第9話 ひとの恋路を邪魔する奴は・・・5
その日は城、領主の館では朝から騒がしかった、
ここは、転生転移者一行が向かおうとする。
領主の城。
朝から、その
山から谷、川から海、街から邑まで、ありとあらゆる所をそれは路傍の石をめくってまで探す勢いであった。
青い空を。
当の本人、その
その空には黒い鳥、多分カラスだろうか。
三匹、円を描いて、この城の上を高く低く、滑空している、見上げながら、私もあれぐらい自由であればいいのに、であれば、あの人の元にすぐにでも行けるのに。
と寝ころんだまま、伸びをして、チラと、城の外、下に目をやると。
何やらその屋根の上で、自由を渇望している、その城の主の娘、領主の娘である、自身の名を口々に呼んでいるのが見て取れた。
そんな家臣たちの右往左往している者を見ると滑稽で、それはそれで楽しむことが出来た。
が、だんだん腹が立ってきた。自身の自由を縛っておきながら、いざ何かあれば、大騒ぎするその身勝手さが。
今の城下の混乱ぶり、
その柄は矢のように弾丸のように空気を裂き、屋根に突き刺した。
含み針の型だ。
また、新しいキャンディーを懐から二つ取りだし、一つは自分にもう一つはかしづいている
どうだえ、欲しくも無いキャンディーの味は。いらぬ見合いなどわらわはせぬ。
と、言ってまたキャンディーを噛み砕き、残った棒、柄を、天守閣の守り神、鬼瓦の頭に吹きつけ突き刺した。
出掛けるぞ、用意せい。
そう言うと、
飛び去ったあと、突き刺さったキャンディーの柄は守り神の頭から真っ二つにし、粉々に砕けた。
一方、茶屋では岡っ引きが、多分そうだと思われるそれが戻ってきた。
斥候として、峠の先の様子を、見に行かせていた。
店の前にそれが四本足で、現実の世界で言うならばバッファローの姿をしたそれが、土煙を上げ急停止した。
馬鹿野郎、飲み食いする前で、埃立てんじゃねぇ、と叱責すると、頭を掻きながらごめんよお、親分、とすまなさそうに、徐々に人型の岡っ引きに戻った。いや、バファッロウが本来の姿なんだろうか。
が、ちらと憮然とした態度で転生転移者の三人を見て、先の峠の様子を見てきた事を、親分に耳打ちをしていた。
何、それは本当か、とか、相槌を打っている横に、白いセーラー服がお茶と、茶店の食べ物を。
自分たちは岡っ引きさんが様子を見に行っている間、十分休憩させてもらいましたから、と言いつつ。
お盆一杯にして岡っ引きに差し出した。
目を丸くして、すまねえ、おいらこの茶店の団子には目がねえんだと言いながら、お盆ごと抱え込みガツガツ食べだした。
親分は、すまねえ、こんな奴に気を使ってもらって。
すると、ひでえな、こんな奴って、とガツガツ口に団子を頬張り、顔の半分がバフッローに戻って、親分に突っ込んで言っていた。
クスとセーラー服は笑った。
一つ先の峠では。
遠眼鏡をしまいながら、半獣人は部下に集まるよう下知を下し自身は、持ち場戻った。
持ち場、つまり、この街道を通る旅人、通行人から、通行料と称して、金品を強奪する、所謂、野盗である、得物と、風体で、脅し。幾何ばかりの金品で、その日が面白おかしく過ごせる分だけせしめたら、後は自由に通行させている。
脅すだけで、命を奪う事など皆無に等しい。
だが、この界隈で、残忍な手口で、金品だけでなく命を奪い、女、子供を
自分たちのしていることは悪い事には変わりがないが、盗人にも三分の理、自分達より極悪非道な野盗に襲われない様、この街道を縄張りとして、安全を守っている、その自負はある。
その証拠に、女、子供連れは決して手を出さない、逆に見届ける位だ。襲うのは、大名や、役人、貴族、金持ちと思しきものからだ。
部下が集まったと、部下が知らせに来た、同時に新しいニュースをもたらした、それは、領主の御姫様が、行方不明。そして、公儀隠密らしきものがこの街道を、移動中。最後のニュースは、一億金貨の賞金首の野盗が、この街道に目を付けたらしいとの事だった。
それらのニュースを勘案し、半獣人はなるほど、あの遠眼鏡に映っていた見慣れぬ一行は、公儀隠密と結論付けた。
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