超能力社会の裏側
凪野海里
超能力社会の裏側
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
私はいつも通りにバイト先のコンビニに訪れていた。いつも通りに裏口のドアから事務所に入り、「おはようございま〜す」と挨拶をしたときだ。返ってきたのは、挨拶ではなく怒号だった。
「お前がレジの金を盗んだんだろうがっ!」
それは店長の声だった。
「私はやってませんっ!」
それに対して涙声でそう訴えたのは、バイトの先輩。年齢的には私より年下の高校生だけど、大学へ進学するための費用を貯めるために週5勤務をしている真面目な子だ。
「どうしたんですか?」
私が問いかけると、タヌキ面の店長は怒りで真っ赤になった顔を私に向けて一気にまくし立てた。
「昨日の夜、
「そうですね。私があがったのが21時で、
飛んでくる唾に辟易しながら私は答える。マスクしてて良かった。じゃなきゃ店長の汚い唾を顔いっぱいに浴びるところだった。せっかくのメイクも落ちてしまう。
「その短い時間のあいだに、先野はレジの金を盗みやがったんだよ! 後藤の報告によれば、2万足りなかったそうだ!」
そしてタヌキ店長は先野さんに向き直った。
「お前、進学のためとか言ってバイト積極的に入ってるけどなぁ。どうせ進学の金じゃなくて、遊びの金だろうが! せっかく俺が温情持ってお前のバイトを多めに入れてやったってのに、その恩がこの結果か! お前はもう、クビだクビ!」
「そんな! 本当に私はやってないんです!」
「じゃあ証拠を見せろ、証拠を!」
先野さんは顔を伏せながら、必死に首を横に振っている。彼女の足元には黒いシミがぽつぽつと広がっていて――。
そこで目が覚めた。
ああ、これで9夜連続同じ夢。なんたることか。4日目の夜を終えた翌日は問題なかったけど、9日連続ならいよいよヤバい。
だったらそろそろこれは現実になるだろう。
夢というのは厄介だ。基本的には、昼間に体験したことや学んだことを眠っている間に脳が整理する結果、「夢」となる。しかし、そうじゃない「夢」が稀に存在する。
そして私は、その頻度がやけに高い。
ベッドから起き上がり、朝一番にすることはまずテレビをつける。そこから流れてくる膨大な量の情報に時折聞き耳を立てながら、クローゼットを開け、バイト用の服を引っ張り出して着る。天気予報では、今日は気温が高いと言っているから春物で良いかもな。出るときはジャケットにするか。
それから洗面所で顔を洗って、朝ごはん用に冷凍した米を温めつつ、卵焼きを焼く。
『続いて、最近都内で頻発している連続コンビニ無血強盗事件の最新情報です』
それまで耳で聞き流していたテレビへ、初めて目を向けた。とりあえず手元のIHコンロのスイッチは切っておく。
テレビで報道されている「連続コンビニ無血強盗事件」は、半年ほど前から都内で起きている強盗事件……のようなものだ。
ようなもの、というのはこの事件はそもそも強盗というには不可解な点が多すぎる。
負傷者ゼロ。目撃者ゼロ。にもかかわらず、コンビニがレジ締めの段階でお金の計算をすると何故か合わない。始めのうちはコンビニ側のミスかと思われていたが、この半年ほどで都内であまりに頻発するようになり、事件として取り沙汰されるようになった。
「無血」と呼ばれているのは、もちろん負傷者ゼロなのが理由だ。
『東京都豊島区〇〇店において、昨夜未明。店員がレジのお金を確認したところ、金額が合わないということで警察に110番通報がありました。店員は、最近の事件に関係していたらと思い、通報したそうです』
続いて、テレビは東京都の航空写真を映し出す。さらにいくつかの箇所にポイントが示された。そこは事件が起きたコンビニのある場所だった。とはいえ、ほんの一部だけど。その全ての事件の日付は2日の間を置きながら都内のあちこちで起きている。
