第42話 デスティニー・コントロール
彼の考えは、その通りに現実になった。思い描いた理想も、破滅も。彼にこのような独裁者のような力を与えたのは、ダンジョンだった。
彼のSkill【
彼のSkillに、おいては【握手】だった。魔守とは、提案をした際に、結愛の場合はダンジョン攻略を依頼する際に、偶然出会ったように見せかけ、攻略についての説明に参加し、握手を交わしている。
後は、簡単だった。結愛を特別変異の魔物が出る運命になったダンジョンに行かせ、それを倒してもらう。そこで、結愛が亡くなっていても、事故として処理する予定だった。運命とは、何かの拍子に狂ってしまうことも少なくないから、油断はできない。
しかし、結愛はやってのけた。Skillの進化条件である、【特別変異の魔物を倒す】を成し遂げた彼女の運命の中に、Skillの進化が現れたのだ。後は、その運命を選択するだけ。ここまで、きれいに運命を選択できた人物はいなかった。そのため、魔守を護衛につけていた。
Skillの進化をしたものは、結愛で【2人目】だった。1人目は、天野だったのだ。だから、天野はすぐに結愛のSkillが進化するということを知れた。だから、彼は彼女の運命を強引に変えることができた。
彼と、一度握手したことがある者達は、彼がその先の運命を描かないという、選択をした途端にこの世界から【消える】。
この消滅は、その人の存在が消えるということである。そのため、人々の記憶からその人の記憶も消し去ることができる。
彼は、この力を使い前のダンジョン協会会長の存在を消し去り、自信がダンジョン協会の会長になれるように、運命を操作した。実際に、彼の願いは現実になり、彼は最年少でのダンジョン協会会長としてその地位を手に入れた。
彼がどうしても叶えたい夢は、ただ一つだった。
それが、【ダンジョン・ロイ】の攻略。
しかし、彼のSkillは他人を操るという行為には優れていたが、戦闘力は皆無であった。まさか、魔物と【握手】をすることなんて、できるはずがない。だからこそ、彼はダンジョン・ロイを攻略できるほどの強い戦闘力能力を持った、Skillの保持者を求めていたのだ。
そんな、ある日彼のもとに一通のメールが来た。送り主は、国民の細かいSkillの登録と、管理をしている機関――Skill管理局――からだった。初めは、ちょうど仕事が一区切りしたら、見ようと思いスルーしていた。しかし、部下がひどい形相で、会長室に入ってきて、『急いでメールを見ろ』というので、やりかけの書類を中断してメールを確認する。
そこには、
彼女に探索者になってもらうために、今から専門学校に通わせようと考えたのだ。
夢を叶えるための大事なピースにしか、考えられなかった。この世界に神がいるのなら、それが彼に与えた祝福だと思ったほどだ。
しかし、現実はそうではなかった。彼女は……逗鞠 結愛は、Leliveという聞いたことのない事務所への所属が決まっていた。彼女の両親もその決定に納得している様子で、局員が家に訪れても、
「娘がやりたいことを見つけたんです。私たちは、それを応援するだけです。」
と、意見を曲げなかったという。
彼の計画は地獄に落ちたも当然だった。彼女とは、【握手】も、交わしていないため運命は変えることができない。
だから、ある人物に依頼した。VTuberとしての夢風 アマネが、社会的に終わるように。
彼女は、彼の依頼を快く引き受けてくれた。実際、早いスピードで彼女の顔写真は、全国へ広がっていった。後は、ここで一芝居すれば良い。
ダンジョン協会として、彼女の窮地を救い、彼女がこちらに対して借りを作らせることができた。後は、Skillの進化させるためにあのダンジョンに送り込み、【握手】も交わすことができた。
特別変異の魔物に対応してもらうため、一度遭遇したことがある赤池も同行させた。これで、結愛が負けていればそれまでだ。彼女のSkillは、そこまでだったということである。
しかし、全てがうまくいった今。ダンジョン・ロイの攻略は成功すると言っても過言ではないのだ。
後は、結愛にアレを壊してもらえばいいのだから。
***
「赤池さん。どういうことですか? 会長の言う事を聞くなんて……。絶対怪しいですよ。」
「アイツのSkillは、【
赤池さんは、簡潔に彼のSkillについて説明してくれた。彼の強力なSkillのことを。
「俺も、止められなくて済まないな。もう、握手をしてしまっている俺には、彼の行動を止めることはできなかったから……。」
真の絶望とは、このことをいうのだろうか? 自分たちには抗えない運命のことを。私たちは、これからどうなるのだろうか? ただ、結愛たちの心のなかには自分たちが知らない間に未来が決まっているという恐怖だけが広がっていった。
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