第4話「くっ♡……殺せ♡」
推しの喪失と同じくらい、俺の心を折ったものがある。
俺の自信作が評価されなかったことだ。
俺には自信作がある。
普段ファンタジーエロを好む俺だが、SFで「女騎士」ではなく「女艦長」に挑戦した物語だ。
強気で姉御系で、白い軍服に身を包み、黒い髪を靡かせる。腰に軍刀がさがっている。
ビジュアルは首もげフィギュアのセレナがモデルだ。
強気だが照れ屋で女性らしいツンデレ系だった。
胸がデカい。
俺の理想を詰め込んだキャラだった。
物語の中で、彼女は未知の星のスライムに捕らえられる。
尿意を催し、大勢のスライムの前でおもらしする。
それが、彼女の屈辱的な敗北のシーン――美しい黄金の雫。
最高の見せ場だ。
だが、それが星の救済となる。
この星では、人間の尿に含まれるアンモニアが、地球でいう石油のような存在だったのだ。
異星人たちは資源枯渇に苦しんでいたが、人間の排泄物が資源になると分かったことで、両星の友好が生まれる。
人間の排泄物が、異星人との友好を結ぶ鍵となる。
やがて地球も、排泄物をエネルギーに変えるシステムを確立。
これは、人類の未来を変える壮大なハッピーエンドSFなのだ。
なのに――どうもウケなかった。
なぜだ?
テーマは社会派だし、オチも完璧。
俺の趣味は確かに出ているが、そこを乗り越えた先には感動すらある。
そう、俺はおもらしにも目覚めていた。
なのに、評価は散々だった。
コメント欄には「きっしょ」「なんでおもらし?」「普通にすればいい話なのに台無し」と書かれていた。
俺は絶望した。
ショックだった。
そして創作から身を引いた。
しかし、逆に評価された作品があった。
それは、女騎士が細かな触手に身体中をまさぐられるだけの話だった。
「くっ♡……殺せ♡」
俺の人生初の「ハート喘ぎ」作品。
大人気だった。
俺は思った。
ウケるものと、自分が書きたいものは違う。
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