【13話】友達……なのかしら?
ガラっと雰囲気が変わったリファルトの訪問から、一夜明けて。
朝食をとるため、エレインは食堂へ続く通路を歩いていた。
真横にはフィオがいて、二人は手を繋ぎ合っている。
顔を見合わせた二人は、互いに朗らかな笑顔。
窓辺から差し込む柔らかな朝日が、そんな二人を優しく照らしていた。
気持ちの良い朝を迎えられたことで、エレインのテンションは上昇していく。
今日も、良き一日となりそうだ。
「二人とも、おはよう」
朝に相応しい、しゃっきりとした声が響く。
食堂に入ってきた二人へ挨拶をしたのは、先に食卓テーブルに着いていたリファルトだ。
「おはようございます!」
「……お、おはようございます」
元気に挨拶を返したフィオに対し、エレインは言葉に詰まっていた。
少しばかり、緊張しているのだ。
リファルトの雰囲気が変わったのは、昨日の今日。
その変化に、エレインはまだ対応できていなかった。
慣れるのにはもう少しだけ、時間がかかりそうだ。
エレインとフィオが席に着く。
少しして、メイドが朝食を運んできた。
朝食が乗った皿を手際よく並べて行く。
(今朝の食事も最高ね! 幸せだわ!)
並べられた食事に手を付けたエレインは、美味しい食事に舌鼓をうった。
幸せいっぱいになり、つい頬が緩んでしまう。
先ほどまで感じていた緊張感は、もうどこかへ吹き飛んでいた。
「エレイン。今日の令嬢教育は、どんなことをする予定なんだ?」
「……はい!」
リファルトに話しかけられたことで、緊張感がカムバック。
緩んでいた頬をギュッと引き締め、脳の回転数を上げていく。
「午前中は政治学。午後は、魔法の実技を行う予定です」
「そうか。フィオ。あまり気負いせずにやるんだぞ。エレインにも言われていたが、やりすぎるのはかえってよくないからな」
「はい、お父様!」
「分かっているとは思うが、エレインもだぞ。無理は厳禁だ」
「……はい」
二人の反応に、リファルトは満足そうに頷いた。
席を立って、食堂から出て行く。
「お父様とお友達になれたのですね! 二人が仲良しさんになれて、私、とっても嬉しいです!」
「友達、って訳じゃないけど…………そんなところね、うん」
友達、とは違うような気がする。
リファルトとはまだ、そこまでフランクな関係になれていない。
けれど、仲が改善したのは確かだ。
顔を合わせるたびに緊張することも、これからは少しずつ無くなっていくはずだ。
将来的には、友達のような関係になっているのかもしれない。
(お友達か……うーん。なれるのかしらね? でも、なれたらいいかも)
リファルトは、娘を大切に思いやっている良い父親だ。
そんな彼の人間性に、エレインは好感を覚えていた。ついでに言うと、生真面目すぎるところもプラスポイントである。
もう少し仲良くなってみたいという気持ちはある。
彼という人間を、もっと知りたかった。
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