第7話 ひとの恋路を邪魔する奴は・・・3

『さて、どうしましょうか』

 セーラー服。

『大体目的がざっくりしすぎです。』

 ブレザー服。

『どうするも何も。ただ、連れていかれるところまで行くしかないだろう。』

 学生服。

 確かにこの世界を書き綴れとは一体なにをどうすればいいのか。あまりにざっくりしすぎていた。

 ふと、彼は横を見ると紺のブレザーの女子が本に何かしらずっと何かを書いている。

『ずっと、さっきから何を。』

『書き綴ることを、あの人たち、ハープの人と、三人のカラス女子との約束。』

 そう言うと、目線をまた本に戻し、ペンを走らせている。

『それしか、今のところ、元の世界に帰る方法は無いみたいだし。』

 白いセーラー服は言った。


 考えてみれば、領主のお嬢様が会いたいだの、彼らを番所に突き出したり。


 確かに学校は違うが、学生服の男女三人組で、明らかにこの世界と異質な身なり、浮いているのは分かるが、身柄をあっちこっち引き回して。

 縛り上げられなく、ある程度自由が利く状態は人道的といえるのか。

 ブレザーが、自由にものを書くことが出来るのは其の証左なのだろう。


『俺達十手持ちは。』ずっと彼らの取り調べ、事情聴取を担当している役人は続けてこう言った。

『民を守るために、この十手を預かっている、民草だ。お偉いさんのイザコザなんど、こちとら、知ったこっちゃねえ。勝手にやってくれ。ってなもんだ。もし、危害が及ぶなら黙っちゃいねえから、そう思ってくれ。』十手と呼ばれる、腰に差しているそれは、知っているものでなく、長く、中に仕込み杖の様に、鯉口があり、切ったその隙間から、鈍色の刃が光っていた。


『そんな、武器で脅しても、疑われたり、後ろめたいことなんてありませんからね。』と彼が否定する、何か言おうと息を吸い込んだ瞬間、割って白いセーラー服はけんかっ早く言った。

 フッと、役人は小さく笑い、天井を見上げ、頭を掻き、小さくためいきをついた。

 個人的な婚礼に領主とはいえ、民草を困らせ、また、公儀などお偉いさん方の政争や、イザコザが重なれば治安、秩序、平安が保てなくなる。そう言った思いからだ。

 だからこんなセリフが出た。

 世の中がバタバタしている時に、胡乱な奴ら。

 ある意味治安を守る側からしたら、正常な行為。


 この世界は、と言っても彼らの現在地限定でざっくり言えば。

 領主がいて、それが荘園を営み、荘園がいくつか集まり、群、藩、そして中央国家。

 と言ったぐあいで、公儀隠密の出どころは、中央国家。

 ここが一番のトップ。

 その中央国家が絶えず各藩やら群に目を光らせているといった具合である。



『ここから十里ほどある、お前たち歩けるか?』

 役人は荷物を背負いながら、言った。

『十里って。』

 セーラー服。

『約四十キロ』

 事も無げに、ブレザー。

『マラソン位。か。』

 学生服が観念したように。


 彼ら、一行が、この異世界に憑かれ、飛ばされて、こうして、歩き出したのがつい先日の事で、件の様にまた歩き出した。

 彼らの旅は緒に就いたばかりでありそこでまた、否応なく歩き出した。

 贔屓目でみて、2.3日無料で番所ではあるが、寝泊りで来たことが唯一の救いだ。

 そう思って彼らは出発した。

 その、領主のお嬢様に会いに。

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