここ、かい?」
『北見』の表札ではなく『早乙女』と書かれた表札を見て、戸惑っているエルちゃん。
「あ、そっか。エルちゃんに言ってなかったや。私、ここの家の里子なんだ。だから、ここが私の実家」
何でもない風に言って、エルちゃんを中に案内する。
エルちゃんはまだ私に聞きたい事が有りそうな顔をしていたが、入口で聞くのもどうかと思ったのか、大人しく入ってくれた。
そうするとマックスが私を元気よくお出迎えして、私は勢いよく押し倒される。
「おお〜。よしよし。マックス〜。マックス? マックス!! 退いて!! ペロペロしすぎ!! 制服までびちゃびちゃになっちゃう!!」
初めは倒されながら、よしよししていたが、あまりにもペロペロしてくるので、制服もびちゃびちゃに……なる前にエルちゃんがマックスを退かしてくれた。
「君がマックスくんか。初めましてだね。エルシオンだよ」
そう言って匂いを嗅がせて、マックスも人懐っこいので、今度はエルちゃんに飛び掛ってた。
エルちゃんは体格があるので押し倒されずに、よしよしとマックスを撫で回していた。
しばらく落ち着いてから、エルちゃんとマックスのお散歩へ。今日は家に持ってきた食材と元々両親が良兄の為に置いていた冷食などがあるのでスーパーへは買い物に行かない。
お散歩中、エルちゃんはマックスに全然引きずられずにお散歩出来ていた。凄い。私だったら秒で引きずられて、どっちがお散歩されてるのか分からないと良兄からよく大爆笑されていた。
「ねぇ、紫亜」
「ん? なに〜」
「……里子って、産まれた時からかい?」
エルちゃんは少し突っ込んでもいい話題か考えた後、聞いてきた様子だった。
「言いづらい話題だったら、すまない。聞かなかった事にしてくれ」
……私としては今の家族は優しくて暖かいので、別に隠す事でもないかなと思っている。
でも、この話題は自分から言うものでも無いし、聞かれたら答える事にしている。
「いいよ。教えてあげる。私ね。小学校二年生の時に本当のお父さんがね、交通事故で亡くなっちゃって……その時も結構ショックで泣いちゃったんだけど、お母さんがね。その時にね。お母さんが居るからねって言ってくれたんだ。……それが嬉しかったから私も前を向いて頑張ろ〜って思ってたら、小学校四年生の時にお母さんも私の為にお仕事、頑張り過ぎたんだろうね。仕事先で倒れてそのまま、……亡くなっちゃった」
なんとなく、お散歩道を歩いているマックスが先に歩く事を辞めて、私に近付いてスリスリしてくる。
そんなマックスを撫でる。
「……それでね、おじいちゃんとおばあちゃんが両方共居なくてね。私、親戚中をたらい回しにされてたんだ」
あの頃が一番辛かった。一緒に居ると言ってくれたお母さんも急に居なくなってしまった。
二人共居なくなってしまったら、私はもう誰にも愛して貰えないのか、とか、誰を頼ったらいいのか、とか分からなくて早くお父さんとお母さんの所に行きたいと思ってしまう様になっていた。
「親戚の家に行って、良い子じゃないと追い出されちゃう〜と思って、料理とか掃除とか洗濯とかそういう家のお手伝いを出来るように頑張ってたんだけど、それでそこの家の人に褒められてたら、そこの家の子が「自分のお父さんとお母さんなのに取らないで!」って泣かれちゃったり、「よその子だから出ていけ!」っていじめられちゃったりしちゃって、それでも皆、自分の家の子が可愛いから、結局私が追い出されちゃって、辛いのに私の味方は誰も居ないんだって泣けなくなっちゃった」
……思い返せば本当に泣けなくなったのは、あの頃からだ。
初めはその家の子と仲良くしようと思って一生懸命、その子がやってるゲームとか遊びのルールも覚えた。
