縦のカーブ

第8話

私が大学を去ったのは、4年の時。

3年の秋以来、レポートが全然書けず、〆切までに仕上らないようになってしまった。

講義によっては、最後に感想を書くものもあった。

その感想すら書けず、白紙で出すことが多かった。


後期の最後にあった試験でも、全く答案を書くことが出来なかった。

後期の授業の全てで単位を落とした。


私は大学に行くことが恐くなってしまった。

そんな中、4年前期の授業が始まった。


中には参加しさえすれば、単位がもらえる講義もあった。

だが単位を目的に、それを好んで受講する気にはなれなかった。


「今学期もまた書けないのではないだろうか」

心配で仕方なく、不安に押し潰されそうだった。


あの編集長のことを思い出しては、昼間からやけ酒を飲んでいることが多くなった。

時には、酔っ払った状態で講義に出たこともあった。

酔って講義を妨害し、何度もつまみ出された。

それがあまりにもひどかったため、大学から実家に連絡が入った。


両親は何度も私に中退を勧めた。

私はその度に「もう酒は飲まない」と言った。

だがすぐ元に戻ってしまった。


見るに見かねた両親は学期の途中にもかかわらず、私を迎えに来て愛媛の実家へ連れて帰った。

4年秋のことだった。


その後はずっと家に引きこもった。

本来なら卒業予定だった4年の3月に中退した。

大学に籍を置いておけば、それだけお金が掛かる。

まともに大学へ通えなくなり帰ってきてしまった以上、中退することには同意せざるを得なかった。


それからしばらくして、両親は「大学は辞めた以上、どこかに働きに行きなさい」と迫った。

私は不条理にも腹を立て、すっかり取り乱してしまった。


そこにあった食事を運ぶためのワゴンを思いっきり突きとばして、台所の流しに何度もぶつけた。

ワゴンの上に置いてあった硬い鍋が傾いて、流しの上にあった食器洗い機の側面に大きく食い込んだ。

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