うーん……そろそろまずいかもなぁ。
焼き上がったばかりの卵焼きをフォークでぶっ刺し、まるまる1本ひと齧りしながら考える。
いつもの時間にバイト先のコンビニに向かった。
事務所で着替え、タイムカードを押してから店に訪れるとすでにレジには先輩の先野さんが立っていて、接客をしていた。
相手は、黒いシャツに黒いズボン、黒い帽子を目深にかぶり、さらに黒いサングラスをしている「いかにも」な男だった。
「ありがとうございました〜!」
先野さんの声は明るくハキハキしているので、店内のどこにいてもよく通る。
「ありがとう、ございます……」
対して客の男は、ボソボソッと消え入りそうな声で先野さんから渡されたコンビニ袋を受け取った。そのとき、サングラスの向こうにある瞳で私を見てきた。
私は黙って見つめ返す。男が見てきたのはほんの一瞬だった。彼はすぐに店を出ていった。
「先野ちゃ〜ん、相変わらず良い声だねぇ」
そう言ってきたのは、タヌキ面の店長だ。突き出た腹と横に幅のある体は、狭いレジカウンターで動くと非常に邪魔だ。
「ありがとうございます、店長」
先野さんはニコニコの笑顔でタヌキ店長へと振り返る。
タヌキ店長はたるんだ頬にニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべている。ヤニまみれの歯が店内の明かりで鈍く光った。
「高校生なのに、偉いよねぇ。ほんと。僕のボーナスをあげたいくらいだよ……」
先野さんは返答に困ってるようで、苦笑いを浮かべながら「はあ……」と呟く。
「そういえば、先野ちゃん。今夜はバイトのあと暇かい? 良ければ夕飯ご馳走するよ」
「店長!」
私が呼びかけると、店長は満面の笑みから一転、汚いものでも見るかのような目で私を見てきた。
「……なんだ、
「こちらのお客様、タバコがほしいそうなんですけど」
「んだよ、タバコくらい」
「でも私、ココアシガレットって種類聞いたことなくて」
「バカ野郎。ココアシガレットはタバコじゃなくて菓子だ! ったく、お前この仕事入って何ヶ月経ってんだよ。いつまで経っても仕事覚えねぇなぁ。もう良い歳だろうが」
店長はぶつぶつ言いながら、レジからでていく。彼は客にココアシガレットの棚まで案内しに行った。
店長からようやく解放された先野さんは、ふぅと安堵の息を吐いてから私を見てきた。
「ありがとうございます、余地さん」
「いえ、気にしないでください」
私は首を横に振り、レジへと立った。
休憩45分を挟みつつ、定時の21時になった。私はもうあがりだが、22時に後藤くんが入るまで、しばらくは先野さん1人の接客となる。
「先野さん、お疲れさまです。先上がりますね」
「ありがとうございます。お疲れさまです〜」
先野さんはやはり笑顔で見送ってくれた。
私はタイムカードを押し、裏口から退勤した。出勤したときはまだ空に太陽があったのに、この時間には月が輝いている。
辺りに人がいないことを確認してから、私はある人に電話をかけた。
「もしもし、おそらく今日になるかと思います」
相手の人は『わかった』と小さく呟いて、電話は切られた。
翌日、いつものように裏口から出勤すると、ドアを開けるなり店長の怒号が響いた。
「お前がレジの金を盗んだんだろうがっ!」
「私はやってませんっ!」
続いて聞こえたのは、先野さんのよく通る声だった。ただし、いつもの明るさは皆無。涙声が交じっている。
「どうかしたんですか?」
挨拶もそこそこに問いかけた私に、タヌキ店長は怒りで真っ赤になった顔を私に向けて、唾を吐くように怒鳴った。
「昨日の夜、先野が1人で働いてる時間帯があったよな!」
「そうですね。私があがったのが21時で、後藤さんは22時出勤のはずなので」
