第2話 このままでもいい?
華乃の家の前、薄暗い街灯の下で、俺たちはまだ手を繋いだまま立ち尽くしていた。
言葉はもういらないような、でも何かを伝えたくなるような、不思議な感覚だった。
「じゃあ、またね。」
華乃は小さな声で言ったが、その手はまだ俺の手を離そうとしない。
「送ってくれてありがとう。」
「いや、俺が勝手に送りたかっただけだし…」
そんな他愛ないやり取りをしながらも、胸の鼓動は収まらなかった。
「…もう少しだけ、このままでいてもいい?」
彼女がそう言ったとき、俺は驚きつつも、手を握り返した。
「うん、もちろん。」
2人の手のひらが触れ合う部分から、温かさがじんわりと広がる。冷たい夜風も、このぬくもりの前では意味をなさないようだった。
静かな住宅街に、2人の吐息が白く浮かんでは消えていく。時間が止まったような感覚の中、俺は思わず口を開いた。
「華乃、俺、本当に好きなんだ。ずっと前から…」
「私も…同じだよ。高校が違うから、もう会えないのかもって思ってた。でも、こうして会えて、話せて、手を繋げて…夢みたい。」
華乃の瞳が潤んでいるのを見て、俺はたまらなくなった。
「夢じゃないよ、ちゃんと現実だ。」
そう言いながら、俺は華乃の手をもう一度強く握った。彼女の手が小さく震えているのがわかる。
「…輝人。」
名前を呼ばれるだけで、心が温かくなる。
「明日も、また会える?」
「もちろん。会いたい。何度でも。」
2人の距離は自然と縮まり、気がつくと俺たちはそっと唇を重ねていた。柔らかく、でも確かに感じる彼女の存在。
「おやすみ、輝人。」
「おやすみ、華乃。」
名残惜しさを感じながらも、ようやく手を離した。でも、心の中にはしっかりと彼女のぬくもりが残っていた。
華乃が家に入るのを見届けてから、俺はゆっくりと家路についた。街の風景が、いつもより少し輝いて見える。
繋いだ手のぬくもりが、まだ俺の手の中に残っているような気がした。
そしてその温もりは、これからの2人の未来を、優しく照らしてくれるように感じられた。
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