切ない。切ないよ、と読み終えた後に目頭を押さえたくなる作品でした。
ある幼い兄妹が、母親に連れられてピクニックに行く。そこで丘の上に登ってお花見をするが、母は「忘れ物をした」と言って二人を置いて去って行ってしまう。
母が急にいなくなったので困惑する二人。その先で二人を待っていたものとは……。
切なさと、残酷さと、それでいて妙に漂うあたたかさ。
子供ならではの純真無垢さ。世界を、人を知らないでいるからこそ持ち続けられる信頼。
美しいものは美しい。そう純粋に捉えられ、桜の木を見た時の「楽しい想い」だけを印象として持ち続ける。
その感じがまたとても切ない。二人が自分の身に起きたことを本当に意味で理解し、受け止めることができないからこそ、読者はそれをやるせなく感じる。
そんなやるせなさや切なさを感じさせつつも、それでも無垢に世界の美しさを信じる兄妹。その姿に強く心を揺さぶられます。