目的地

第14話

卒業式が始まった。


博士課程終了者は全員名前を呼ばれた。

社会心理学を専門とする唯一の人はかつての友人、生駒だった。

一緒に入学した人がもう博士課程を終えているのだ。


経営学の博士課程修了者となった人は、私のかつての彼女、出水優里(ゆうり)だった。

4年で中退して以来、連絡を絶っていた。


6年も先に卒業していた戸島から、彼女が大学院から経営学に転向し、博士課程に進んだことを聞いていた。

順調に行くと同じ卒業式に出ることになると分かっていた。

そして、出来れば復縁をと思っていた。


彼女の名前が呼ばれた。


「戸部優里さん!」

「はい!」


それを聞き、私はひどくがっかりした。

何と名字が変わっている。

既に結婚したに違いなかった。


外の天気と同じで、私の心の中にも雪が降り始めた。


式は進み、いよいよ学長からの祝辞が始まる。

実学院大学学長の寺里 実が舞台に上がった。

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