第3話 事の発端 3

 ショッピングモールにある、ブック・ストアで、何か興味をそそる本はないかと、探索していると。


 店の隅の角の、実用書と趣味の本の間に、不自然に開いているスペースがあり、そのエリアには、分厚い本が一冊鎮座していた。

 本は革の背表紙で本の題名が見えなく判別できなかった。

 しかし、興味が湧き、その本を手に取ったそして本を開くと、一枚の栞がこっちを見ていた。


 瞬間、周りの音が消えた。


 ショッピングモールに在る独特のざわめき、人のしゃべり声、遠くで鳴っている音楽、子供の誰かを呼ぶ声、レジの電子音、人が歩く時に発生する、男の人の革靴、女の人のヒールの音、スニーカーの床を摺る音。それらが、不自然にもピタと無音となった。

 本を手に取ったまま、目線を本から先程まで、レジ前にいた、エプロン姿のお姉さん、その前に会計を待っていたであろう、少年。

 立ち読みをしていた、サラリーマン風の男性、雑誌コーナーでベビーカーを押しながら雑誌を物色していた、女性。


 が、一瞬のうちにこの店から。いや、このモールから誰一人いなくなっていた。


 やっと貴女も、き殺すことができた。

 声のする方を、振り向くとそいつはいた。

 真後ろで、声を掛けた、それは。髪が長く、目は黒いガラスの球でできた。穴がぽっかり空いた、黒い空間。でも目線は不思議とわかる。

 本を持ったまま驚きと恐怖で、身動きがとれないでいた。


 その本は、これから必要になるアイテム、決して、手放さない様に。と、黒い目玉は言うと。


 思いっきり突き飛ばされ、その黒い目玉が、わずかに笑ったのを確認しながら、視野は天井になり、仰向けに突き飛ばされたんだなと思いながら、意識が遠のいていった。

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