侵略国、アメリカ

ベアキャット

偉大なるアメリカ

 米大統領はいらだちを感じていた。

 理由は自らがおこなった政策に、反対する者たちのせいだった。

 現在自党の政治家ですら、米大統領に反対していた。

 米大統領は野党の極左どもだけでなく、アメリカを再び『偉大なる国』にしている最中の大統領に、自党内ですら反対派がいるのはなぜなのかわからなかった。

 米大統領はこう考えていた。

 アメリカはこれまで、惰弱だじゃくな極左政党のせいで、世界から搾取さくしゅされている。

 それは自明のことだ。アメリカの貿易赤字を見ていれば、賢いアメリカ人ならば誰でもわかることだ。

 汚い国々は我々から搾取している。正義は我々にあるのだ。

 だからこそ汚い国々に、こちらが関税をかければ、簡単にひれ伏すと思っていた。

 しかし汚い国々は、報復関税をしてくるばかりだけでなく、汚い国々で結託し、アメリカ抜きの世界経済を作り出そうとしている。

 この偉大なるアメリカをのけ者にしようなどとは、笑止千万だ。

 私は極左政党が壊したアメリカを再び偉大な国にするため、全力で戦っているのだ。そうだ、私は偉大な大統領、アメリカの聖なる戦士なのだ。

 しかし国民は物価が高いと文句ばかり言っている。先の見えない、バカどもたちだ。

 こんな連中が極左政党に投票するのだろう。こんな惰弱な連中、飢え死んだところで偉大なるアメリカに必要はない。

 私は間違っていない。なのに人々は、私を『偉大な大統領』と評価しない。

 それはきっと極左政党が入国させた、汚い移民どものせいだ。

 あんな連中に永住権を与えたのが、そもそもの間違いなのだ。あんな連中、アメリカから叩き出してやるのがふさわしいのだ。

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