勝つと悔しいから、もう一回を繰り返されるので、わざと負けたらわざと負けられると面白くない、と言われ、相手をしてくれなくなった。そして、その子は私が居ると面白くないと癇癪を起こすようになった。それでその子に頭を抱えたその子の両親は私を追い出した。
そして、次は女の子が居る家だと、その子の好きな男の子が私の事が好きだと言ってたって嫉妬されて、家に帰っても意地悪されていた。そんな些細な事で私はまた追い出された。
ずっと知らない土地、息が詰まる場所で生活して、やっと慣れて来たと思ったら、また知らない場所に連れて行かれる。
お母さんが生きてた時によく言ってた「前向きに頑張れば良い事あるよ」と言っていた言葉を信じて前向きに、良い子になって面倒の掛からない子にならなきゃ、と頑張っていたけれど、親戚の家を追い出される度にもう頑張れなくなった。
環境の変化が激しくて、泣けなくなった。弱さを他人に見せたら更に攻撃されるから見せられなくなった。
今でも涙が枯れてしまったのかと思うくらいに泣けない。悲しい映画やドラマ、漫画や小説を見た時も家族と嬉しかった事があった時も泣けなかった。
私の涙はあの頃に置き去りのまま、機能が失われてしまった。
「そうやって転々としてたら、親戚の人達が「この子は何処に行ってもダメみたいだから、そういう施設に入れようか」って言ってきて、私としてはもう疲れてて、どうでも良くなってたから、それでいいや〜って思って了承したんだ」
エルちゃんは黙って私の話を聞いてくれる。だから、話しやすい。
「そしたら、いつもは仕事の関係で親戚の集まりに来れなかった早乙女の……今の私のお父さんがたまたま居てね。元々話を聞いてたんだけど、私がどうなったのか心配ってのもあって、その頃は単身赴任が多かったみたいなんだけど、無理して来てくれてて、話を聞いてて腹が立ったからって「私が引き取る」って親戚の人達に宣言したんだ。親戚の人達としては「お前は集まりにいつも居なかったから知らないだろうが、この子は何処の家に行っても折り合いが悪い」って言われても「今回は大丈夫だ!」って言って引き取ってくれたんだよ。そして、今に至ります。本当に大丈夫だった。私の話はおしまい」
本当に優しくしてもらった。私が初め、どうして良いのか分からずにしていたら皆、積極的に構ってきてくれて、マックスも私に凄く懐いてくれて、……ああ。私はここに居て良いのかって安心出来た。
それに優真のお陰で学校で他人に関わるのは苦じゃなくなった。こうすれば良いのかって優真と家族を見て人との関わり方を思い出した。
お父さんもお母さんもいつもニコニコしてたな〜って。
「……紫亜。良い家族に巡り会えたんだね」
「……うん。本当は養子にならないか? って言ってくれてたん だけど、私はお父さんとお母さんの苗字が変わるのが嫌だったから、断っちゃったんだ。断るのも勇気出したんだけど、今の家族は「それなら、そのままでも良いか」って言ってくれて安心出来た」
「それで苗字は変わらなかったのか」
「うん。学校で先生とか保護者の人達に私達は早乙女だけど、紫亜の家族なので「北見のお父さんお母さんって呼んでください」って根回しして言ってくれたのも嬉しかった」
中学生になってから、私は社交的になっていたので私の家に遊びに来た子は居るけど、その子達はなんとなく察して聞いて来なかったし、優真に関しては動物に何故か嫌われてる体質だから、マックスを飼ってるから呼べないなと勝手に思って呼ばなかった。
「そうか。良い家族だね」
「そうでしょ〜!!」
私がご機嫌になった所でマックスはまたお散歩に戻りたくなったみたいでまたお散歩を再開する事にした。
お散歩も終わり、エルちゃんと二人でご飯の支度をして、出来上がったらそのままご飯にした。
「煮物にサバの味噌煮に味噌汁にご飯〜!! エルちゃん、普通に手際良いね」
