第2話『エロに対して、俺は真摯だった」
続けて部屋を片付けていたら、昔出した同人小説が出てきた。
『女艦長セレネ ~銀河を潤す黄金の雫~スライムに拘束された女艦長が銀河を救うために屈辱のおもらしでエネルギー革命を起こす話~』
タイトルを見た瞬間、全身がゾワッとした。
「うあああああああああああああああああああふぉおおおおおおおくぁwせdrftgyふじこlpふじk\」
リアルに絶叫しながら後退りした。
俺はこれをかつて創作投稿サイト「ノベルズ・アーカイブ」にR‐18小説として公開していた。
アカウントを放置していた。
なんとしてでもこのアカウントを消さねばならない。
ログインしようとした。が、入れない。
「……は?」
思い当たる組み合わせを試す。
wakarase
EroEroKnight1919
ero is justice
kirarikirari
Yajyu=senpai
UC0083-shima
すべて弾かれる。
「クソッ、なんだっけ……?」
だんだん記憶が怪しくなってくる。
本当にこのアドレスだったか?
試せば試すほど、記憶は揺らぐ。
焦って入力を繰り返していると、
「ログイン試行回数が上限に達しました」
の文字が冷たく表示された。
――ログイン不可。
「…ってことは俺のエロ小説消せないのか?」
最終手段として、カスタマーサポートに問い合わせる。
「アカウントにログインできません。登録したメールとパスワードを忘れましたが、何とかならないでしょうか?」
数時間後、返信が来た。
「お問い合わせいただきありがとうございます。個人情報に関する内容につき、詳細についてはお答えいたしかねます」
詰んだ。これはマジで無理なやつだ。
あのさぁ~~どう考えても俺だろ!!
作品を書いたのも、コメントに返信したのも、評価したのも、ぜんぶ俺!!
「オレオレ!俺だよ!オレオレ詐欺じゃない、ほんとに俺なんだよ!!ここにファイルあるって!」
心の中で叫ぶが、カスタマーサポートは冷たい。
このままでは、俺のエロ小説はネットに公開され続ける。
ノベルズアーカイブ。
検索窓に『女騎士 スライム おもらし和平』と入れると俺だけが検索一覧に並ぶ。
クリックすると、自作ページが開いた。
そこには――
「らめぇ♡私の○○○○、スライム発射用意!頭スライムになるぅ♡」
俺は無言で目を閉じた。
何を考えていた、当時の俺。
……いや、真剣だったんだ。
喘ぎ声の表現にこだわり、何度も修正した。
他のエロ小説を読み漁り、文体を研究した。
「抜けるか?」と推敲を重ねた。
エロに対して、俺は真摯だった。
そして、俺の性癖も変わっていなかった。
「女騎士、むちむち、爆乳、スライム拘束……」
あぁ、俺はこういうのが好きだったんだな……。今も大好きだな……。
でも、かつての俺の作品はまだそこにある。
画面には、バカみたいなエロセリフが並ぶ。コメント欄?見る勇気なんかない。
でも、確かに俺はこれを書いた。
俺が、書いたんだ。あの頃の俺が、確かにここにいる。
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