第6話
久しぶりにキャンパスへやってきたその日、私は自分の所属している研究室に向かった。
その途中で、同期の友人である戸島と合流した。
彼とはあとでゆっくり話す予定だった。
用事が早く終わり、時間が空いたため、彼も一緒に行くことになった。
お世話になっている先生に会った。
私が3年で研究室に入ったとき、先生はまだ講師だったが、今は教授になっている。
先生に挨拶をしてお礼を言った。
そのとき、インターンシップであったことを話した。
そして謝った。
「何でその時に話さなかったんや!?」
一緒に聞いていた戸島が不意に言った。
私は答えた。
言える訳がないと。
俺は自分の大学の評判を失墜させたとずっと信じとったけん。
それに編集長はすごい立派な方と。
何よりあの人が言うことは絶対正しいけん。
あの人が俺の正体を無理やりにでも見せつけてくれんかったら、俺はずっと自分は神だと一人ずっと思い続けとったろう。
一生感謝せんといけん。
そのとき先生が諭すように言った。
自分のことを「卑怯者」だとか、「駄目な人間」だとか絶対に言うな。
自分のことは自分が大事にしないと、結局誰も守ってくれへんで。
今の君は現実を正しく見ることができてるとは思われへん。
君はあの人のことをものすごく立派な人間だって言うけど、何をもってそう言えるんや?
周りを肯定することが正しいとは限らへんわ。
正しいことほど、時には人を傷つけるもんや。
まあ君は傷ついてぼろぼろになりながらも、こうして卒業できるところまできたやないか。
それは君やったからできたんや。
自分のこと、もっと誉めたれよ。
周りがどんなに非難しても、自分はちゃんと誉めてやらないと、自分の欠点なんか絶対に直されへん。
もし、周りが君を傷つけるようなことをしたときは、誰にも遠慮せんと思いっきり腹を立ててええんやで。
それを聞いていて、私は少し涙をこぼしてしまった。
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