飛んでくる唾に辟易しながら私は答える。マスクしてて良かった。じゃなきゃ店長の汚い唾を顔いっぱいに浴びるところだった。せっかくのメイクも落ちてしまう。
「その短い時間のあいだに、先野はレジの金を盗みやがったんだよ! 後藤の報告によれば、2万足りなかったそうだ!」
そしてタヌキ店長は先野さんに向き直った。
「お前、進学のためとか言ってバイト積極的に入ってるけどなぁ。どうせ進学の金じゃなくて、遊びの金だろうが! せっかく俺が温情持ってお前のバイトを多めに入れてやったってのに、その恩がこの結果か! お前はもう、クビだクビ!」
「そんな! 本当に私はやってないんです!」
「じゃあ証拠を見せろ、証拠を!」
先野さんは顔を伏せながら、必死に首を横に振っている。彼女の足元には黒いシミがぽつぽつと広がっていって――。
「証拠なら、ありますよ」
答えたのは先野さんではない。私だ。
店長と先野さんが驚いた顔で私を見る。
「最近、都内で頻発している連続コンビニ無血強盗事件。店長もご存じですよね?」
「それは……。だがあんなの、どうせ他店の無能共が自分の罪を架空の強盗犯になすりつけるための言い訳だろう」
「いいえ、違いますよ」
私は店へと続くドアを開ける。レジには後藤くんが立っている。時折事務所から響く怒声が気になるようで、彼はソワソワしていた。どうやら彼1人で切り盛りしているらしい。
私は店内をグルッと見渡し、あの男が今日も来ていることに気がついた。相手と目が合う。私は頷いた。男は近づいた。レジを乗り越えようとしたので、後藤くんが「ちょっと」と慌てて止めに入ろうとするが、男がひと睨みすると怯んだように後藤くんはさがった。
「もう話は済んだか?」
男は事務所に入るなりそう言った。
「なんだそいつは」
タヌキ店長は思わぬ闖入者に毒気を抜かれたようだ。私は気にせず、男の質問に答える。
「あなたが説明してください」
私が言うと、男はチッと小さな舌打ちをしてからダルそうにポケットから手帳を取り出した。
「俺は警察だ」
男が見せてきた警察手帳を見て、タヌキ店長も先野さんも驚愕の表情を浮かべる。
「警視庁超能力事件対策課ぁ!?」
そう、超能力事件対策課。
超能力が蔓延るこの時代、超能力関連で起こる事件や事故を取り締まる警察組織の1つだ。もちろんこの課に属している人間の2割以上は超能力を持っている。
もちろん、この私も。私の能力は予知だ。何気ない出来事から大きな事件まで、長くて9日前から短くても4日前から連続で夢として見ることができる。とはいえ、意図的に見ることは叶わない。この能力は私の過ごす日常の範囲内でしか、見ることができない。
「この男は
顔の横にある影見の肩に手を置くと、生意気な後輩は鬱陶しそうに払った。
「え、え、余地さんも能力者なんですか!?」
先野さんは泣き腫らした目で私と影見を交互に見やる。
私は胸を張って、「ええ」と頷いた。
影見は色のあるサングラスを指で軽く下げると、値踏みをするようにじろじろと店長と先野さんを見た。影見の目に威圧された2人はそれぞれにたじろいだ。
「お前たちは違う」
彼はそうボソッと呟くなり、今度は店へと戻ろうとした。私はドアを開け放したまま、その様子を見守る。タヌキ店長と先野さんは影見の動向が気になるのか、ノコノコついていった。
「では、2千円お預かりいたします!」
レジでは後藤くんが接客を続けていた。レジスターを開けようとした後藤くんの手を、影見はガシッと掴んだ。
「うわ、わ、なんすか?」
突然動きを止められた後藤くんは困惑したように影見を見る。しかし、彼は構わず後藤くんの目をじいっと眺めた。
「なんだよ、おい」
睨まれた後藤くんはいつまでも手を離さない影見に痺れを切らし、その手を振り払おうとする。しかし影見はその手を逃さないようにと強く握った。
