読み終えてまず浮かんだのは、あの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の北条義時が妻である八重に捧げた、あの切なくも高潔な境地でした。
本作の主人公・ウィルフレドが、次期女王アリアに捧げる愛もまた、それと同じ「究極の献身」の形。どれほど彼女の心が過去の男に縛られ、自分に背を向けようとも、彼は道化を演じ、影となり、ただ一途に彼女を守り抜こうとします。そのあまりに健気で聡明な立ち振る舞いには、読んでいて胸が締め付けられるほどでした。
ヒロインのアリアは、「氷の姫」などといいますが本当は一度決めたら揺るがない「情熱の人」。その一途さゆえに、身近にあるウィルフレドの本質に気づけず(ウィルフレドが隠すのが上手いということもあるんですけどね)、危うい選択を繰り返してしまう姿にはハラハラさせられます。正直、読んでいてお腹壊しましたw
しかし、だからこそ側近レナードが放った「君は、自分は彼の生死になど興味は微塵もないが、彼は自分の為に、死んだって当然だとでも思っているのか!」という魂の叫びが、この物語の決定的な転換点として鮮烈に響くのです。レナードはアリアに恩があり献身していますが、ウィルフレド同様レナードの献身にアリアが十分報いることもあまり無いように感じます。なので、レナードとウィルフレド2人分の叫びとして私は感じました。
この一言を経て、自らの軽率さや傲慢さを自覚し、責任に目覚めていく・あるいは取り戻していくアリアの「改心」のプロセスは、まさに本作の救い。彼女が「一途な少女」から「真の女王」へと脱皮していく物語としても、非常に読み応えがありました。
良い女王になるんだぞっ💪
また、本作のもう一つの大きな魅力は、ウィルフレドとレナード、二人の有能な男たちが織りなす背中を預け合う信頼関係です!
事件と陰謀が渦巻く中、互いの実力を認め合い、支え合う彼らのコンビネーションは、ブロマンス的な熱さもあり、最高にスッキリさせてくれます。
激しい感情のぶつかり合いの末に、ようやく辿り着いた「夜明け」のような結末に、深い余韻を感じる一作です。
男勝りで強く、正しく、苛烈な王女アリアと、道楽者で無能と評判のウィルフレド。
二人の婚約から、この物語は始まります。
アリアは女王になるため、配偶者が必要という理由だけでウィルフレドを選びます。
一方ウィルフレドは、ひたむきにアリアの幸せを願い、陰で彼女を支え続けます。
しかし、無能と見なされているウィルフレドに対し、アリアは冷たく、邪険な態度を取ります。
実はウィルフレドは、ある理由から無能を装っているのですが、その真意は伝わらず、彼の献身は報われません。
その姿があまりにも健気で、途中とても切なくなりました。
文章は重厚で、先の展開が気になり、程よい分量も相まって一気に読み進められました。
アリアは王になれるのか。
そしてウィルフレドの一途な恋は、どんな結末を迎えるのか。
読後には静かな余韻が残り、思わず続きを想像してしまう、心に残る良い物語でした。