私たちのゴールボール!

無月弟(無月蒼)

第1話

 あの夢を見るのは、これで9回目だった。


 親友のあの子といっしょに、サッカーをする夢。

 だけど何度も繰り返していたそれは、もう叶わない。

 あの悲しい事故が、目から光を奪ってしまったから。


 もういっしょに体を動かして、スポーツを楽しむのは難しい。そう思っていた。

 だけど……。



◇◆◇◆




 微かな音もない静寂の中、私はじっと耳をすませる。 


 目には何も映っていない。ただただ暗闇が広がるばかり。

 視力が機能していない以上、頼りになるのは耳と、肌で感じる触覚。

 感覚を研ぎ澄ませながら、私は黙ってその時を待つ……。


 シャランッ!


 ──聞こえた! そこだ!


 沈黙を壊すように、響いた鈴の音。

 私は瞬時に音のした方へと跳んで、次の瞬間、体に何かが当たった。

 痛っ! けど、確かに手応えがあった!


 ……いったい何をやっているのかって?

 ゴールボールだよ、ゴールボール。

 え、ゴールボールを知らない?


 ゴールボールっていうのは、球技の一種。

 サッカーやバスケと同じようにチームで対戦して、相手のゴールにボールを入れればいいというゲーム。

 そしてこのゴールボールの最大の特徴は、プレーヤーは全員、目隠しをしなきゃいけないってこと!


 私もチームメイトも、相手チームのメンバーも、みーんな目隠しをしながらプレイしていているの。

 目が見えない状態でゴールめがけてボールを投げ、ディフェンス側は目が見えてないのにそれを防がなきゃならない。それがゴールボール。


 そんなゴールボールに私、三笠ユカが出会ったのは、数ヶ月前のことだった……。

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