第3話

🌸パターンA🌸


 生まれてきたのは、”かぐや姫”を彷彿させる、玉のように可愛らしい女の子だった。

 匂い立つような美女、妖艶な美女。その”雛型プロトタイプ”なのが、一目瞭然だった。一言でいうなら、”天使エンジェル”の降臨?

 もちろん、愛らしさの極みの天使エンジェルは白磁のような肌に一糸も纏っていない…


 亜麻色の髪をした天使は、パッチリと、碧い色の、深海のような瞳を見開いて、こう言った。

 「ここは…どこですか?」

 首をかしげた。


 (か、かわいい💓)ドキッとして、ボクのほうが、”インプリンティング”みたいに、一瞬に恋に落ちてしまった。


 「ここはね、夢の中だよ。オレの」

 「ああ」天使ちゃんの声は、クリスタルが昇華された?みたいに澄んだ音色だった。

 

 「”夢を見る”ていう慣用句は、? つまり肯綮を穿っていて、やっぱり願望の充足なんですね! あなたのいちばんほしいものがあらわれたわけですね! それがワタシ。 瑞々しい乙女との邂逅を、日ごろからひたすら夢想していて…」

 少し、たどたどしい、ぎこちない口調で、天使は難しそうな小理屈をこねた…

 すでに惚れているボクには、そのミスマッチもかわいく思えた。


 「誰なの? 突然タマゴからって。 自分では覚えていないの? 今までにどこにいたとか」

 ボクは、しどろもどろのままに、事態を整理しようとして、質問してみた。

 「簡単に説明するのは困難。だけど、今までは天国にいたのよ。あんたたちの観念でいうとね。」

 やっぱり、正真正銘の天使やったんやな? と、ボクは納得した。 第一印象がすべてを語っている、そういう逆説もありそうである。 人生経験とやらには不足していますが。

 「理想郷のことですか? 完全無欠に幸福なところ? そこから派遣されたとかですか? 憐れなオレのために?」

 

 「まあ、そういうことね。けっきょく。 慈悲深い神様もちゃんとそこにはいるし」

 天使はころころと、鈴が転がるような笑い声を挙げた。


 これこそスタンダードで、夢らしい夢…ボクはこころゆくまで天使ちゃんと幸せなひと時を過ごしたのだった。 おいしいハートを堪能したのだった。


 さまざまな夢理論にも、ちゃんとすべて説明がつくであろう、これはまあ?いわば万能夢?典型的な夢の王道を征く、もっとも夢らしい夢であろうと思う。


<つづく>

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KAC20254 「その夢を…」  夢美瑠瑠 @joeyasushi

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