エルちゃんがパッパッと手際良く作ってたから、私もエルちゃんがそれやってるなら、私はエルちゃんにそれを任せてこれをしようと別作業出来たので夕飯がかなり早く作れた。
「いや、私はおばあちゃんの手伝いをして覚えただけだよ。紫亜の方が手際が良いね。流石、一人暮らしで自炊してるだけある」
「ふっふ〜! そうでしょ〜!!」
ドヤ顔で胸を張ると、エルちゃんは微笑んでくれた。
「紫亜」
「なに〜?」
「以前学校で紫亜と初めて話した時に紫亜は言ったね。「アメリカからわざわざ日本に来て知らない土地に来るなんて凄い。私ならストレスで死んじゃう。だから、色々大変だろうから、何か困った事あったら教えてね。というかもうお話したから友達だね」と」
あれは私も転校してばっかりだったから気持ちを勝手に分かった気になってただけだ。だから、エルちゃんに話し掛けた。
「君は環境の変化がストレスにもなる事を知ってて私に話し掛けてくれたから、私は思ったんだ。気遣い出来る子だな、と後、友達だと言ってくれたのも嬉しかったんだ。皆、ストレートにそう言ってくれる人は居なかったから」
それもそうだろう。エルちゃんはそのハーフで美人で高身長というとっても目立つ容姿だったから、皆、遠巻きに眺めては話し掛けるのは恐れ多い……と言った風だった。
私も凄い貴族の様な子が来たな……お忍びの偉い人の子供かなとか一瞬、思ってしまった。
「友達はいっぱい居た方が楽しいと思ったからだよ。私は話し掛けた人、皆、友達認定ルールをやっててクラスメイトは皆、友達だと思ってるよ」
中学生の時もそうしていた。素っ気ない子も根気よく愛想良く話し掛けて仲良くなった。
……人間関係に疲れきって愛想良くも出来なかった私に優真はそうしてくれたから、嬉しかったから私も他の人にそうしようと行動しただけだ。
「……エルちゃんは話聞くの嫌かもだけど、愛想良くなかった私に根気よく話し掛けてくれたのは優真なんだ。だから、私は真似しただけなんだよ。本当に凄いのは優真なんだ」
「……そうか。でも、その時の優真に感謝して、同じ事を他の人にしようとしてくれたのは紫亜の意思だろう? だから、紫亜も凄いと思うよ。現に私はその紫亜の行動に感謝してる。……きっかけが優真だとしてもその話をしてくれて嬉しいよ。私は」
嫌がる素振りもせず、エルちゃんは本当にありがとうと念を押すように言ってくれた。
……私の意思で、か。優しいな。エルちゃんは。
だから、私はエルちゃんにすんなり色々と話せる。気を許せる。
そういう友達が居てくれるのは助かる。
それから、夕飯を食べ終わり、片方がお風呂タイムの時はテスト勉強をし、二人共入り終わったタイミングで黙々と二人でテスト勉強に打ち込んだ。
分からない所はエルちゃんに聞く。そうすると先生の解説と同じくらい分かりやすく私に説明しながら、エルちゃんは教えてくれた。
就寝時間になると、客間として使ってる部屋で二人で布団を敷いて横になる。
「……エルちゃん」
「なんだい」
「今日はありがとね」
「私の方こそ、ありがとう。紫亜の事を色々知れて良かった」
エルちゃんはこっちを見て微笑んでくれた。
「ふふっ。こうしてると修学旅行みたいだね」
友達が隣に居て、色々な事をしたり、夜にこうしてお話したり、凄くワクワクする。
「そうだね。でも、明日も学校だから話は程々にして早く寝ようか」
「え〜。エルちゃん、見回りに来た先生みたいな事を言う〜」
「まぁ、今日は紫亜に勉強も教えてたから、先生も兼任かな」
なんて言って二人で笑いながら、どちらかが眠るまで取り留めのない話をしていた。
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