「おい! なんなんだよお前!」
そのときだった。影見は空いてる方の手で黙って店内にあるモニターを指差した。みんなの目が誘われるようにそちらを見る。私も、タヌキ店長も、先野さんも、後藤くんも、レジの向こうにいるお客様も。唯一そちらを見ていないのは、影見だけだった。
モニターは一瞬信号を失ったかのように真っ暗になったかと思うと、再び映像を映し出した。それは最初曇りガラスを通したかのように不鮮明だったが、やがてはっきりしてきた。映像に映されたのは、先野さんだ。誰かの視点で映された映像なのか、映像はややぶれがある。
先野さんはレジに立っていた。
「ほら、やっぱり先野じゃないか」
タヌキ店長は勝ち誇ったようにそう言った。先野さんは下唇を噛み、俯く。
「違う」
だが、影見は否定した。よく見てみろ、と彼は続ける。
先野さんは接客を続けていた。レジスターが開いて、彼女はお釣りをだしお客様に渡した。そのときだった。
先野さんとお客様の意識がお釣りに逸れているあいだ、開いたままのレジスターからお札がゆっくりと抜かれたのだ。
さながらポルターガイストのようである。先野さんは「そんな……」と呟いた。店長も「なんだこれは」と自身の目に映っているものが信じられないのか、目を擦っている。
お金はひとりでに浮いたまま、2人の死角に入り、小さく開かれた事務所へのドアへとスルリ、と入っていった。
それからすぐに、事務所のドアが開かれる。音に気がついた先野さんが振り向き、笑顔を見せた。
「あ、後藤さん。おはようございます!」
映像は、そこで再び真っ暗になった。
「以上が、この店で起きた全てだ」
嘘だ……、掠れた声で後藤くんが呟く。
「嘘だ! でっちあげに決まってんだろ! なんだお前、警察の名を騙ってドッキリのつもりか? 悪戯にしても度が過ぎてるんだろ。先野さんまで巻き込んで! 下手な芝居しやがって!」
息巻く後藤くんに、されど私の部下は冷静に告げる。
「いいや、この映像はお前の視点で見た記録だ。俺はそれをモニターに投影したに過ぎない。そしてお前自身の目で見た記録は、絶対に嘘をつかない。防犯カメラに映し出された映像が嘘をつかないのと同じだ」
「なら防犯カメラを見てみろよ! 俺はやってない!」
「なら、こっちの映像も見てみるか?」
再び、影見はモニターを指差す。
そこに映し出されたのは、相変わらず誰かの視点。そしてその人は後藤と書かれたロッカーを開けると、お金を財布に突っ込んだ。
「お、俺はやってない!」
「なら他の証拠も見せようか。お前の財布にいまだあるかはわからないが、俺の頭にこの映像は記録された」
影見は自身の頭をトントンと指でたたく。
「くまなく調べれば、お前の持ってた金、あるいは銀行に預けた金の出処がどこで、どうやって手に入れたものなのか。レジでのシーンの映像ももっと鮮明に映れば、その紙幣の記番号もわかるはずだ」
影見が言い終わらないうちに、後藤くんは影見を突き飛ばし走り出した。
「取り押さえなさい!」
私の声に動き出したのは、レジの向こうにいた客だった。もう1人の部下である
後藤くんを取り押さえたそいつは、頭に耳を、尻に尾を生やし、さらに全身が毛で纏われていた。大神は獰猛な目つきで後藤くんを見下ろす。さながら、狼のような容貌だ。
グルルルルルと喉奥から唸り声をあげ、大神は言った。
「お前、物を引き寄せる能力者か。さぞかし便利だが、うちの影見には無意味だったな。だが、俺にもわかるぞ。匂いだ。お前には疑念の匂いがする。嘘をついている人間の匂いだ」
なおも抵抗しようとする後藤くんを押さえつけたまま、大神はチラと私を見る。
「早く手錠を。透明化するのに2日のインターバルが必要とは言え、逃げられても困るからな」
私は頷き、彼に手錠を渡した。
まもなく、仲間の警察官たちが次々に店内になだれ込む。その頃になってようやく、後藤くんは観念したように抵抗するのを止めた。
