泣いたらさよならできない
@madder1
第1話
あなたの涙を、幾度となく私は見てきた。
はじめてあなたの涙を見たのは付き合って一か月の時。
おそろいの携帯ストラップを無くしてしまい雪の中を友達に手伝ってもらって、数時間探し回ったって言ってた。
そして諦めそうになった時に雪に埋もれたストラップを発見したことを話しながら、段々と目が潤んでいったあなた。
私が心配そうに見つめると、右手で軽く顔を拭いながら「あの後友達にめちゃくちゃ奢ったからしばらく金欠になったさ」っておどけて言ってたね。
その次にあなたの涙を見たのは、私がはじめてハンバーグを作った時。
サプライズで渡したかったから家で親に教えてもらって、焦げてない成功したハンバーグをデートの時に持って行った。
あなたの家に着き「じゃーんハンバーグ作ってみました」
私はタッパーに入れた、いびつな形のハンバーグをあなたの前に差し出した。
するとあなたは少し沈黙した後、下を向いたまま涙声で「ありがと」って絞り出すように言ったね。
私は突然のことにおろおろしてしまい、あなたの背中にぎゅっと寄り添うことしか出来なかったけど、感情を涙で素直に表してくれる心優しいあなたを好きになって良かったと思ったよ。
それからも些細なことで喧嘩して、しばらくお互い険悪だったけど仲直りした時の安堵の涙や、感動のドラマや映画を一緒に見て隣で流す涙、部活の試合に負けて顔をくしゃくしゃにしながらの悔し涙。
記憶の中のあなたはいつも泣いていて、そしてそれを私が隣で落ち着くまでずっとそばで見守っていたよね。
私があなたの前で泣いたのはたった一度だけ。
それはあなたから別れを告げられた時。
とめどなく溢れる涙であなたの顔もぼやけていたけど、その時のあなたは目を固く瞑り必死で泣くのを堪えているようだった。
その姿は「泣いたらさよならできないから」って言っているようだった。
今までいっぱい泣かせてきちゃったけど、あなたは私といて幸せでしたか?
泣いたらさよならできない @madder1
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