後藤くんを乗せたパトカーが走り去る。空はすでに月が昇っていた。今夜は満月だ。
私の隣にいた大神は夜空に向けて、「ウォォォォォン」と遠吠えを上げる。そのとき、同じ空の下にいる彼の同胞たちの声がどこかから聞こえた。
「……グルル、ルルル、……うん、うん……。はぁ……、くそ、今夜は満月だから力の制御が難しいな」
大神の姿は徐々に人間のものへと戻った。
「お疲れ様、ありがとうございます。大神」
「いや、こちらこそありがとう。今回は影見と余地の功績が大きい。おかげで事件も解決した」
「いえいえ。もう今日は帰られますか?」
「いや、今日は署で夜を明かすよ。うっかり狼になったら、大変だからな」
そう言って、彼はポケットからココアシガレットを取り出すとそれを咥えて歩き出した。
私は踵を返し、再び店内に戻る。そこにはタヌキ店長と先野さんが残されていた。
「ごめんねぇ、先野ちゃん。疑ったりしちゃって。そもそもキミみたいな良い子が盗みなんて働くわけないのにさ」
「いいえ、大丈夫です……」
「お詫びにさ。今日は飯でもおごるよ。何食べたい? あ、この時間なら居酒屋しか開いてないかぁ。実は俺、良い店知ってるんだよね」
たじろぐ先野さんとの距離を詰めようとしたタヌキ店長だったが、彼らのあいだに割り込む人物が現れた。
それは、影見だ。
「な、なんだお前。警察の仕事はもう終わっただろうが」
影見は色のついたサングラスをかけたまま、タヌキ店長を睨んだ。店長は気圧されたように数歩下がる。
「……店長、先野さんはもうあがりの時間のはずです」
私が声を掛けると、店長は「だから俺が帰りを送ろうと」と続けるが。
「店はどうするんですか? 取り調べや事情聴取とか。まだまだやるべきことは山積みですよ。一方で先野さんは未成年です。早く帰らせたほうが良いと思います。これ以上働かせたら、法に引っかかってついでに店長も警察のお世話になりますけど?」
店長はチッと舌打ちをして、ぶつぶつ何か言いながら店に戻っていった。
先野さんは深くため息を吐いて、私と影見を交互に見る。
「今日はありがとうございました。というか、いつもありがとうございます。まさか余地さんが警察の方だったとは思いませんでしたけど」
明日からは来られないんですか、と聞かれて私は頷く。
「残念ながら。でも、先野さんも早くこのバイト辞めたほうが良いと思いますよ」
私の言葉に、先野さんは迷っているようだった。コンビニというのは、高校生がバイトをするにはうってつけの場所だ。ましてここは都内の中心地。バイト代も他と比べたら破格ではある。
「……あんな男の下で働いたところでろくなことにはならないぞ」
それまで黙っていた影見が不意に、ボソッと呟いた。
「あの手のヤツは、権力の強い者にはヘコヘコしてるクセに、自分の下にいる者たちは自身の所有物と思ってるタイプだ。……手遅れになる前に、辞めたほうが良い」
そう言って、影見は月の光の届かない闇に向かって歩き去った。
「あの……」
「ごめんなさい。あいつ、ああいうやつだから」
でも語る言葉には実感が籠もっている。
とある施設に閉じ込められていたあの子が闇の世界から逃げ出せたのは、彼がまだ小学生の頃のことだ。
……あの頃と比べたら、彼の表情には比較的明るさが現れたように思う。
たぶんだけど。
「先野さん。あなたの未来はあなたが決めるもの。でも、だからこそ自分で決めなきゃいけない。自分の選んだ道の責任を負うのは、結局あなた自身なんだからね」
それじゃあね、と私は言って影見の後を追いかける。白く輝く月に背を向けて。
超能力社会の裏側 凪野海里 @nagiumi
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